シネカノン有楽町1丁目で、中嶋莞爾監督『クローンは故郷をめざす(59)』。
大気圏外で事故が起き、金本明が亡くなった。宇宙飛行士高原耕平(及川光博)が職員と話している。今回の事故で計画の大幅な見直しがされそうで、予算が削減される可能性が大きいと話している。次回の予定だった耕平の宇宙飛行の目途は立たない。そこに、金本の母(藤あけみ)がやってくる。
母、高原洋子(石田えり)は、耕平(塚本俊)と昇(塚本将)という双子の兄弟を育てている。人参が嫌いで少し乱暴者の耕平と気持ちの優しい昇。近くの河で遊ぶ二人。耕平が釣りをしていると流される。助けようと河に入る昇。結局耕平は自力で這い上がるが、昇は溺れて亡くなった。小学校2年生のことだ。
耕平の妻時枝(永作博美)が、植物人間状態の洋子の看病をしている。大気圏外で船外活動をしている耕平。トラブルが起き耕平は宇宙に投げ出される。洋子の生命維持装置が異常を示している。
クローン研究所で、時枝は、研究所長の影山(嶋田久作)と宇宙開発研究所所長の笹川(矢島健一)を前にしている。影山たちは、耕平が希望したことだと言う。耕平は自分が亡くなった場合は、クローンの製造を承認していたというのだ。全く話を聞いていない時枝は納得できない。しかし、既にクローンの耕平は誕生している。現実を受け入れられず、認めない時枝。再生された耕平と話をする影山。耕平は、小学校2年の時の記憶で止まっているようだ。意識の回復の失敗だ。
耕平がクローン研究所を脱走する。子供の時に遊んでいた河の下流から歩き続ける耕平。あぜ道の途中に宇宙服がある。ヘルメットを開けると耕平の顔だ。雨の中、宇宙服ごと背負って歩き続ける。農夫(田村泰二郎)が声を掛け、自宅に連れて行く。食事の人参を残している。再び歩き始める耕平。しかし、宇宙服は空になっている。途中産廃業者を通り抜けようとしたときに、業者の男(緒方明)に、勝手に持ち出すなと宇宙服を取り上げられてしまう。
再び耕平が再生される。時枝が呼ばれる。帰宅する二人。君に言えば反対されると思ったので、言えなかったんだと謝り、母親を心配する耕平。時枝は、母の死を告げる。しかし、耕平はやはり、歩き始める。農夫が声を掛ける。双子の兄弟のことだろうと言う。耕平の跡を歩き続ける耕平。廃屋で倒れ冷たくなっている耕平を見つける。宇宙服を着た耕平を背負い歩き始める耕平。
言い訳をすると、朝早く起きた上、検査後の朝食、寒い外から暖かい劇場内、悪条件が重なる。更に音楽がほとんどない淡々とした展開(普段音楽の過剰に文句ばっかり言っているのだが(苦笑))、時々意識が飛ぶ。映画自体、回想シーン入るし、元々クローンだし、一卵性双生児だし、自分が見た夢の一瞬のインサートもあり、複雑になる。負け惜しみでなく、それはそれで迷宮をさ迷っている気分でちょっといい。まあ言い訳だ。
一卵性双生児の兄弟を子供時代に亡くし、母親のためにもいく続けなければいけないと思いながら育った耕平の気持ちと、相次ぐ宇宙開発中の事故死で宇宙飛行士のクローン再生という禁じ手を使う研究所。母と昇と暮らした場所へ戻っていこうとするクローンたちの気持ち。河がひとつのモチーフになっているので、鮭の遡上を連想させる。
淡々とした及川光博と、現実を受け居られれないまま熱く抗議をする永作博美。二人ともかなり頑張っている。しかし、もう少しな印象。演出の問題なんだろうか。
1階下のよみうりホールで、読売新聞社の会社説明会をやっており、エレベーターも階段も満員。黒いスーツの善男善女。ここ数年就活ファッションは、ほとんどブラックスーツ一色になった。一昨年まで面接していたんだなあと思い出す。どん底不景気な中での就活、お互いめげずにいようねと、勝手に自分も仲間だという気に(苦笑)
神保町シアターで、男優・森雅之。58年東京映画川島雄三監督『女であること(60)』。
弁護士の佐山貞次(森雅之)の仕事は順調で忙しい日々を送っているが、結婚して10年になる妻の市子(原節子)との間には子供がいない。女中のしま(中山千枝子)、それに寺木妙子(香川京子)と暮らしている。妙子の父親は殺人事件を起こし第1審では死刑判決が出て、小菅拘置所に収監中で、佐山の弁護で控訴している。可哀想に思った市子が、自宅に引き取ったのだ。外出しようとしている妙子に、佐山は事務所に行きがてら車で送ろうかと言うが、妙子は恐縮して固辞する。デパートの屋上で、妙子の唯一の趣味である小鳥を見ている妙子に、声をかける学生有田(石浜朗)がいる。何か本心を明かさない妙子に、有田は不満におもいながら、惹かれている。急に屋上で騒ぎが起きる。自殺だ、人殺しだと言う声が聞こえ、気絶する妙子。
市子の下に大阪にいる女学校時代の親友の三浦音子(音羽久米子)の娘のさかえ(久我美子)が東京に家出をし、市子を慕っているので、会いに行くだろうとの速達が届く。佐山の友人の村松(芦田伸介)とその息子光一(太刀川洋一)と佐山夫妻との会食で、東京ステーションホテルに行くと、さかえがいる。頭の回転もよく美人のさかえだが、甘やかされて育てられたので、きまぐれで、調子がよく、自分が愛されていないと機嫌が悪くなる。さかえの奔放な行動は佐山夫妻の関係にひびをいれることになる。
光一の誘いで市子とさかえは、宝塚劇場に行く。光一とさかえは、幼馴染だった。会場で、光一は仕事で世話になっている東亜産業の清野(三橋達也)を紹介する。二人は初対面のようによそよそしい。しかし。かって二人は、水産学校の学生と女学生として交際していた。17年振りの再会に心穏やかではない市子。清野の妻は病死している。
その頃女学校の同窓会がある。数日前から体調を崩している佐山を気遣う市子。あれこれと面倒をみているさかえに心穏やかではない市子。庭に見事に咲き誇っていた菊を切花にして持ってきたことで爆発する。佐山は、さかえに、この菊は市子の亡くなった父が丹精していた、庭の主なんだと説明する。佐山から大丈夫だからと重ねて言われ、同窓会に出かける市子。同窓会の帰りに、元子(丹阿弥谷津子)、くに子(荒木道子)、よし子(菅井きん)らと、やはり同窓だった女流画家の吉井(南美江)の個展を訪れる。清野が先日やってきて貝殻を題材にした作品を買ってくれたという吉井。女学生時代、市子が海の声が聞こえるといって貝殻を好きで集めていたことは、当時誰でも知っていたことだ。そこに光一が現れ、市子が見に行きたいと言っていた東をどりに案内する。しかし、このチケットを手配してくれたのが清野で、本人も来ていると聞いて、新橋演舞場の入口で、風邪で寝ている佐山を理由に帰宅する。
さかえは、佐山の事務所を手伝い始める。明るくテキパキしたさかえがやってきてよかったと、働きながら学校に通っている浅川(山本学)たちからも好評だ。ある日、佐山を訪ねて清野がやってくる。取り次ぎながら、微妙な表情のさかえ。清野がご夫妻で食事でもと誘うが、市子は断り、佐山、清野、さかえで食事をし、ナイトクラブに行く。無理やりさかえにダンスを誘われた佐山は、しかし具合が悪くなる。佐山とさかえを家まで送る清野。その日、音子が上京している。清野のことを知っている音子は、市子の相談に乗っているところに、三人が帰宅する。早く帰そうとする市子に、事情を知らない佐山は失礼じゃないかと言う。その夜遅く、同室で寝ている母、音子に、清野と市子の間には何かあるのではないのかと詰問するさかえ。何もないという音子だが、明らかに動揺している。
翌日、はとバスに乗る市子と音子。江島生島のバスガイドの話に、微妙な顔の二人。近くの土手に有田と妙子がいる。住んでいるところを見たいという有田を断りきれない妙子。自室で、妙子は泣きながら、両親が亡くなっているというのは嘘で、自分の父親は未決囚で拘留中で死刑になるかもしれないと告白する。泣き続ける妙子を抱く有田。さかえが、佐山の用で書類を取りに家に戻ってくる。何度ベルを押して妙子が出てこないので裏に回ると、裏口を走り去る有田の姿を目撃する。その晩、妙子が書置きを残して姿を消す。佐山夫婦の留守宅で、有田と関係してしまったことを、夫婦に対する裏切りと考え、罪悪感に耐えられなかったのだ。しかし、市子は、佐山がさかえばかり可愛がるからだと夫を責める。数日後、光一と妙子が踊っている。妙子自身も、自分が何をしたいのかが分らなく苦しんでいるのだ。理解者が欲しいのだと言う。その夜、妙子は泥酔して帰宅する。佐山が甘やかすからだと再び市子は夫に迫る。
市子は、妙子と有田が暮す貸し間を訪ねる。驚く妙子を励まし、金を渡す市子。妙子との結婚の許しを貰いに実家に帰省していた有田は、当然のように、死刑囚の娘、殺人者の娘との結婚には大反対される。有田の気持ちも影響を受け、妙子一人を残して、学生寮に引っ越してしまう。
妙子の父親の公判の前日、佐山は、さかえと車で帰宅する途中、さかえが甘えるようなことを言いだしても相手にしない。急に車を止めさせ、河原に走り出すさかえ。佐山は追って行き、しまいにはさかえの頬を打つ。父親にも母親にも打たれたことのない頬を打ってくれた佐山に感謝しながら泣くさかえ。さかえくを抱きしめ唇を重ねたようにも見える。一人さかえを残して帰宅する佐山。夜中の3時を過ぎても帰宅しないさかえに、再び、市子は佐山に絡み始める。明日大事な仕事だからといっても、我々の結婚が誤りだったのではないかと思い、自分の父も祖父も弁護士で、この財産目当てで結婚したのかと尋ね始める市子。資産家の娘と苦学生の結婚なんて、どこにでもある話じゃないかと言う佐山。
翌日、市子は清野を訪ねる。佐山と市子の夫婦関係を壊すつもりはない。自分が考えていることは市子が幸せでいてくれることだという清野。市子が清野に期待した答えとは違うのかもしれない。そこにさかえが現れ驚く市子。清野は、昨夜、清瀬に滞在中の母親の音子のもとに送ったのだと言う。しかし、さかえが、清野がカナダに行ってしまうことを告げた時に、更なるショックを受けて走り去る市子。
妙子の父親の裁判はうまくいく。裁判所の前で、佐山に3年から5年の刑期になるだろうと言われ、喜ぶ妙子。そこに有田が現れる。話があるという妙子。有田と結婚する気がなくなったという。ではこのまま付き合おうと言う有田に、結婚を諦めたと思って嬉しそうな顔をしているが、別れを告げるために会ったのだと言う妙子。しかし、前夜一睡もしていない佐山は憔悴していた。車で帰宅する途中、交通事故に会う。生死も分からないまま、病院に駆けつける市子。足を骨折し、頭にも包帯を巻いて眠っている佐山の姿がある。
佐山の家に、村松と光一、音子が来ている。佐山の退院祝いだ。妙子は料理をする女中のしまを手伝っている。帰宅した市子を、笑顔が戻った妙子が出迎える。妙子は、佐山の紹介で少年の更生施設で働くことになったと言う。市子は、妊娠を佐山に伝える。来客した皆が佐山夫妻に子供が出来ることを祝福する。しまが、市子を呼びに来る。誰だろうと思いながら門まで行くとさかえがいる。みんないるから中に入れという市子に、自分は京都の父親を訪ねたのちに、自分が本当に何がやりたいのかを探すために旅に出ると言うさかえ。市子に謝罪して、さかえは雨の中を走り去る。
川端康成原作、「女であること」というタイトルは、女子養い難しということなのか。登場人物の女たちは、自分の感情をコントロールできずに暴走し、男たちを困らせる。女の嫌らしさを描くと、橋田壽賀子、内館牧子以上の川端康成。感情的な女に、理性的ぶって被害者面している男の方が立ち悪いと思うんだがなあ。オープニングに、丸山明宏(美輪明宏)が出演し、黛敏郎作曲、谷川俊太郎作詞のシャンソンの主題歌を歌う。あまりのスレンダーさに驚く。この場面見て、オーラの泉と分かる人はいないだろうなあ。
神保町シアター来る度にお客さん増えて凄い。今日も満席だ!!我々のような中高年シネフィル失業者の癒やしスポットではなくなってきた。金はなくヒマだけはある我々と違って、ここにマーケットは確実にあるんだけとなあ。月曜日に行ったシネマート新宿を思う。ちゃんと興収としてカウントされると、2009年度から無視出来なくなるんじゃないか。
渋谷に出て散髪してから、シネマヴェーラ渋谷で、森崎東の現在。
72年松竹大船『喜劇・女売り出します(61)』。 満員の山手線。金沢(森繁久弥)は、若い娘と身体がくっついて鼻の下を伸ばす。更に娘 の手が動いて、腰のあたりをもぞもぞさせるのでウハウハだ。正月早々、トルコ嬢を相手にそんな話を自慢している。頼んでいた煙草代を払おうと財布を探す と、見つからない。掏りだ。村枝(久里千春)の鮨屋でボヤキながら飲んでいると、掏りの娘がやってくる。村枝に聞くと、浮子(夏純子)という娘だと言う。 浮子の後をつけ、デパートのエレベーターの中で、帯留めを掏ったところで、捕まえ新宿芸能社に引っ張ってくる金沢。掏り扱いしてと、怒って服を脱ぐ浮子。 全裸になっても何もない。どう落し前をつけるんだと全裸の浮子に開き直られて、困り果てる金沢。しかし、浮子の後ろで寝ていたタマ子(中川加奈)が、手に 隠した帯留めに気が付きひと安心だ。
浅草の掏りの親方から逃げ出し行き先のない浮子は、新宿芸能社でストリッパーになった。 若く感のいい浮子は、振り付けをすぐに覚える。しかし、女将の竜子(市原悦子)は、他の踊り子のようにおかあさんと言ってくれないことが不満だった。しか し、「おかあさん、手品とストリップを組み合わせてみたらどうかと思う」と言う浮子の言葉に嬉し涙を浮かべる竜子。浮子の誕生日祝いをやろうと買い物に出 かける。しかし、着物売り場で、竜子が財布を掏られ、その女から竜子の財布を掏り返した浮子が、現行犯で逮捕される。上それは私の財布だと竜子が言って も、上品そうな掏りの女の言い分を聞いて、竜子たちまで警察に連れて行かれる。徳田刑事(花沢徳衛)に助けられ、新宿芸能社に戻ってくる。このままでは迷 惑を掛けると浅草に戻ると言いだした浮子に、怒って、せっかく買ったバースデーケーキを投げ捨てる竜子。
身寄りのない浮子 を自分の娘のように思っている竜子の肩を揉んでやりながら、「20歳まで鑑別所にいて、30まで男狂いでだったお前は、自分のように思っているんだろ」と 言葉を掛ける金沢。新宿芸能社を出た浮子を、面倒みるのは浅草の銀作親分の下で兄妹のようだった武(米倉斉可年)。武は、刑務所から10日前に出所したば かりだ。浮子が無意識のうちに掏った財布を開けてみると、山形から出てきて、丸玉靴店という店で働く娘朝子(岡本茉莉)の財布だった。朝子に財布を返した いという浮子の言葉に、靴屋にいってみると、借金を返せずに、美鈴という暴力売春宿に売られたらしい。武は浮子を、自分の塒の山谷の日ノ出館という宿屋に 行かせ、自分は美鈴に、朝子を訪ねる。初店だと言う女将(赤木春江)に言われて、部屋に上がると、男も知らないまま働かせられることになった朝子に同情す る武。財布に入っていた金を朝子に握らせ、女将にばれない様にしろという武。
武は日ノ出館に戻る。浮子は隣で大きく膨らん だカオル(穂積隆信)の看病をしている。カオルは美鈴で働かされていたらしい。生まれると苦しむカオルを前にオロオロする浮子に、オカマのカオルは、脳梅 毒に罹って、腹に水が溜まり、自分では妊娠していると思い込んでいるというのだ。しかし、その夜、カオルは亡くなった。火葬場で焼かれ、身元が分からない ため、死んだ地名の「浅草様」と書かれた遺骨を抱えている武。武に、自分が身代りになるので、朝子を助け出したいという浮子。武は一芝居を打ち、美鈴に浮 子を連れて行き、後払いでいいからと言って売り飛ばし、昨日の娘を、と言って朝子を映画に連れだす。しかし、計画は、浮子に電話をする筈だったキャバレー のママが忘れていたため、浮子はピンチに、ヤクザたちに襲われそうになったところをストーブを倒し、燃えあがる美鈴でようやく逃げ出す浮子。
新宿芸能社で、金沢と竜子を前に頭を下げる浮子。もういちど働かせてほしいという浮子に頷く竜子。そこに銀作(西村晃)が現れる。前科17犯の銀作が 言うには、浮子は自分の娘だと言う。自分の娘は堅気にしたく、自分が刑務所に入っている間長野の姉のところに預けたものの、折が会わずに家出をし、戻って きたときには、血は争えずいっぱしの掏りになっていたと言うのだ。金沢と竜子に迷惑は掛けられないので連れて帰るという銀作に、ストリッパーで貯めた30 万入った預金通帳を渡し、足を洗わせてくれと言う浮子。縁を切ると言って去っていく銀作。朝子は、新宿芸能社で女中をすることになった。
税務署員の姉川(小沢昭一)が新宿芸能社を訪れる。慌てる金沢たち。しかし、姉川は、浮子のストリップに通い詰めるうちに、結婚を前提に交際したいと 言うのだ。武が、新宿芸能社に現れ、銀作から預かったと言って、金沢と竜子に手紙を渡す。60万入っていて、浮子が嫁に行く時に支度に使ってくれと書いて ある。村枝の店で、武に会う浮子。堅気になってくれという浮子に、銀作を一人にする訳にはいかないと言って去る武。雪の中、立っている姉川に傘をさしかけ る。村枝の店の板前菊田(植田俊)を、従業員のきた子(荒砂ゆき)が引き抜いて、店を出した。店を続けられないと泣く村枝に、話をつけてやると出かける金 沢。威勢のいい割には、きた子の剣幕にたじたじだ。浮子は、ちょうど店に戻ってきた菊田を連れ込み旅館に拉致し、なぜ村枝を裏切ったのだと問い詰める。菊 田は、きた子が身体を触らせてくれたからだと言う。肉体関係もないという菊田に呆れる浮子。抱かせてやるから村枝の元に戻るという誓約書を掛書けという浮 子。浮子は、昔から可愛がってくれた村枝に恩返しがしたかったのだ。
浮子と姉川が結婚することになり、仙台にいる姉川の両 親に挨拶しに行くことになった。新宿芸能社で、ささやかな祝の席が設けられる。そこに、きた子が怒鳴り込みに来た。村枝と言い争いになる。肉体関係もあ り、結婚するつもりだと言うきた子の方が優勢だ。それなら、ついさっき寝たばかりの私の方がと言いだす浮子。ショックを受ける姉川。金沢が菊田の気持ちを 確かめようと、二階に上がる。しかし、すぐに困ったような顔で降りてくる。言いにくそうに、菊田と朝子が抱き合っているという。同郷の二人は、急にくっつ いてしまったらしい。返っていくきた子。トイレの中で泣き続ける姉川。菊田は朝子と一緒に村枝の店に戻ることになった。そこにやってくる武。カオルの骨を 持って、八丈島に行くと言う。しかし、骨を預けていたキャバレーに行くと、日ノ出荘で痛い目にあわしたやくざたちに遭遇してしまう。落とし前をつけろと 言って右手の人差し指と中指を詰めるやくざたち。駆けつける浮子に、血だらけになりながら、財布を懐から出し、おれの利き手は左だ。あいつらから財布を 掏ってやったと言う武。
翌年の正月、花園神社で、武と会う金沢。武は八丈島で百姓をしているという。竜子と浮子は、年寄りの旦那と歩いているタマ子に出会う。タマ子は、秘部が狭すぎて男に離縁された過去がある。幸せだというタマ子。本当の親子のように新宿の街を歩く竜子と浮子。
森崎東らしい喜劇。竜子は、市原悦子も悪くないが、中村メイ子の竜子のほうが、チャキチャキの江戸っ子ぽくていいなあ。夏純子、若くて脱ぎっぷりもよくて好演。
70年松竹大船『喜劇・男は愛嬌(62)』。桜が咲いている少年鑑別所。小川春子(倍賞美津子)は今日出所だ。鑑別所仲間のギン子(沖山秀子)に別れを 告げて、出身地の港湾地区(川崎?横須賀?)に戻ってくる。その話を聞いて幼馴染の曽我民夫(寺尾聡)は、春子の保護司を頼まれて彼女の更生のために張り切っている。しかし、その頃、春子を悪の道に引きずりこんだ、民夫の兄、オケラの五郎(渥美清)が、アフリカに行っていたマグロ漁船から降りて、久しぶりに、母親のカネ(桜むつ子) が営む実家のホルモン屋に帰ろうとしていた。
春子は、廃品回収業をしている父親(浜村純)に会い、カリエスで寝た切りの弟のケン坊のもとに戻る。薄い壁を隔てた隣は、カネのホルモン屋だ。父ちゃんは、遠いところから悪魔がやってくるというオソロシ様のお告げで一心に祈っていると、五郎が現れる。オソロシ様は、母ちゃんの死も予言したのだが、隣家の五郎のせいで、酷い目に遭い続けの父ちゃんにとって、最悪な悪魔の登場で、今回も的中してしまったのだ。
民夫は、美代子(中川加奈)に手伝って貰って、春子の歓迎会を開催する。しかし、民夫の企画は堅苦しいばかりで盛り上がらない。そこに一升瓶を下げた五郎が、ギン子たち鑑別所仲間を連れてやってくる。ギン子たちは、春子を追っかけて、鑑別所を脱走してきたのだ。下品な春歌などでも、盛り上がる歓迎会。やけ酒を飲んだ民夫は不満顔だ。五郎は、ドン亀こと亀吉(佐藤蛾次郎)に、ダンプを持って来させて、川崎まで遊びに行こうと言いだす。春子と美代子は酔い潰れた民夫を、家に連れていく。途中で、春子が乗っていないことに気がついた五郎は、ダンプを戻させる。しかし、酔っ払い運転のドン亀は、春子の家に突っ込ませてしまう。ケン坊の数センチ手前でやっと停止するダンプカー。
翌朝、地主(田中邦衛)が、ドン亀の親方と春子の家に来ている。腰を抜かして寝着いたままの父ちゃんに、地主は前から約束していた通りに立ち退けと言い、親方には、ダンプカーを差し押さえると通告する。2台しかダンプがなく、ドン亀の治療代やなんやかやで大痛手の親方も生活がかかっているので必死だ。その時、ダンプに乗っていて一人だけ全く無傷な五郎が現れる。五郎に詰め寄る3人。しかし、五郎は平気な顔で、春子に大学出のエリートサラリーマンの花婿を連れてくるので、その持参金で金なんざ払ってやると答える。100万なんて持参金を持った花婿なんてどこにいるのかと皆いぶかしがるが、何か勝算ありげな五郎。
春子は、民夫の世話で、美代子も働く海苔工場で働き始めた。そこに、2CVに乗った五郎が現れる。見合いだといって、無理やり春子を乗せる五郎。ギン子たちや、民夫まで乗り込んでドライブだ。運転しているのは神戸三郎(宍戸錠)、大会社の副社長だ。かって、ヘミングウエイに憧れてマグロ船に乗り込んだ神戸と、アフリカで知り合ったらしい。横須賀だか横浜の、外人バーで、踊りまくる神戸、春子、ギン子たち。ゴーゴーなんて踊れない民夫は、やっぱり飲み過ぎて酔いつぶれている。深夜、ギン子が、「朝日のあたる家」を歌っている。五郎から春子のことを聞かれてOKだという神戸。
数日後、意気揚々と神戸の会社に乗り込む五郎。しかし、神戸は、はとこで、社長の娘と翌月結婚式をすることになっているという。付き合わないかと言われたからOKしたのであって、結婚するいう話だとは知らなかったという神戸。全ては、五郎の早合点が撒いた種だ。月10万払うから恋人としてはどうだという神戸に、大事な春子を妾にする気はないと言う五郎。
100万円の返済もあるが、春子を玉の輿に乗せると大見えを切った五郎の面子もある。そこに地主は、埋め立ての権利を持っていて、ダンプ1台土砂を運びこむだけで1000円づつ取っていて、総資産1億円あるという話を、近所の源太郎(太宰治雄)と平松(佐山俊二)が持ってきた。300万の結納金が貰えると聞いて大喜びな五郎たち。春子を連れて貸衣裳屋に行き、さっそく、地主の住む掘立小屋に連れていく。もう、300万を手中に収めた気になっている五郎、源太郎、平松。しかし、その企みを怪しんだ地主はご破算にした。
100万円の返済まであと2日になった。役所の結婚相談所に行き、係員(左とん平)にごねて、斉田(財津一郎)という作家を見つける。春子を女子大生だと偽り、とりあえず、斉田の秘書にして、滞在するホテルに送り込むことに成功する。一つの部屋に置いておけば、男なら手をつけるだろうと言う五郎。結納金100万円まで承諾してもらったと話す五郎に、民夫はやりきれない思いで、ホテルのバーで斉田に、春子は、少年鑑別所出身で女子大生ではないという民夫。しかし、その話を聞いて逆に、春子と結婚を決意したという斉田。その夜、ホテルの非常階段で、民夫が斉田の部屋を見上げていると五郎が現れる。春子への思いを語る民夫の話を聞いた五郎は、斉田の部屋に行こうと言う。ホテルの中に入ると、騒ぎが起こり、警官に連れられて斉田が現れる。有名な結婚詐欺師の斉田は、春子と話すうちに、自ら警察に電話をしたというのだ。斉田は、五郎と民夫に、春子とは本当に結婚しようと思ったんだといいながら、連行されていく。
五郎は、ドン亀を連れて、長屋に戻り、春子の家に入り、父ちゃんとケン坊をホルモン屋に移し、突っ込んだままになっていたダンプカーを後退させ、荷台を持ち上げて、完全に家を破壊する。そして、ダンプで逃げ去り、売り払った。ダンプ泥棒で警察が追いかけているらしい。更に再びアフリカ行きのマグロ船に前借りする。その金を地主に払って、港を出る五郎とドン亀。埠頭にいる春子と民夫に幸せになれよと言って、手を振る五郎。
弁護士の佐山貞次(森雅之)
市子の下に大阪にいる女学校時代の親友の三浦音子(音羽久米子)
光一の誘いで市子とさかえは、宝塚劇場に行く。光一とさかえは、幼馴染だった。会場で、
その頃女学校の同窓会がある。数日前から体調を崩している佐山を気遣う市子。あれこれと面倒をみているさかえに心穏やかではない市子。庭に見事に咲き誇っていた菊を切花にして持ってきたことで爆発する。佐山は、さかえに、この菊は市子の亡くなった父が丹精していた、庭の主なんだと説明する。佐山から大丈夫だからと重ねて言われ、同窓会に出かける市子。同窓会の帰りに、元子(丹阿弥谷津子)、くに子(荒木道子)、よし子(菅井きん)らと、やはり同窓だった女流画家の吉井(南美江)の個展を訪れる。清野が先日やってきて貝殻を題材にした作品を買ってくれたという吉井。女学生時代、市子が海の声が聞こえるといって貝殻を好きで集めていたことは、当時誰でも知っていたことだ。そこに光一が現れ、市子が見に行きたいと言っていた東をどりに案内する。しかし、このチケットを手配してくれたのが清野で、本人も来ていると聞いて、新橋演舞場の入口で、風邪で寝ている佐山を理由に帰宅する。
さかえは、佐山の事務所を手伝い始める。明るくテキパキしたさかえがやってきてよかったと、働きながら学校に通っている浅川(山本学)たちからも好評だ。ある日、佐山を訪ねて清野がやってくる。取り次ぎながら、微妙な表情のさかえ。清野がご夫妻で食事でもと誘うが、市子は断り、佐山、清野、さかえで食事をし、ナイトクラブに行く。無理やりさかえにダンスを誘われた佐山は、しかし具合が悪くなる。佐山とさかえを家まで送る清野。その日、音子が上京している。清野のことを知っている音子は、市子の相談に乗っているところに、三人が帰宅する。早く帰そうとする市子に、事情を知らない佐山は失礼じゃないかと言う。その夜遅く、同室で寝ている母、音子に、清野と市子の間には何かあるのではないのかと詰問するさかえ。何もないという音子だが、明らかに動揺している。
翌日、はとバスに乗る市子と音子。江島生島のバスガイドの話に、微妙な顔の二人。近くの土手に有田と妙子がいる。住んでいるところを見たいという有田を断りきれない妙子。自室で、妙子は泣きながら、両親が亡くなっているというのは嘘で、自分の父親は未決囚で拘留中で死刑になるかもしれないと告白する。泣き続ける妙子を抱く有田。さかえが、佐山の用で書類を取りに家に戻ってくる。何度ベルを押して妙子が出てこないので裏に回ると、裏口を走り去る有田の姿を目撃する。その晩、妙子が書置きを残して姿を消す。佐山夫婦の留守宅で、有田と関係してしまったことを、夫婦に対する裏切りと考え、罪悪感に耐えられなかったのだ。しかし、市子は、佐山がさかえばかり可愛がるからだと夫を責める。数日後、光一と妙子が踊っている。妙子自身も、自分が何をしたいのかが分らなく苦しんでいるのだ。理解者が欲しいのだと言う。その夜、妙子は泥酔して帰宅する。佐山が甘やかすからだと再び市子は夫に迫る。
市子は、妙子と有田が暮す貸し間を訪ねる。驚く妙子を励まし、金を渡す市子。妙子との結婚の許しを貰いに実家に帰省していた有田は、当然のように、死刑囚の娘、殺人者の娘との結婚には大反対される。有田の気持ちも影響を受け、妙子一人を残して、学生寮に引っ越してしまう。
妙子の父親の公判の前日、佐山は、さかえと車で帰宅する途中、さかえが甘えるようなことを言いだしても相手にしない。急に車を止めさせ、河原に走り出すさかえ。佐山は追って行き、しまいにはさかえの頬を打つ。父親にも母親にも打たれたことのない頬を打ってくれた佐山に感謝しながら泣くさかえ。さかえくを抱きしめ唇を重ねたようにも見える。一人さかえを残して帰宅する佐山。夜中の3時を過ぎても帰宅しないさかえに、再び、市子は佐山に絡み始める。明日大事な仕事だからといっても、我々の結婚が誤りだったのではないかと思い、自分の父も祖父も弁護士で、この財産目当てで結婚したのかと尋ね始める市子。資産家の娘と苦学生の結婚なんて、どこにでもある話じゃないかと言う佐山。
翌日、市子は清野を訪ねる。佐山と市子の夫婦関係を壊すつもりはない。自分が考えていることは市子が幸せでいてくれることだという清野。市子が清野に期待した答えとは違うのかもしれない。そこにさかえが現れ驚く市子。清野は、昨夜、清瀬に滞在中の母親の音子のもとに送ったのだと言う。しかし、さかえが、清野がカナダに行ってしまうことを告げた時に、更なるショックを受けて走り去る市子。
妙子の父親の裁判はうまくいく。裁判所の前で、佐山に3年から5年の刑期になるだろうと言われ、喜ぶ妙子。そこに有田が現れる。話があるという妙子。有田と結婚する気がなくなったという。ではこのまま付き合おうと言う有田に、結婚を諦めたと思って嬉しそうな顔をしているが、別れを告げるために会ったのだと言う妙子。しかし、前夜一睡もしていない佐山は憔悴していた。車で帰宅する途中、交通事故に会う。生死も分からないまま、病院に駆けつける市子。足を骨折し、頭にも包帯を巻いて眠っている佐山の姿がある。
佐山の家に、村松と光一、音子が来ている。佐山の退院祝いだ。妙子は料理をする女中のしまを手伝っている。帰宅した市子を、笑顔が戻った妙子が出迎える。妙子は、佐山の紹介で少年の更生施設で働くことになったと言う。市子は、妊娠を佐山に伝える。来客した皆が佐山夫妻に子供が出来ることを祝福する。しまが、市子を呼びに来る。誰だろうと思いながら門まで行くとさかえがいる。みんないるから中に入れという市子に、自分は京都の父親を訪ねたのちに、自分が本当に何がやりたいのかを探すために旅に出ると言うさかえ。市子に謝罪して、さかえは雨の中を走り去る。
川端康成原作、「女であること」というタイトルは、女子養い難しということなのか。登場人物の女たちは、自分の感情をコントロールできずに暴走し、男たちを困らせる。女の嫌らしさを描くと、橋田壽賀子、内館牧子以上の川端康成。感情的な女に、理性的ぶって被害者面している男の方が立ち悪いと思うんだがなあ。オープニングに、丸山明宏(美輪明宏)が出演し、黛敏郎作曲、谷川俊太郎作詞のシャンソンの主題歌を歌う。あまりのスレンダーさに驚く。この場面見て、オーラの泉と分かる人はいないだろうなあ。
神保町シアター来る度にお客さん増えて凄い。今日も満席だ!
渋谷に出て散髪してから、シネマヴェーラ渋谷で、森崎東の現在。
浅草の掏りの親方から逃げ出し行き先のない浮子は、新宿芸能社でストリッパーになった。 若く感のいい浮子は、振り付けをすぐに覚える。しかし、女将の竜子(市原悦子)は、他の踊り子のようにおかあさんと言ってくれないことが不満だった。しか し、「おかあさん、手品とストリップを組み合わせてみたらどうかと思う」と言う浮子の言葉に嬉し涙を浮かべる竜子。浮子の誕生日祝いをやろうと買い物に出 かける。しかし、着物売り場で、竜子が財布を掏られ、その女から竜子の財布を掏り返した浮子が、現行犯で逮捕される。上それは私の財布だと竜子が言って も、上品そうな掏りの女の言い分を聞いて、竜子たちまで警察に連れて行かれる。徳田刑事(花沢徳衛)に助けられ、新宿芸能社に戻ってくる。このままでは迷 惑を掛けると浅草に戻ると言いだした浮子に、怒って、せっかく買ったバースデーケーキを投げ捨てる竜子。
身寄りのない浮子 を自分の娘のように思っている竜子の肩を揉んでやりながら、「20歳まで鑑別所にいて、30まで男狂いでだったお前は、自分のように思っているんだろ」と 言葉を掛ける金沢。新宿芸能社を出た浮子を、面倒みるのは浅草の銀作親分の下で兄妹のようだった武(米倉斉可年)。武は、刑務所から10日前に出所したば かりだ。浮子が無意識のうちに掏った財布を開けてみると、山形から出てきて、丸玉靴店という店で働く娘朝子(岡本茉莉)の財布だった。朝子に財布を返した いという浮子の言葉に、靴屋にいってみると、借金を返せずに、美鈴という暴力売春宿に売られたらしい。武は浮子を、自分の塒の山谷の日ノ出館という宿屋に 行かせ、自分は美鈴に、朝子を訪ねる。初店だと言う女将(赤木春江)に言われて、部屋に上がると、男も知らないまま働かせられることになった朝子に同情す る武。財布に入っていた金を朝子に握らせ、女将にばれない様にしろという武。
武は日ノ出館に戻る。浮子は隣で大きく膨らん だカオル(穂積隆信)の看病をしている。カオルは美鈴で働かされていたらしい。生まれると苦しむカオルを前にオロオロする浮子に、オカマのカオルは、脳梅 毒に罹って、腹に水が溜まり、自分では妊娠していると思い込んでいるというのだ。しかし、その夜、カオルは亡くなった。火葬場で焼かれ、身元が分からない ため、死んだ地名の「浅草様」と書かれた遺骨を抱えている武。武に、自分が身代りになるので、朝子を助け出したいという浮子。武は一芝居を打ち、美鈴に浮 子を連れて行き、後払いでいいからと言って売り飛ばし、昨日の娘を、と言って朝子を映画に連れだす。しかし、計画は、浮子に電話をする筈だったキャバレー のママが忘れていたため、浮子はピンチに、ヤクザたちに襲われそうになったところをストーブを倒し、燃えあがる美鈴でようやく逃げ出す浮子。
新宿芸能社で、金沢と竜子を前に頭を下げる浮子。もういちど働かせてほしいという浮子に頷く竜子。そこに銀作(西村晃)が現れる。前科17犯の銀作が 言うには、浮子は自分の娘だと言う。自分の娘は堅気にしたく、自分が刑務所に入っている間長野の姉のところに預けたものの、折が会わずに家出をし、戻って きたときには、血は争えずいっぱしの掏りになっていたと言うのだ。金沢と竜子に迷惑は掛けられないので連れて帰るという銀作に、ストリッパーで貯めた30 万入った預金通帳を渡し、足を洗わせてくれと言う浮子。縁を切ると言って去っていく銀作。朝子は、新宿芸能社で女中をすることになった。
税務署員の姉川(小沢昭一)が新宿芸能社を訪れる。慌てる金沢たち。しかし、姉川は、浮子のストリップに通い詰めるうちに、結婚を前提に交際したいと 言うのだ。武が、新宿芸能社に現れ、銀作から預かったと言って、金沢と竜子に手紙を渡す。60万入っていて、浮子が嫁に行く時に支度に使ってくれと書いて ある。村枝の店で、武に会う浮子。堅気になってくれという浮子に、銀作を一人にする訳にはいかないと言って去る武。雪の中、立っている姉川に傘をさしかけ る。村枝の店の板前菊田(植田俊)を、従業員のきた子(荒砂ゆき)が引き抜いて、店を出した。店を続けられないと泣く村枝に、話をつけてやると出かける金 沢。威勢のいい割には、きた子の剣幕にたじたじだ。浮子は、ちょうど店に戻ってきた菊田を連れ込み旅館に拉致し、なぜ村枝を裏切ったのだと問い詰める。菊 田は、きた子が身体を触らせてくれたからだと言う。肉体関係もないという菊田に呆れる浮子。抱かせてやるから村枝の元に戻るという誓約書を掛書けという浮 子。浮子は、昔から可愛がってくれた村枝に恩返しがしたかったのだ。
浮子と姉川が結婚することになり、仙台にいる姉川の両 親に挨拶しに行くことになった。新宿芸能社で、ささやかな祝の席が設けられる。そこに、きた子が怒鳴り込みに来た。村枝と言い争いになる。肉体関係もあ り、結婚するつもりだと言うきた子の方が優勢だ。それなら、ついさっき寝たばかりの私の方がと言いだす浮子。ショックを受ける姉川。金沢が菊田の気持ちを 確かめようと、二階に上がる。しかし、すぐに困ったような顔で降りてくる。言いにくそうに、菊田と朝子が抱き合っているという。同郷の二人は、急にくっつ いてしまったらしい。返っていくきた子。トイレの中で泣き続ける姉川。菊田は朝子と一緒に村枝の店に戻ることになった。そこにやってくる武。カオルの骨を 持って、八丈島に行くと言う。しかし、骨を預けていたキャバレーに行くと、日ノ出荘で痛い目にあわしたやくざたちに遭遇してしまう。落とし前をつけろと 言って右手の人差し指と中指を詰めるやくざたち。駆けつける浮子に、血だらけになりながら、財布を懐から出し、おれの利き手は左だ。あいつらから財布を 掏ってやったと言う武。
翌年の正月、花園神社で、武と会う金沢。武は八丈島で百姓をしているという。竜子と浮子は、年寄りの旦那と歩いているタマ子に出会う。タマ子は、秘部が狭すぎて男に離縁された過去がある。幸せだというタマ子。本当の親子のように新宿の街を歩く竜子と浮子。
森崎東らしい喜劇。竜子は、市原悦子も悪くないが、中村メイ子の竜子のほうが、チャキチャキの江戸っ子ぽくていいなあ。夏純子、若くて脱ぎっぷりもよくて好演。
70年松竹大船『喜劇・男は愛嬌(62)』。桜が咲いている少年鑑別所。小川春子(倍賞美津子)は今日出所だ。鑑別所仲間のギン子(沖山秀子)に別れを 告げて、出身地の港湾地区(川崎?横須賀?)に戻ってくる。その話を聞いて幼馴染の曽我民夫(寺尾聡)は、春子の保護司を頼まれて彼女の更生のために張り切っている。しかし、その頃、春子を悪の道に引きずりこんだ、民夫の兄、オケラの五郎(渥美清)が、アフリカに行っていたマグロ漁船から降りて、久しぶりに、母親のカネ(桜むつ子) が営む実家のホルモン屋に帰ろうとしていた。
春子は、廃品回収業をしている父親(浜村純)に会い、カリエスで寝た切りの弟のケン坊のもとに戻る。薄い壁を隔てた隣は、カネのホルモン屋だ。父ちゃんは、遠いところから悪魔がやってくるというオソロシ様のお告げで一心に祈っていると、五郎が現れる。オソロシ様は、母ちゃんの死も予言したのだが、隣家の五郎のせいで、酷い目に遭い続けの父ちゃんにとって、最悪な悪魔の登場で、今回も的中してしまったのだ。
民夫は、美代子(中川加奈)に手伝って貰って、春子の歓迎会を開催する。しかし、民夫の企画は堅苦しいばかりで盛り上がらない。そこに一升瓶を下げた五郎が、ギン子たち鑑別所仲間を連れてやってくる。ギン子たちは、春子を追っかけて、鑑別所を脱走してきたのだ。下品な春歌などでも、盛り上がる歓迎会。やけ酒を飲んだ民夫は不満顔だ。五郎は、ドン亀こと亀吉(佐藤蛾次郎)に、ダンプを持って来させて、川崎まで遊びに行こうと言いだす。春子と美代子は酔い潰れた民夫を、家に連れていく。途中で、春子が乗っていないことに気がついた五郎は、ダンプを戻させる。しかし、酔っ払い運転のドン亀は、春子の家に突っ込ませてしまう。ケン坊の数センチ手前でやっと停止するダンプカー。
翌朝、地主(田中邦衛)が、ドン亀の親方と春子の家に来ている。腰を抜かして寝着いたままの父ちゃんに、地主は前から約束していた通りに立ち退けと言い、親方には、ダンプカーを差し押さえると通告する。2台しかダンプがなく、ドン亀の治療代やなんやかやで大痛手の親方も生活がかかっているので必死だ。その時、ダンプに乗っていて一人だけ全く無傷な五郎が現れる。五郎に詰め寄る3人。しかし、五郎は平気な顔で、春子に大学出のエリートサラリーマンの花婿を連れてくるので、その持参金で金なんざ払ってやると答える。100万なんて持参金を持った花婿なんてどこにいるのかと皆いぶかしがるが、何か勝算ありげな五郎。
春子は、民夫の世話で、美代子も働く海苔工場で働き始めた。そこに、2CVに乗った五郎が現れる。見合いだといって、無理やり春子を乗せる五郎。ギン子たちや、民夫まで乗り込んでドライブだ。運転しているのは神戸三郎(宍戸錠)、大会社の副社長だ。かって、ヘミングウエイに憧れてマグロ船に乗り込んだ神戸と、アフリカで知り合ったらしい。横須賀だか横浜の、外人バーで、踊りまくる神戸、春子、ギン子たち。ゴーゴーなんて踊れない民夫は、やっぱり飲み過ぎて酔いつぶれている。深夜、ギン子が、「朝日のあたる家」を歌っている。五郎から春子のことを聞かれてOKだという神戸。
数日後、意気揚々と神戸の会社に乗り込む五郎。しかし、神戸は、はとこで、社長の娘と翌月結婚式をすることになっているという。付き合わないかと言われたからOKしたのであって、結婚するいう話だとは知らなかったという神戸。全ては、五郎の早合点が撒いた種だ。月10万払うから恋人としてはどうだという神戸に、大事な春子を妾にする気はないと言う五郎。
100万円の返済もあるが、春子を玉の輿に乗せると大見えを切った五郎の面子もある。そこに地主は、埋め立ての権利を持っていて、ダンプ1台土砂を運びこむだけで1000円づつ取っていて、総資産1億円あるという話を、近所の源太郎(太宰治雄)と平松(佐山俊二)が持ってきた。300万の結納金が貰えると聞いて大喜びな五郎たち。春子を連れて貸衣裳屋に行き、さっそく、地主の住む掘立小屋に連れていく。もう、300万を手中に収めた気になっている五郎、源太郎、平松。しかし、その企みを怪しんだ地主はご破算にした。
100万円の返済まであと2日になった。役所の結婚相談所に行き、係員(左とん平)にごねて、斉田(財津一郎)という作家を見つける。春子を女子大生だと偽り、とりあえず、斉田の秘書にして、滞在するホテルに送り込むことに成功する。一つの部屋に置いておけば、男なら手をつけるだろうと言う五郎。結納金100万円まで承諾してもらったと話す五郎に、民夫はやりきれない思いで、ホテルのバーで斉田に、春子は、少年鑑別所出身で女子大生ではないという民夫。しかし、その話を聞いて逆に、春子と結婚を決意したという斉田。その夜、ホテルの非常階段で、民夫が斉田の部屋を見上げていると五郎が現れる。春子への思いを語る民夫の話を聞いた五郎は、斉田の部屋に行こうと言う。ホテルの中に入ると、騒ぎが起こり、警官に連れられて斉田が現れる。有名な結婚詐欺師の斉田は、春子と話すうちに、自ら警察に電話をしたというのだ。斉田は、五郎と民夫に、春子とは本当に結婚しようと思ったんだといいながら、連行されていく。
五郎は、ドン亀を連れて、長屋に戻り、春子の家に入り、父ちゃんとケン坊をホルモン屋に移し、突っ込んだままになっていたダンプカーを後退させ、荷台を持ち上げて、完全に家を破壊する。そして、ダンプで逃げ去り、売り払った。ダンプ泥棒で警察が追いかけているらしい。更に再びアフリカ行きのマグロ船に前借りする。その金を地主に払って、港を出る五郎とドン亀。埠頭にいる春子と民夫に幸せになれよと言って、手を振る五郎。
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