2009年1月5日月曜日

新年早々、ボケ初め

   新年会のご案内メールを出したらいきなりタイトルが日付を間違った上、忘年会になっている。今年一年が思いやられる幕開けだ。そんな緩みきった精神にカツを入れようと、
   新宿テアトルタイムズスクエアで、62年デビッド・リーン監督『アラビアのロレンス(2)』。文句無し。
   渋谷シネマヴェーラで、官能の帝国ロマンポルノ再入門2
   80年日活黒沢直輔監督『ズームイン 暴行団地(3)』希望が原団地の人妻冴子 (宮井えりな)の夫は競輪選手なので、いつも旅だ。かっての恋人でピアノの調律師をしている中村隆也(志賀圭二郎)がアメリカから帰国していると聞いて会いに行く。冴子の団地から隆也の団地までは近い。傍まで行くと、黒ずくめの男に強姦されてしまう。男が手に持っていたのは、ピアノの調律に使うハンマーピックニードル。隆也の部屋には、誰もいない。しばらくして隆也が帰ってくる。彼との関係は、強姦犯の記憶を薄れさせたが、冴子が数年前に隆也を捨て、競輪選手と結婚して以来、激しく憎んでいたと告白する。
  その頃から、団地では連続強姦殺人事件が起る。残虐な手口で殺し、最後には火をつけるところが共通している。ある時から、冴子は、隆也が犯人ではないかと思う。隆也の後ろ姿にそっくりな黒づくめの男が犯行現場から逃げ出すのを目撃して、その恐怖は確信に変わる。やはり、隆也が犯人ではないかと思った団地の娘(大崎裕子)が、隆也を付け回す。最後には、団地の屋上でもつれ合い、隆也と娘は落下し死亡した。事件も終結したかと思ったのち、冴子と会話を交わした妊婦が全身火だるまになる。逃げ去る黒づくめの男の姿を目撃するが、隆也とは全く異なる人相の男だった・・・。 黒沢直輔初監督にして、ロマンポルノ凡百の映画。
    77年日活藤田敏八監督『横須賀男狩り 少女・悦楽(4)』。
    横須賀の女子高生きっこ(大野かおり)は同級生のミコ(中川ジュン)の家にいる。ミコの母親(絵沢萌子)は、ディスコQを経営しているが、男出入りが激しい。きっこは、このままミコの家に泊まろうと家に電話をするが、何度かけても出ない。結局、きっこは帰宅することに。姉夫婦が電話に出られなかった理由は、出刃包丁と拳銃を持った男(高橋明)が家に押し入り、夫の光夫(矢崎滋)を縛り、姉の八重子(折口亜矢)を強姦していたからだ。男は、八重子が最後には感じていたのだから強姦ではなく和姦だと言い、金を奪って逃げる。家の前で車に乗ろうとする強盗強姦犯ときっこはすれ違う。結局姉夫婦は外聞を恐れ、警察に届けなかった。その日以降姉夫婦がぎくしゃくしていたが、きっこには理由はわからない。
   きっこもミコも、退屈していて遊び歩いている。母の前の男、徳田(蟹江敬三)は、スーパーリアリズムの似顔絵かきだ。春画など客の依頼で何でも書くが、徳田の店で、ジミー加藤という若者と知り合う。ミコは結局ジミーに処女を捧げた。きっこの家は何とか平穏を取り戻していたが、ある日、強盗強姦魔が再びやってくる。八重子が再び感じてしまったことで、夫婦は離婚し、一家はバラバラになった。きっこも高校を辞めることにした。働かせて貰おうとやってきた徳田の店で、強盗強姦魔の似顔絵を見つける。ひと月前くらいに依頼してきた客で、ミコは母の店にも来たことがあるという。男を探すために、しばらく、ミコの母の店Qで働くことにするきっこ。ひと月ほどたったある日、男が現れた。きっことミコは男に復讐するために、男を誘う。しかし、逆に男にモーテルに連れ込まれ、きっこは処女を奪われてしまった。満足げに立ち上がりミコに近づく男の頭を椅子で殴り、気絶させ、身体を縛る二人。部屋にあった鞭で男を殴り続ける。血まみれの男を残し、男の車で海へ行く二人。車の中には拳銃があった。車を撃ち燃やす二人。
   たぶん、台本通りに撮った絵を相当強引に縮めたのかもしれない。急にテロップで、何ヶ月後とか、1年が経ったとか入りだす。女子高生役二人の演技の拙さもあって、正直かなり酷い出来だ。昔みたことがあると思っていたが、未見だったかという気分に。それとも、きれいさっぱり忘却の彼方に行ってしまったのか。
   81年日活東陽一監督『ラブレター(5)』。
   加納有子(関根恵子)は、詩人で53歳になる小田都志春(としはる)(中村嘉葎雄)の愛人。かって都志春の詩でダンスを踊ったことがあり、都志春から誘われ、肌の白さからウサギと呼ばれ女になって6年が経った。しかし、都志春は本宅に妻もおり、気紛れにしか有子のもとにはやって来ない。有子が住む原宿の家の隣には、タヨ(加賀まり子)と言う人妻が、数名の男たちに部屋を貸している。男たちは、隣家の若く美しい有子が気になり食べかすを有子の家の庭に毎晩投げ捨てるせいで、蠅が大量発生し不衛生この上ない。また、夜遅く近くの公園のブランコの物悲しい音が聞こえ、有子を眠らせない。ある日公園に行ってみると中年男(仲谷昇)がブランコを漕いでいる。男はタヨの別れた夫村井で、妻への未練で、彼女に聞かせようてブランコを漕ぐうちに、漕がないと眠れなくなったという。
   都志春は、たまに現れて有子を可愛がっていくが、有子が起きるといなくなっており、その後音信不通が続く。有子は睡眠薬を飲んでも眠れない。ある日出版社の男が生活費だけ届けにくる。全集の校正で缶詰めになっていると言う。有子が不眠を訴え、胸を借りるだけでもいいと言うと、男は都志春に知れることを恐れ逃げ出した。しかし、数週間後、耐えられなくなった有子が出版社に電話をすると、都志春は妻が病気でずっとつききりで看病していると言われる。ショックを受ける有子。町を彷徨い、公園まで来たところで、睡眠薬もあり倒れてしまう。有子が目を覚ますと都志春がいる。公園で倒れている有子を見つけたタエが自殺を図ったと連絡したのだ。睡眠薬を吐いたため助かった。医者からは絶対安静と言われていたにも関わらず、都志春は有子を抱く。しばらくの間都志春は有子の傍に付き添った。更に、妻と離婚し、有子を妻とした戸籍を見せる。しかし、また都志春は行方をくらます。
   ある日、タエと歩いていると、公園でブランコに乗った村井に会う。なぜ有子と村井が知り合いなのか怪訝な表情のタエ。しばらくして、有子が映画を見て家に帰ると門の前に都志春が立っている。浮気をしているだろうとしつこく迫る都志春。ブランコの男は誰だと言う。どうもタエが告げ口したらしい。結局体を調べるといって強引に有子の体を求める都志春。更に、有子の白い内股に、“とし”という入れ墨を入れる都志春。有子は妊娠していると告白し、都志春の子供を産みたいと言う。強引に中絶させる都志春。その頃から、有子の精神が病み始める。看病している都志春がタエから電話の取次ぎを受ける。有子が隣家に行くと抱き合っている都志春とタエ。また都志春はいなくなった。不眠が続く有子は村井を誘う。添い寝をしてもらったが、有子の心身は都志春なしでは眠れなくなっていた。有子が隣のアパートの残飯を片付けているとタエが村井を見つけた。泊めてもらっただけだと村井が言ってもタエは信じない。自分が説明するとタエの部屋に上がっていた筈の村井がタエを抱いている。タエがトイレに行くと、中に気が触れた有子の姿が。
   有子は精神病院に入院する。ようやく彼女は安眠することができた。面会だと言われて面会室に有子が行くとタエがいる。都志春が亡くなった新聞を見せるタエ。今日が告別式だが、本妻は入院中だし、余計なもめごとが起きないように、有子を退院させないように周りがしていると教えるタエ。告別式に、喪服姿の有子がやってくる。受付の編集者たちは迷惑顔だ。線香くらい上げさせてくれと無理を言い、霊前に座る有子。顔を見させてほしいという願いはかなわなかった。遺影に向かって、ずいぶん早く地獄にいってしまいましたねと言って涙を見せる有子。
   ブランコに乗る村井と有子。肉体関係を持てば元の関係に戻るかと思ったがそんなことはなかったと言う村井。これからどうするんですかと有子に尋ねる。有子も村井に同じ言葉を返すのだった。二人、夜空を見ながらブランコを漕ぎ続ける。
   関根恵子、美しく可愛く可憐で素晴らしい。ついでに言えば、この時の加賀まり子も女盛りで匂い立つような色気に満ちている。リアルタイムで見た時には、全く魅力を感じなかった映画に、こんなに心が動くのは何故だろうとずっと考えていた。都志春の53歳の年齢にリアリティを感じるからなのか、かなり退色している酷いプリントがフィルターをつけているかのように統一した世界観を醸し出しているからなのか、単純に、この年になると関根恵子が若い娘に見えるからなのか、その前の2本のあまりの出来で、普通の球が豪速球に見えてしまうのか。以前、東陽一について、「サード」までで「もう頬づえはつかない」以降の作品は、全く評価しないと書いた気がするが、すみません、この「ラブレター」は素晴らしい。ポルノ映画を差別する訳ではないが、やはり、いい脚本といい役者といい演出がそろえば、ロマンポルノという括弧は忘れてしまうなあ。それにしても、30年経ってここまで印象が変わるとは・・・。「ラブレター」とは恋文ではなく、愛の文字という意味。昔見た時は、有子の独白が多いので、モデルになった金子光晴と愛人との手紙が元になっているのだと一人合点していた。今回、ようやく分かった。30年かからないと読め取れない自分の読解力は、その程度である。しかし、今回見ていて、「!」と頭の中の電球がついた瞬間、とても幸福な気持ちに。

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