2010年5月1日土曜日

映画ファーストデイ(苦笑)

   丸の内スバル座で、石原興監督『獄[ひとや]に咲く花(85)』

-幕末-新しい世に突き進む激動の時代…黒船の襲来により、燃える世の中は幕府を終焉へと向かわせていた-
夜、提灯を掲げ、黒尽くめの行列が長州萩に向かっている。唐丸籠が間に担がれている…。
-安政元年(1854年)萩にある野山獄は、長州藩の士分のための牢獄であった。中の牢には鍵が掛けられておらず、行き来は自由だが、刑期は無く、ひとたびここに入れられると、生きて出られたものはほとんどいなかった-。
    夜が明けた。行列が野山獄の前に着いた。獄奉行の福川犀之助(目黒祐樹)が名乗ると、行列を率いた侍が「福田達之進でござる。これが願い書でござる」「お役目ご苦労様でござる」科人は、後に吉田松陰と呼ばれた男(前田倫良)だ。
   向かいの牢に松陰が入る物音に生気のない顔をした高須久(近衛はな)が目を覚ます。手拭いを袂からだし、牢を出、井戸へと向かう。水を汲み上げ、柄杓で、小さな萩の木に掛けてやる。すると寅次郎が「ほぅ、萩ですか…どんな荒れた地にも、花を付けるからいい」と声を掛ける。驚く久。
   食堂に行き、年配の獄囚、吉村善作(神山繁)に挨拶をする松陰。「私は昨晩より、この獄に参った吉田寅次郎と言う浪人者でございます。以後お見知り置き下さい」と頭を下げる。そこに久が現れる。「あんたも囚人だったのですか…」と寅次郎。「そうじゃ、あんたと同じ罪人じゃ」と吉村。他の獄囚たちは、生きる望みを失っており、挨拶する寅次郎につれない反応だ。酔って親族を斬った弘中勝之進(勝村政信)は皮肉屋だ。また、寅次郎と同じ明倫館での秀才だが隻眼のためか気難しく人と交じろうとしない富永弥平衛(池内万作)、素直さの欠片もない河野数馬(本田博太郎)の二人の牢には、近付くなと吉村はアドバイスする。
   夜、牢で慟哭する寅次郎の姿がある。自分と行動を共にした金子重之助は、百姓出身のため、隣の板倉獄の雑居房に入れられ、酷い境遇の中、体調を崩しているとを聞いたのだ。
   翌朝、久が井戸端に行くと、寅次郎が正坐をしている。久の下駄の鼻緒が切れる。自分の草履を差しだす寅次郎。寅次郎の牢に、草履を返しに行き「高須久と申します」と名乗る久。
   寅次郎は、牢番の源七(仁科貴)に、重輔を野山獄に移すよう頼み続ける。代りに自分が板倉獄に入るとまで頭を下げる姿に、困り果てる源七たち。そのやりとりを聞いてあきれ果てる獄囚たち。しかし、メリケンの黒船に乗り込もうと国禁を犯して捕らえられたと聞き、退屈していた獄囚たちは、寅次郎の話しを聞きに集まった。農民は国の宝だと説く寅次郎に、じゃあ我々は何なんだと尋ねる獄囚。「我々は磨けば輝く玉だ」と答える寅次郎。
   絶望感のみが漂う野山獄は、寅次郎が来て以来、急速に暖かみが感じられるようになった。
   食堂では、差し入れ屋の娘の?に話をする女たちがいる「寅次郎は、10歳で御前講義をした学者先生だ」と。?に尋ねられた久は、寅次郎の下に連れて行く。?を膝に乗せ優しく昔話をしようとすると、「学者先生臭い!!」と逃げ出す?。その姿に、柔らかい表情に変わる久。
   しかし、数日後?が「学者先生、姦淫って何?みんなが、高須未亡人は姦淫をしたと言うの・・・」「?ちゃんには、少し早いな」と、動揺した寅次郎が答えるのを聞き、凍りつく。久は寅次郎に問わず語りに、「私は姦淫をしたのではありません。?年前に夫を亡くした私は鬱々とした日々を送って参りました。しかし、?年後の住吉祭の日、外出した私は三味線を弾く大道芸人を見かけました。その芸人を自宅に呼び、歌や三味線で癒やされ、食事を共にしました。ある日、親類がやって来て、武家の後家としてあるまじき行為だとして、芸人は斬首され、私は罪人とされたのです。親族から見放された私は、このままここにいるしかないのです」。しかし、寅次郎は「過去は問題でありません。大切なのは、今あなたがどう生きているか、これから何をするかです」と説く。入獄以来、感情と女を殺して来た久は、初めて手鏡を手にし、髪をとかした。
   


   近衛はな、拾いものだった。ちょっと藤田朋子に似ていることで損をしているかもしれないが(笑)、木村多江のように、不幸が似合う女優として、もっと映画に出て欲しい。父目黒祐樹、祖父近衛十四郎、サラブレッドだけに難しいかもしれないが、もっと汚れ役やって欲しい。個人的に今年の主演女優賞候補。

   渋谷、シアター・イメージフォーラムで、野村誠一監督『ナチュラル・ウーマン2010(86)』

   大きなダブルベッド。コーヒーが入り、毛布の中から村田容子(亜矢乃)がカップに注ぎ飲む。身支度をした容子が、重そうなゼロハリバートンのカメラケースを下げ、ビニール傘でアパートを出る。日産フィガロに機材を積み込み、エンジンを掛ける。
   出版社落水社のスタジオ、沢山の書籍の物撮りをする容子と、編集者の森沢由梨子(英玲奈)。そこに編集長の辻(村田雄吉)が現れ、本を手に取る。「あっ、それまだ撮っていません」「ごめん」撮影が終わり、後片づけをする容子に辻が声を掛ける「村田さんは、人物撮らないんだっけ?」「ええ・・・」「悪いんだけど、僕の写真を撮ってくれないかな。パスポート用の・・・。更新なんだ」
   階段を降りながら、「あんなに、きれいに撮る必要なかったのに。もっとブサイクに撮ればよかったのに」と口を尖らせる由梨子。笑う容子。
   車を運転する容子。携帯が鳴り、路肩に止める。目の前は、向陽大学のキャンパスだ。学生時代を思い出す容子。
   向陽大学に入学した容子。サークルの勧誘の中で、クラスメイトの園田圭以子(木下あゆ美)が声を掛ける?「サークル決めた?」「漫研に行ったけど、何だかぴんと来なくて」「コスプレしている人がいるもんね。そうそう、新聞部に、表新聞部と裏新聞部があるんだって。表新聞部は、普通に新聞を出しているけど、裏新聞部は、何をやってもよくて、小説や漫画を発表する会報を出しているんだって」「ふーん」
   新聞部の部室にやってくる容子。「ここは表新聞部、裏はあっちだ」裏新聞部の部室は、奇妙な格好をした人間やもので一杯だ。来々軒のマユミが、岡持ちを持って部室にやって来て、部長の遠山(三浦力)に料理を出す。「注文していないけど」「沢山作りすぎたんで」と笑って帰るマユミ。その姿を見て切なそうな男子部員。「君も漫画やりたいの?」尋ねられて、男の視線の先にある諸凪花世(汐見ゆかり)。ショートカットで美しい花世の姿に、容子の視線は釘付けだ。
   スタイリッシュな映像とフォトジェニックがキャスティングされても、カッコいい映画にはならないんだな(涙)。映画監督を切望していた野村誠一の初監督作のクレジットは、撮影監督・監督、謙虚すぎる野村誠一。うーむ、映画って、編集マンが肝心なんだなと反面教師。
   観客の3分の2を占める男が、自分を含めメタボな中年オヤジばかりで、若い娘の二人組が周りを見渡して失笑していたのが悲しい。サンズの野田さんの秘蔵子が主演だからか…。その亜矢乃の体当たりのオールヌードと、ショートカットの汐見ゆかり格好よいのが、誠に勿体無い(苦笑)。

   渋谷TOEI①で、三池崇史監督『ゼブラーマンⅡ ゼブラシティの逆襲(87)』

   初日で、入れないかと心配したが、全くの杞憂でガラガラだ。チケット売り場の若者の行列は、TOEI②で上映中の「アリス・イン・ワンダーランド2D」だった。テレビ局の大バジェット映画の初日で映画ファーストデイなのに、2Dにさえ負けているのが悲しい(笑)。本日の大小の劇場の入場者数で最下位を争う(涙)
   とはいえ、流石に三池映画、最後の30分は大爆笑。宮藤官九郎脚本映画の中では一番面白いかもしれない。しかし、不動産業に次ぐ放送外収入を期待するTBSのGW映画、ビッグバジェットでお馬鹿映画(死語)を作ったとは宣伝出来なかったんだろうな。皮肉でなく、この下らなさのスケールは賞賛に値するのになあ。仲里依沙は素晴らしいしかし、あのライブシーンは、レディガガのパチモンだ。日本人として本当に恥ずかしい。上海万博テーマソング非難している場合じゃないだろTBS。

    渋谷シアターTSUTAYAで、カイル・ニューマン監督『ファンボーイズ(88)』

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