2008年10月30日木曜日

男は任侠だ。女にはかなわない。

   阿佐ヶ谷ラピュタで、66年松竹松野宏軌監督『侠勇の花道 ドス(231)』。
   新潟の唐辰組代貸の梅林哲郎(長門勇)は、五年の刑期を終えて出所した。出迎えたのは、舎弟の幹太(佐々木功)。組に戻ると組長は(月形龍之介)は病で伏せっており、二代目を息子の昌太郎(田村正和)が襲名していた。梅林は、 祝福するが、昌太郎は自分の未熟さにコンプレックスを抱いて、自分を立ててくれる秋原(菅原文太)とつるんでいた。料理屋花月楼の酌婦お菊(香山美子)が、神崎組代貸(小松方正)に絡まれているのを梅林は助け、それをきっかけに2人は恋仲に。組長は亡くなる際に、昌太郎と農民の暮らしをよくするために興していた油田開発を梅林に頼む。実は秋原は、神崎(安倍徹)が油田開発を横取りするためのスパイだった。。独り立ちを焦る昌太郎をそそのかし、梅林を組内で孤立させ、観光事業に投資させて損害を与える。幹太はやくざに憧れる気のいい青年だが、煎餅屋の娘まき(関根ゆり子)と付き合ううちに、やくざの汚い世界に嫌気がさし煎餅屋の婿になって足を洗う決意をしたが、神崎たちと秋原が一緒にいることを目撃したことで殺されてしまう。
   石油はなかなか出ずに、梅林を悩ます。唐辰組に対する神崎組の妨害はあからさまになってきた。お菊は梅林にお金を渡そうと進藤に買われるが、止めようとした梅林と進藤の喧嘩に巻き込まれ失明する。追い詰められた梅林だったが、石油が遂に出た。しかしその事を知らない昌太郎は、神崎に土地を売ろうとする。契約書に判を押したところで真相がばれ、昌太郎は契約書を守るが袋叩きに。唐辰組は出入りに向かうが、梅林は昌太郎とお菊にドスを使わない約束をしており、参加しなかった。しかし、結局昌太郎は死に、お菊は攫われて進藤に陵辱され毒を飲む。幸いお菊の命は取り留めたものの、神崎たちが、石油櫓に火を放ったことで、梅林はお菊との誓いを破り、ドスを胸に、神崎たちのもとに向かうのだった。
    うーん。このところ仁侠映画の傑作を続けて観ているせいか、どうも新人松野監督ヌルい。ストーリーも、ただのボンボンで間抜けな二代目が騙され、梅林も義理と人情との板挟みと言えば板挟み、ただの優柔不断といえば優柔不断。なんせ困った顔で考えあぐねているうちに、何事も事態は悪化している。長門勇のとぼけた味のある顔が、苦悩していても、困ってぼーっとしているようにしか見えない(苦笑)。音楽もお涙頂戴的な大正琴の甘ったるくセンチメンタルなメロディーと仁侠モノというよりはチャンバラ映画の立ち回りのようなものばかり。薄っぺらいなあ。
   池袋新文芸坐で、73年松竹加藤泰監督『花と龍 青春・愛憎・怒涛編(232)』火野葦平原作。
   明治44年小倉へ向かい線路を歩く赤子を連れた若い夫婦がいた。男は玉井金五郎(渡哲也)と妻マン(香山美子)と息子の勝則である。彼らは中国とブラジルに渡って一旗揚げる切符代稼ぎのつもりで、北九州の永田組の沖仲仕になる。勝則が艀て流された時助けたのは、侠客の栗田の銀五(田宮次郎)と島田ギン(任田順好/沢淑子)だ。銀五は、マンを見て淡い気持ちを抱く。永田組で小頭が、人前でマンを犯そうとした騒ぎを収めた金五郎を永田親分(笠智衆)と姉さん(菅井きん)は気に入り、後任の小頭にした。永田親分の女と酒ボケは、永田組だけでなく、その所属する連合組をも危うくする。パナマ丸の作業を対立する友田組にへ渡す念書を取られていたが、金五郎の働きで乗り切り、大庭組の親分大庭春吉(汐路章)は、永田組を畳んで、金五郎に玉木組を持たせることに。大庭と一緒に行った別府の賭場で、金五郎は、蝶蝶牡丹のお京(倍賞美津子)に会う。彼女は名古屋の賭場で、初体験の金五郎を大当たりさせ、名古屋から出て男を上げるきっかけを作った女だった。昔語りで2人は飲み酔いつぶれる。その頃、賭場では、お京に目をつけた友田組友田喜造が、金五郎とお京が消えたことで顔を潰され激怒していた。翌朝お京は、金五郎に龍の彫り物を入れないかという。最初おまんを気遣っていた金五郎だが、玉井組を仕切るのであれば、その位の決意を示すべきだと考え直し、6日間帰宅を遅らせ刺青の苦痛に耐えるのだった。2人は関係を持つが、金五郎はマンの下に帰る。マンは、刺青を見て女の影を感じ取り喧嘩の末、昌太郎と家を出る。途中下車した駅で、老渡世人唐獅子の五郎(石坂浩二)に出会う。五郎の連れていた子供が盲腸炎であることに気付いたマンは、恐縮する親子を病院に運び、必死に看病。子供の枕元に札入れを忍ばせて金五郎の本に帰るのだった。ある嵐の晩に玉井組の事務所に友田組が殴り込みをかけた。渡世の義理で、銀五とギンは助太刀したが、銀五は渡世人として尋常な勝負をした上で傷ついた金五郎をマンのもとに担ぎ込む。
  時代は昭和になった。満州事変など世の中はきな臭くなってきた。港も、機械化で沖仲仕たちは失業しかねない。成人した昌太郎(竹脇無我)は、友田の息のかかった遊廓の女郎光子(大地喜和子)を足抜けさせようとする。光子は沖仲仕の娘で父親の事故死で、売られたのだ。昌太郎の努力にも関わらず、10日間二人は暮しただけで光子は捕まり、マニラに売られてしまった。ある日、玉井組に蝶蝶牡丹のお葉(倍賞美津子)がやってくる。マンに仁義を切り、マンはきっちり返したあと、お葉の元に金五郎を差し向けるのだった。金五郎は、お京と瓜二つのお葉に驚く。ただ、お葉は金五郎を悪し様に罵って去る。光子を失った昌太郎は、沖仲士に交じって働きだす。金五郎、マンを初め玉井組の皆は喜ぶが、昌太郎は沖仲士の労働組合を結成して、石炭運搬の機械化への反対と沖仲士の暮らしを訴えて立ち上がるのだ。友田は、軍部、警察にも根回しし、ストライキ潰しを露骨にやり始める。小競り合いから、友田が用意したマシンガンなどが火を噴き、金五郎、大庭たちを巻き込んで、本格的な戦いになっていく。友田への義理で組合潰しに回っていた銀五は、昌二郎が銃撃された時に自分を犠牲にして助けるのだった。去った筈のお葉も金五郎への加勢をしていた。また、マンに助けられた唐獅子の五郎の子、十郎(石坂浩二)は、友田に銃を向け組合の要求をのむよう脅迫し念書をとった。ストライキは、沖仲士たちの勝利となった。昌太郎は、光子に会いにマニラへ旅立った。
 昨日の『人生劇場』に続いて、松竹任侠超大作。やはり、スケール大きく、2時間半を超えても飽きさせない。もう加藤組のキャストはほとんどお馴染みさんである。特に任田順好/沢淑子、なんでも凄いが、この映画での存在感は強烈だ。親が潰した島田組再興を胸に渡世を歩いて行く女。なんせ、島田組組長になってからの通称は、ドテラ婆(ババア)である。銀五を友とし、任侠を説き、人情に生きる最高の女。何だか、醜女ぶり好きになってしまった。あと、見ものは、蝶蝶牡丹のお葉が、玉井組に現れ、マンと仁義を切り合うシーン。香山美子も、倍賞美津子も、女優としても女としても脂が乗った一番いい時期だったんだろうな。大地喜和子の官能シーンも含め、加藤泰監督の超クローズアップで、女たちに迫っていくカメラ。エロい。エロ過ぎる。
  そこから神保町シアターで、63年宝塚映画久松静児監督『丼池(233)』菊田一夫原作。大阪丼池(どぶいけ)を生き抜く女たちの姿、なかなか見もの。商売に失敗し自殺した父親の意趣返しで丼池に高利貸しの女社長室井かつみ(司葉子)は、美人で冷静な判断で業績を伸ばしている。向かいにある4代続く老舗の繊維問屋、園忠で働く兼光(佐田啓二)は、室井とは、かって親の決めた婚約者だったが、やはり親の商売が失敗して立ち消えになり、今では大学の先輩として、ハラハラしながら彼女を見守っている。室井の金主は、長い間丼池で金貸しをしている平松子(三益愛子)であった。平の金利は高く、独立した資金が欲しかった室井は、宝投資という、3か月で3割利息という素人向けの金融商品を売り出す。はたして、利にさとい丼池の人たちの間で大ヒットとなる。松子は、園忠の主人園田忠兵衛(中村雁治郎)からの個人的な債権をもとに、園忠を自分のものにしようとする。かつみは、宝投資で得た4000万の資金を園忠に出し、松子と敵対することを鮮明にする。松子とかつみの女の戦いはメンツを賭けた女の戦いになってきた。松子は、宝出資を攻撃し、室井商事が不渡りを出すという噂を流すと、丼池中にみるみる広がり、取り付け騒ぎが起こる。ほとんどの資金を園忠に注ぎ込んでしまった室井は、追い詰められる。そのころ忠兵衛は、料理屋蛸梅の女将村田ウメ子(新珠三千代)の手練手管で、松子や平淑子の手に渡るよりは、自分が差し押さえることで、園忠を守ると言われて、4200万を第3者から借りたことにしたニセ契約書に判を押してしまう。4代続いた園忠はいよいよ人手に渡ってしまうことに・・・。
  丼池の女を演じる三益愛子、浪速千栄子、森光子ら芸達者たちの話術が特筆すべき。そこに絡んでいく、ビジネスに生きようとする司葉子、手練手管で男たちからお金を巻き上げて、料理屋をどんどん大きくしていく女将、新珠三千代。凄い女優陣だなあ。
  夜は、元会社の後輩と高円寺きよ香で、ゴーヤチャンプルとオリオンビール。

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