2009年2月18日水曜日

ベッドミドラー、ローズの祈り?ん?ジャニスの祈り?

   シネセゾン渋谷で、ジャック・ドゥミ監督『シェルブールの雨傘(91)』
     シェルブールのオーバンの修理工場で働く整備工のギーは、雨傘屋の美しい娘ジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)と交際していた。ギーは、病気で伏せっている伯母さんと、ジュヌヴィエーヴは母親と2人で雨傘屋をやっていた。雨傘屋は経営がうまく行っていない。ジュヌヴィエーヴの母親の反対もあったが、2人の恋は燃え上がり、ジュヌヴィエーヴは妊娠する。しかし、ギーに2年間の兵役が待っていた。ジュヌヴィエーヴには、2年と言う期間は、永遠の別離のように思えた。
    1年が過ぎ、子供が生まれることを承知で、求婚を続けてくれたカサール(マルク・ミシェル)との結婚を決意するジュヌヴィエーラ。ようやく2年が過ぎ、手榴弾で片足を不自由にして戻ってきたギーにとって、ジュヌヴィエーヴの雨傘屋が閉店しており、伯母から彼女が 結婚してパリに引っ越したと言う話は、とても残酷なものであった。荒んだ気持ちで、仕事に身も入らず、せっかく戻ったオーバンの修理工場を辞め、働かずとも恩給が入ることをいいことに昼から酒を飲み、ジュニーと言う名の、どこかジュヌヴィエーヴの面影を感じさせる娼婦を買う。
   翌朝、帰宅したギーを待っていたのは、伯母の死だった。ずっと伯母の面倒を看てくれていたマドレーヌと言う娘とギー2人だけの寂しい葬儀を済ませる。伯母との思い出がありすぎるこの街を出て行こうとするマドレーヌに、ギーは一緒にいてくれと言う。だが、マドレーヌは、今の働きもせず、自堕落なギーは嫌いだと言った。ギーは、心からマドレーヌが自分にとって必要な存在なのかに気づいた。
   ギーは伯母の遺産を処分し、ガソリンスタンドを手に入れ、マドレーヌに求婚した。数年後の12月、雪の降るシェルブールの街、ガソリンスタンドの事務所で、マドレーヌはクリスマスツリーの飾り付けをしている。息子のフランソワを連れて玩具屋に行くと言うマドレーヌ。見送るギー。ガソリンスタンドに1台の高級車が止まる。運転していたのはジュヌヴィエーヴだ。助手席には、娘がいる。ギーは事務所にジュヌヴィエーラを誘う。ジュヌヴィエーヴは、義母のもとに預けていた娘を受け取りに行った帰り、回り道をして結婚以来初めてシェルブーヴの街に寄ったのだと言う。近況を語り合う2人。だんだん娘はギーに似てきたと言うジュヌヴィエーラ。会うかと尋ねられいやいい、そろそれ行った方がいいと言うギー。ジュヌヴィエーヴは車を出す。振り返ったギーに、マドレーヌと息子が戻ってきた。マドレーヌを抱き締めキスをするギー。シェルブールの街に雪が降り続ける。
   いい音楽のミュージカル、とくれば、何回観てもうとうとしてしまうものだなあ(苦笑)。10代の頃はウェルメイドのものへの反発もあったから退屈だと思って寝たが、50になりそれなりに楽しんでいる今でも駄目なのは、この映画を一生完全鑑賞できない身体なのかもしれない。しかし、昔に比べれば寝ている時間は5分の1以下だと思われるので、若い熱愛カップルが気がついたら別々の家庭を持って再会していて驚く位の最初と最後の15分しか耐えられなかった昔を思えば、随分と成長したものだ。この頃のドヌーヴは本当に美しい。
    渋谷ピカデリー、ホントに休館したゃったんだなあ。
    シアターN渋谷で、坂口拓監督『鎧 サムライゾンビ(92)』。
    ドライブをしている家族がいる。父茂雄(吹越満)母康子(荻野目慶子)娘の麻美(中島愛里)、息子の良太(小杉彩人)。カーナビの指示通り山道に曲がって行ったことで運命が変わってしまう。運転していた父親が目を離した隙に、ライフルを構え、大きなバッグを下げた白い服を着た男、相原(いしだ壱成)を跳ねてしまう。「死んじまうだろ」と言って男は、立ち上がり銃を車に向ける。しかし、男は後ろから、3発の銃弾を受けて倒れる。黒い服の男、次郎(植田浩望)と赤い女、理沙(夏目ナナ)が立っていて、家族の車に乗り込んでくる。少し先には故障した車が止まっている。男女は逃亡中の銀行強盗だった。
    強盗たちに脅され前方の閉鎖された道路を進む。一旦車を止めると、奇怪な老女が現れお前たちは皆死ぬと告げる。しばらく車を走らせると、タイヤがパンクして動かなくなる。男は、茂雄に、代わりの車か、スペアタイヤを持ってこいと命じた。家族を人質に取られ、家族には1時間以内に戻るからと告げて進む茂雄。しかし、茂雄は何者かに操られるように、自ら首をはねて死ぬ。
    なかなか戻らない茂雄を心配している家族たちの前に、茂雄の生首を下げた鎧兜を着けた武士のようなものが現れる。次郎たちは拳銃を乱射するが倒すことはできない。車に近づいて来た武者は、理沙の指を斬る。激痛に苦しみながらも、アクセルを踏み込んで武者を撥ねる理沙。しかし、車は横転した。車から這い出て、徒歩で進むことに。
    しばらく歩くと、廃墟と化した村落を見付ける。理沙の指の手当てをしようと学校か病院だった建物に入り、薬品を探す。やはり老婆が現れる。お前たちは殺されるために呼ばれたのだと言う老婆。殺してやると次郎は銃を撃つが、弾は当たらず、すり抜けてしまう。既に我々は死んでいるからと言って姿を消す老婆。
   そこに相原が現れる。理沙を脅し、昔のように付き合おうぜと言う相原。観念したように、キスをし、相原の腰に顔を沈める理沙。快楽に相原の顔が歪んだ時に激痛が走る。立ち上がった理沙は、口から相原の睾丸を吐き捨てた。次郎と康子、麻美たちが現れる。理沙を盾にし、金を寄越せと言う。そこにサムライゾンビが現れる。隙を見て逃げる次郎と理沙と康子たち。相原は格闘の末、2階から突き落とされたが、今回もまた生き残る。バイクを発見し、悪戦苦闘しながらも、エンジンを掛けることに成功する。自分は不死身だと確信している相原はサムライゾンビに向かって行くが、刀が一閃し、相原の首は宙に舞った。
    その頃、地元霧狭間警察の立石(やべきょうすけ)と吉岡(松原慎太郎)が、銀行強盗犯の捜索に駆り出されており、この八槍塚村に逃げ込んだ形跡を見つけていた。ここは昭和16年の8人惨殺事件以来封印されていると言う立石。彼らは押収品のショットガンなとで武装している。次郎と理沙に出会い睨み合いになるが、サムライゾンビが現れるや、逃がしてくれたら金をやると言う次郎の言葉に、立石は吉岡に鞄を取るように言う。しかし吉岡の首は宙を舞うことに。次郎を助けようとした理沙は、刺された。立石は、2人にパトカーで逃げるように言って、吉岡の仇を討とうと乱射を続ける。パトカーまで辿り着いた次郎と理沙だが、闘った末、爆死した。
    康子は、子供を逃がすために自ら囮となる。逃げるうちに鍾乳洞に逃げ込む。そこの祠に祀られていた短刀は、ゾンビを撃退する力を持っていた。麻美は弟を守るために命を落とす。既に生き残っているのは、康子と息子の良太だけだ。息子を守るために、死闘を続ける康子…。既に八槍塚村の、槍塚に捧げられた生首は7つ。果たして8つ目の首を晒すのは……。
     まあ、ギリギリここまで書いてしまう。その後、この村の真実が暴かれるのだが。みんな頑張っているんだけど、結局、荻野目慶子の熱演で、なんとか乗り切った感じだ。
    しかし、最も残念なのは、実はエンディングテーマの「祈りとやら酷いなあ。Aメロは、完全にベッド・ミドラー主演「ローズ」の「ローズのテーマ」。前の回の上映を聞いていて、ああ「ローズのテーマ」か、最近「ノッキング・ヘブンズドア」といい、邦画の主題歌洋楽ロックスタンダードカバー流行っているんだなあと感心していたのに(苦笑)。久しぶりの直球パクリで、クレジット見ちゃったよ。音楽の制作陣も、映画のスタッフも、この曲を最初に聞いた時何も思わなかったんだろうか(苦笑)。あるいは確信犯?シンガーソングライターの子が?スタッフが?確信犯ではなく本当に誰も知らなかったのなら、趣味の問題ではなく、常識の問題と著作権の問題だと言う気がする。国内はいいとして、北米に持って行く時は、気にした方がいいかもしれない。歌っている本人が傷つくと可哀想だ。(※それぞれの曲名でyoutubeに飛ぶというおせっかい)
    神保町シアターで、東宝文芸映画の世界59年東宝丸山誠治監督『悪魔の接吻(93)』。
   みゆき商会と言う洋服卸の社員内山忠(佐原健二)が、社長夫人の幸江(坪内美詠子)を迎えに大和証券の営業所にやってくるが、一足違いで美容院に行ったと言われる。美容院で幸江を乗せると、そんなに会社の状態が悪いのかと聞く。内山が毎日の売上は変わっていないですよと答えると、夫の見せる帳簿に不審を感じたのか、高田馬場の店に戻るように命ずる幸江。
    前触れなしに急に現れた妻に怯える社長の伊藤(河津清三郎)。彼は婿養子で小さな金も動かせず窮屈な思いをしている。今も競馬のノミ屋の広沢(伊藤久哉)に、取り立てに会社に押し掛けられ、3日待ってくれと頭を下げたばかりだ。幸江は、帳簿を自宅に持って帰ると言う。
  バー火の鳥の相沢恒子(草笛光子)のもとに、小野(三浦敏夫)と甥の則夫(西条康彦)と学生仲間がやってくる。則夫が持っているオルゴール付きの変わったライターに関心を持つ恒子に、知り合いの女の子から貰った物ですが、差し上げますという則夫。その夜、恒子の部屋に伊藤が訪ねている。実は、恒子は、幸江の異母姉妹。戸籍上のみの姉に、女中の子、女中の子と苛められことを恨んでいる。、伊藤は、妻が帳簿を怪しんでいる以上、計画を実行するといい、恒子の部屋からダイナマイトを持ってい。
   帰宅すると、妻幸江が話があると言う。すぐに行くと言いながら、現れない伊藤に苛立って、1階に降りてくる幸江。伊藤は、幸江の首を絞め殺す。その時幸江が可愛がっていた黒猫が、伊藤を睨みつけた。死体を車庫に隠し、翌日出社した伊藤は、利き腕の怪我を装い、内山に何通かの手紙を書かせる。そのうちの1通は、幸江との無理心中の遺書として偽装するためのものだ。夜になり、急に電話で内山を呼び出し、甲府にいる妻の元に、スーツを持って行って欲しいと頼む。車の後ろに、幸江の死体を隠し、助手席の下に、タイマーで午前0時にセットしたダイナマイトを仕込む。これで、車ごと、幸江と内山を爆死させ無理心中を起したように偽装させようと考えたのだ。
   その夜、無事に内山を送り出したと思った伊藤のもとに、姪の友子(笹るみ子)がやってくる。恒子に計画が無事進んでいることを報告しようと電話をすることが叶わずやきもきしているとチャイムが鳴る。何故か内山だ。甲府まで向かうのにガゾリンを入れようと思ったが金がないと言う。金を渡しやっと追っ払ったと思うが、友人の則夫たちが、甲府に遊びにいっているので、内山の車に便乗してしまったのだ。
   友子も、一緒に爆死してしまうのかと小心な伊藤は気が気ではない。何度となく警察に電話をしようとしては、思いとどまる。恒子もやってきて、自首しようとする伊藤を押し留める。内山は、何とか我儘な友子を車から降ろそうとするが、なかなか思う通りにならない。車のパンクを修理したところに、警官が現れ、近くで産気づいた妊婦がいるので、病院に連れて行って欲しいというのだ。乗せて行こうと言い張る友子を残し、内山は一人、車を出発させた。
   友子は、偶然通りかかった則夫たちに会い、彼らの車で無事病院に妊婦を運び、東京に戻ってきた。友子からの電話を受けた伊藤は、やれやれと腰を下ろす。水が飲みたいという伊藤に、コップを持ってくる恒子。しかし、水を飲んだ伊藤は毒殺される。そこに内山が現れる。内山と恒子はグルだったのだ。二人は、伊藤が幸江を絞殺して、毒を飲んで無理心中を偽装することを、計画していたのだ。
   伊藤夫妻の葬儀が行われている。恒子は、長い間会っていなかった幸江の異母妹として、現れる。知らないそぶりで、葬儀を段取る内山。しかし、内山のライターを見た友子は、何で自分が則夫に上げたライターを内山が持っているのだろうと不審に思う。恒子と内山の計画通り無理心中を警察は疑っていない。恒子と内山は安心しきっていた。恒子の家を内山が訪ねている時に、刑事が現れる。恒子と伊藤が競馬場に頻繁に通っていたことと、恒夫が持っているライターで恒子との関係を証拠としてつきつけられる。友子の熱心な訴えが聞き入れられたのだ。恒子は、私がすべて計画し、実行したのだと言い。内山に自分が渡したグラスを飲み干し、まだ計画は続いていると言って、倒れる。内山に、伊藤に飲ませたものと同じ毒を与え、殺そうとしていたのだ。恒子は死んだ。
   モノクロの画像と、内山が運転している車がいつ爆破されるのかというスリルの盛り上げ方など、ヒッチコックを思わせる、ファムファタル映画。内山役の佐原健二、もう少し奥行きがある役者だったら、映画の魅力が倍増したかもしれない。しかし、佐原健二と西条康彦、万城目淳と戸川一平役のウルトラQコンビだなあ。何だか、どこからか、桜井浩子が出てきて、淳ちゃん!!いっぺいくん!!と声を掛けそうな気がしてしまって微笑ましいなあ。
   地元のS亭で、20年近い縁のカメラマンと飲む。変わらないなあ。早く出来あがってしまった。
  

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