2008年12月29日月曜日

魔法遣いは、人をハンサムに出来るだろうか。

   午前中は宅配便を待ちながら掃除。午後からシネマート六本木で、
   中原俊
監督『魔法遣いに大切なこと(390)』。鈴木ソラ(山下リオ)は、北海道美瑛で母(永作博美)と2人暮らし。魔法士だった父親の遺志を継いで、公認魔法士になるため、魔法研修を受講しに東京の魔法庁に上京してきた。魔法士は、代々受け継がれ、その資格を持つ者は、必ず講習を受け、法律に従って国家公務員として魔法士の仕事につくことが、義務づけられている。入所した動機は4人、大阪出身で実力も自信がある浅葱ほのみ(緑友利恵)真面目な秀才の黒田浩二(太賀)と、茅ヶ崎でプロサーファーを目指していた緑川豪太(岡田将生)だ。豪太は、家出した父親から才能を受け継いたが、嫌々参加しており、実技は全く出来ない。講習期間実習生は、午後から魔法庁で担当教官の川田(余貴美子)と?の下で講義や実習を行うが、夜と午前中は、魔法士の自宅にホームステイしながら、それぞれの仕事に付いて学んでいくのだ。ソラと豪太は、中目黒にある所長の白石沙織(木野花)と甥で魔法士の原誠一郎(田中哲司)がいる魔法研究所にお世話になることに。初日の依頼は、老女赤池菊子(草村礼子)が南方戦死した夫の黒焦げの遺品が何かを知りたいと言うものだ。原が手をかざすと、炭化した破片は柘植の櫛の形に。訝しげな顔の菊子の腕に触れ、出征する時に妻が髪に挿してした櫛を抜いて行った記憶を甦らす。菊子は涙を流した。
    翌日はソラが魔法を掛けなければならない。権田伊佐男(鶴見信吾)の妻は数年前から植物人間の状態だった。5才の息子が母の声を聞いたことがないと言ったのを聞いて魔法依頼をしたのだ。ソラは目を覚まさせることに成功した。しかし、事故のショックでの記憶喪失で母親は夫と息子を見ても誰だか分からない。指導員は、依頼通りだと慰めるが、ソラは自分の魔法の力のせいだと落ち込む。実はソラには持病がある。魔法士の遺伝性の病気で、強いショックを受けると発症し、一度発症すると余命は1年しかないと言うものだ。ソラの父親も同じ病気で亡くなったている。ソラの余命はあとわずか。果たしてソラは資格を取れるのか。豪太との恋の行方は?
   今年新作3本目の中原俊。どれも悲しい出来だ。今回は、脚本も演出も甘い。魔法遣いが普通に存在する世界と言うフィクションは、もっと力業のようなものが必要なんじゃないんだろうか。勿論、ハリーポッターシリーズのような超大作でない以上、お金の使いどころは限られると思う。しかし、旭川空港から母親と別れて上京、羽田からリムジンバスに乗り、赤坂で魔法庁を探して歩いているとビルの看板が乳母車を押す母親の上に落下してくるのを、山下リオが細い両腕を手を上げて止めるというのと、研修初日で、水を凍らせるのが、魔法使いで、それも国家機関の研修の参加者は全国で4人と言うのは失笑ものだ。なぜ、16才の少年少女が、たかが2週間の研修を受けただけで、国家公務員として一生の生活が保障されるのだろう。終盤の盛り上がりである、お台場に乗り上げたイルカの群れを魔法士たちが力を合わせて助けるスペクタクルシーンのようなものを、むしろ、冒頭に持ってきて、魔法士という職業の存在を正当化する方法もあったんじゃないだろうか。まあ、細かくリアリティを自分の感覚で文句を言うことの無意味さは理解しているつもりだし、ファンタジーだし、原作はそうだったのかもしれないが、製作委員会がそれなりの金を出して劇場公開し、1800円の入場料を払うものなのか。そこそこの予算とそこそこのスタッフが撮る、邦画バブルのありがちな作品の一つがここにある。小説、アニメ、映画という連動でマーケティングが完結しているかのようで、この商品がどんなもので、どんな客に、どう伝えるかという本来のマーケティングの欠如。
    続いて英勉監督『ハンサムスーツ(391)』 。大木琢郎(塚地武雅)は、イタリアで修行してきたほどの料理の腕だが、母親が亡くなり、母の大衆食堂を、明(ブラザートム)の手伝いで継いでいる。料理の腕は確かだが、太ってブサイクな琢郎は豚郎と客や町内に呼ばれている。
   バイト募集の貼り紙を見て美少女、星野寛子(北川景子)が応募してくる。あまりの可愛さに一度は断るが、くしゃみをして飛んだ唾をよけなかったことで琢郎は寛子を雇うことにする。寛子は一躍食堂のアイドルだ。寛子の可愛さに夢中になった琢郎は、友達の狭間真介(池内博之)と谷山久恵(本上まなみ)のカップルに相談する。煽られた琢郎は、思わず寛子に愛を告白する。自分のどこが好きなんですかと聞かれ、思わず見た目の全てだと答える琢郎。外見のことしか言わない琢郎に怒った表情で出て行く寛子。結局振られてしまい落ち込む琢郎。
   そんな琢郎は公園で声を掛けてきた男の話を思い出し、真介たちの結婚式用のスーツを買いに、紳士服の青山に出掛ける。途中のバスの中でも、混雑で触れただけの女は汚いものを見るように飛び退くのだ。青山の白木(中条きよし)は、それを着ただけでハンサムになれるハンサムスーツの試作品の一般モニターになれと言う。白木自身スーツを脱ぐと別人(温水洋一)だ。何で僕がと尋ねる琢郎にあらゆる不細工な要素を兼ね備えているモニターだからだと言う。騙されたつもりで、着てみた琢郎が鏡を見ると全くの別人(谷原章介)だ。モニターを承諾し、スーツを着ている時は白川杏仁と名乗ることにする。帰りは女性たちは、行きと正反対の反応だ。自分の一挙一動を見つめ、ため息をつく女性たちに生まれて初めての快感を覚える。更に怪しげな格好の紳士神山晃(伊武雅刀)に、モデルのスカウトを受ける。
    食堂に帰ると、新しいバイト応募者がいる。広子と打って変わった不細工な橋野本江(大島美幸)だ。常連客たちが駄目だと言いかけると、何故か琢郎は、外見が問題ではないからと採用する。貴子は、働き者で、明るく大衆食堂にはびったりだ。琢郎はハンサムスーツを着て神山の事務所に行ってみる。モデルたちの外見に馴れている筈のカメラマンたちも、スタジオにいる女性たちも、ハンサムは杏仁を大絶賛だ。しかし、クールビューティーな超有名モデルの来香(佐田真由美)は、モデルはそんな甘いものではなく、モデルは無理だと言う。杏仁は、微笑みのない来香は不幸せだと言って、琢郎がいつもやって気持ち悪がられる古臭いギャグをやる。ハンサムな来香がやる古臭いギャグは逆にギャップ上の面白さがあり、来香は爆笑する。来香は杏仁を気に入ったようだ。撮影後、来香に誘われ自宅での友人との食事に招待される。来香の友人は何故か真介と久恵のカップルだ。杏仁の癖に、親しい友人と一緒だと言う2人。琢郎だとバレることを恐れ必死な杏仁。来香と徐々にいいムードになっていく杏仁。いよいよベッドインという時に、シャワーを浴びたことで、熱に弱いハンサムスーツの弱点が現れてしまう。必死に逃げだす琢郎。今までの暗黒の青春とは正反対の生活に、だんだん、ハンサムスーツを離せなくなってくる琢郎。しかし、杏仁の姿で、寛子と再会した時に、全く顧みられかったことと、本江と一緒にいる時に、とても心が休まる琢郎。
  杏仁の誕生パーティが開かれる。東京ガールズコレクションへの出演も決まり、神山から提示された年収は5000万だ。更に、来香には、バースデープレゼントは自分の寝室にあると囁かれる。絶頂の杏仁に、杏仁のせいでモデルの仕事が無くなった大沢(山本浩典)にホットコーヒーを掛けられる。しかし、バースデーケーキのサプライズで照明を消され、何とか今回も逃げ出すことができた。
  再び琢郎は、紳士服の青山に行き、熱に強いハンサムスーツがないかと聞く。白木は、試作品でなく完成品のパーフェクトスーツを見せる。しかし、これを着たが最後、二度と元の姿には戻れないと言う。どちらを選ぶか悩む琢郎。その晩、寛子に会う。きれいでかわいい寛子には、不細工な自分の気持なんかわからない、一度ブサイクになってみればいいんだと、言ってしまう琢郎。杏仁として生きる決意をする。
  東京ガールズコレクションが開演する。楽屋の携帯がなり、明から本江が交通事故にあって・・・という電話がかかってくる。ステージを来香とともに歩きだす杏仁。しかし、途中で立ち止まり、自分は今最高にカッコええ男やけど、最低な男や。大きな幸せのために、小さな幸せのすべてを捨ててしまったのだからと、唐突に走り出す杏仁。二度と脱げない筈のパーフェクトスーツ。しかし、ショーを台無しに追ってきた神山に腕を握られた時、なぜか琢郎のテーマソングの「マイ・レボリューション」が流れる。全裸で着なければいけない筈のパーフェクトスーツを、間違えて本江から貰った音声チップ内蔵のリストバンドをつけたままだったのだ。大沢と玲美(佐々木希)の楽屋に駆け込んで、カッターで自分の腕を切る杏仁。玲美は気絶する。そこに全裸の琢郎が立っている。
   本江の病院へと駆ける琢郎。病院に行くと、実はバイクが本江にぶつかったが、怪我したのはバイクの男だった。これから食堂の仕事に専念するといって、一緒にいてほしいと本江に告白する琢郎。本江は、嘘をついていたと言う。実は、本江はブスーツを来た寛子だったのだ。
   ブスの瞳に恋しているの作者というか森三中の大島美幸の夫である放送作家の鈴木おさむの脚本はわかりやすく、くすぐりも多く笑えるものだし、人は外見だけではないというテーマは普遍的なものだと思うが、、何か、流行りものの要素を散りばめた薄っぺらい印象が拭えない。紳士服の青山の特別協賛という名前のプロダクト・プレイスメント、わかりやすく言えば、製作費の一部を宣伝費として企業に出してもらうことで、儲けを分配しなくてもいいスポンサーを見つける最近の邦画ビジネス。マーケティング手法の筈が、金儲けになっていることの弊害はないのか。「魔法遣い~」と「ハンサムスーツ」は、邦画バブルの産物という点では、共通している気がしてしまう。
   夜は、かって、実籾の歌姫で一緒に仕事をしたプロデューサーT氏の事務所の忘年会。T氏の個人事務所の~と言っても、T氏の父上は、歌謡界の大作曲家。大作曲家の事務所と合同なので、きらめく芸能界大忘年会だ。こんな華やかな席に失業中の自分がいていいのかと思いながらも、結局飲めばご機嫌に。

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