2008年10月31日金曜日

料理映画は観方がむすかしい

 池袋新文芸坐加藤泰監督特集。
 73年東宝配給『日本侠花伝(234)』。大正時代、第一次世界大戦が起き、日本は米騒動なと社会情勢は大変混乱していた。北九州を走る汽車の三等客室で、近藤ミネ(真木洋子)が、読み解き本(パズル本みたいなものか)を、ハコウリしていた。ミネは郷里の愛媛宇和島から、町一番の大店の息子大浜実(村井国夫)と駆け落ちをし、生活費を稼いでいるのだ。その汽車の二等客室に所属政党を変えて恨まれていた土田代議士が乗っていた。刺客の男がいきなり土田を刺殺し、鉄橋から飛び降り姿を消す。ミネは男の鋭い目に惹きつけられるが、男が一瞬、実の隣の席に座ったことで、2人は官憲に逮捕され、留置場に。特に実はかなり痛めつけられる。その頃小川ツル(任田順好/沢淑子)も組合活動を手助けしていたことで、激しい拷問を加えられていた。やっと出獄し、乗り込んだ貨物列車の荷台で、ミネ、実、ツルは再会する。ミネとツルは福岡若松のカフェで女給となる。ミネは実に小説家にならせようと健気に尽くすのだ。しかし幸せな日々は続かない。ミネの留守中に、実の母親と店の番頭、ミネの漁師の父親(藤原釜足)が連れ戻しにやって来る。母親に素直に同行する実をツルは罵るが、実たちは、宇和島行きの船に乗る。話を聞いて駆け戻ったミネに実を追いかけて本心を聞けと、父親ともみあいながらツルは叫んだ。ミネは結局宇和島まで追いかけ、祭りの混乱もあって実と逃げる。ただ必死に気持ちを伝えるが、実自身は警察での拷問で自分の敗北を感じて捨て鉢な気持ちになっていた。ミネが誤って海岸の崖から足を踏み外した時に、実は必死に助けようとするが、2人とも転落した。偶然海に釣りに出ていた長田組長田金三(曽我逎家明蝶)と子分の早川千太郎(武藤章生)によって2人は助けられた。すぐに実は母親と番頭たちによって家に帰される。
  数年が経った。ミネと金三が、社会運動家で牧師の加賀豊彦(加藤剛)の立ち合いでキリスト教式の結婚式を挙げた。金三の長田組は、博多港の港湾人夫の差配をしており、堅気で人情味溢れる親分の人柄もあり、周囲の人々に慕われていたが、やくざの岸本強(安部徹)の岸本組からの妨害を受けていた。結婚式の夜、長田に、岸本の刺客襲いかかった。男は、岸本への渡世の義理で、代議士殺しに続いて引き受けた田中清二郎(渡哲也)である。田中は長田の急所は外したが、瀕死の重傷を負わせる。騒ぎのさなか翌日軍の特別な荷積みの会議があるので、参加するよう電話があった。これに参加させないために岸本が襲撃させたのだ。ミネが長田の代理で会議に参加、女だと馬鹿にする岸本たちに、海軍大尉(北大路欣也)は、内部情報が漏れていることを失言した岸本を一喝、今朝の新聞を読んだかと聞き、ミネだけが、シベリア出兵の記事を読んでいたので、独断で長田組に決定した。
  これで諦める岸本ではない。軍向けの荷積みの最中に、米騒動の混乱を起こし、人夫たちに米を盗ませ、賄賂を送っている警官によって窃盗容疑で逮捕させる。翌日の作業が 出来なくなりかねない危機に、ミネは、人々に頭を下げるが、米騒動の集会が開催予定で、なかなかみな納得しない。ミネのピンチを救ったのは、田中だった。渡世の義理で岸本にしたがったが、あまりに汚い遣り口に反発したのだ。気質の長田組が潰れれば、やくざものの岸本組に港を仕切られて大変なことになると説得、みな荷積みに協力することになり、無事長田組の面目は立った。勝利の美酒に酔いしれる長田組。長田はミネに、隠れている田中に酒を持っていかせる。それは、田中とミネのお互いの気持ちに火を着けてしまい、汽車で出会った時の思いを確かめ合うのだ。しかし、2人が組に戻ると、米問屋への打ち壊しが広範囲に起きていた。岸本組は、放火やデマを飛ばして煽動し、そのドサクサに、長田組をぶっ潰そうとする。町中が大混乱の中、ミネは、米問屋に安売りを約束させ長田組のシマ内の沈静化させた。だが、岸本の意を受けた警察は、田中を殺人容疑で捕まえようとし、ミネが逃がしたとして逮捕、陰惨な拷問が始まった。
  映画初出演の真木洋子かなり頑張っている。最初の汽車での初々しい娘から、女となり、長田組の姉さんとしての貫禄を見せるところまで、女が変っていく姿を見事に演じきっている。終番の拷問シーンは体当たりという形容詞を超えている。最初沢淑子の取り調べ場面もかなり凄くて、彼女の女優魂の面目躍如だと思ったが、真木もいい勝負、女の面子をかけて張り合っている。彼女は、NHK朝の連続テレビ小説の出身だっただけに、当時相当センセーショナルな話題を呼んだ記憶はあるが、触手伸びなかった。何故だろう。真木洋子と言えば、真木よう子!!『パッチギ!』以来激しくチェックしているが、どっちも良かったんだなあ。
  81年大和新社製作東宝配給『炎のごとく(235)』。飯干晃一の『会津の小鉄』を原作に、幕末の離れ瞽女おりんを愛した会津の小鉄の話。賭場のもめごとで、仙吉(菅原文太)は、気紛れに抱いた瞽女のおりん(倍賞)に助けられる。京都の大垣屋に草鞋を脱ぐが、大垣清八(若山富三郎)と妻お栄(中村玉緒)に気に入られた。大垣組は京都守護の会津藩の御用を受け、新撰組とも近かった。会津組御用で、仙吉は次第に会津の小鉄として男を上げていく。ただある出入りでおりんは仙吉を守って命を落とす。仙吉の隣に住む八百屋の一人娘あぐり(豊田充里)が、新撰組の若者佐々木愛次郎(国広富之)と一緒になりたいと言った時に侍は女を不幸にすると反対していたが、あぐりの美しさに目をつけた芹澤鴨の策略で2人は死ぬ。怒り、同じ小鉄という刀を持つ友人近藤勇(佐藤允)を激しく非難する。その夜、近藤たちは芹澤一派を粛清する。小鉄は、芹澤を切り八百屋夫妻にトドメを打たす。
 加藤泰最後の劇映画だそうだが、81年既に思い通りに撮れなかったんだろうか。あのローアングルで超クローズアップした匂いたつようなフレームワークは皆無だ。大映京都スタジオを使いセットなど、それなりにお金をかけているし、時代劇スターの友情出演。小鉄を狙撃する赤蝮の権次役の汐路章はじめ、加藤組総出演(沢淑子は残念ながら出ていないが)なだけに、もったいなかった。日本映画界が末期症状で、なんとか映画を撮ろうと足掻いていた時代ならではなんだろう。
   銀座シネスイッチで『しあわせのかおり(236)』。金沢のはずれに古いが清潔な新上海飯店という店がある。料理人は王(ワン)さん(藤竜也)。ランチは、山(肉料理)海(魚料理)の二種類しかないが、そこに集う人は皆幸せな顔になる。絶品のカニ焼売を市内の百貨店に出店しないかと、貴子(中谷美紀)は交渉に来たのだが、王には全く相手にされない。夫が亡くなってから一人で娘を育ている貴子は、毎日ランチに通い詰めるうちに、単純に食べることを楽しみにしていたのだった。ある日王は脳梗塞で倒れ、麻痺が残り、医者から復帰は難しいと言われる。ある夜、王の下に貴子が現れ、会社を辞めて来たので自分を弟子にしてくれと言う。確かに、蟹焼売の作り方を教えて欲しいと言った彼女に王は会社を辞めて弟子入りしたら教えてやると答えたのだ。一度は拒否したが、王は受け入れる。特訓が始まった。
    料理そのものは、かなり凝って撮影され、とても美味しそうだが、調理や店内のシーン全てロケのせいか少し凡庸だ。また、せっかくの金沢、季節感が弱い。全体に悪くはないが、何か物足りない。中谷美紀、松子の後なのに、マーケティング失敗で、銀座シネスイッチ、レディースデーなのに人が入ってないのは、製作委員会の、東映、読売テレビ、バッブ、電通・・・どこが戦犯なのかはわからないが・・・。
  ただ、音を含めた料理のシズル感は最高で、今日で公開終了の映画二本観ようと思っていたが、切り上げて博華で餃子とビール。

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