表参道のオフィスで、エンタメの仕事の相談。なかなか面白そうな話だ。
神保町シアターで、春よ!乙女よ!映画よ!
55年独立映画/中央映画家城巳代治監督『姉妹(65)』
松本市内の女学校から下校する近藤圭子(野添ひとみ)と俊子(中原ひとみ)の姉妹の姿がある。「姉ちゃん!お汁粉食べて行こう!」「お小遣いあるの?」「ううん」「俊ちゃん、まだ月半ばじゃないの」「…」
仕方なしに帰ることにすると、御用聞きの自転車が姉妹をからかう。「不良!!」と叫ぶ俊子。
下宿先の伯母の石田夫婦の家に帰るなり、「ただいま!伯母さん!何かおやつある!?」「としちゃん!!」「いいよ、いいよ、お腹が空く年頃だから」と姉妹の母親の姉であるお民(望月展子)。夫婦には子供がなく、姪の姉妹を自分の子供のように思い、預かっていた。
二階の俊子の部屋、「私たちは、町で勉強させてもらって、お小遣いまで送って貰って恵まれていると思わなきゃ罰があたるわ」妹の小遣い帳を見る圭子。「ノート五冊…。一冊多いわ。カーネーション2本…、1本余計よ。お汁粉3杯!?」「友達に奢ったのよ。私が食べたのは2杯よ!」「あらまあ…」自分の机の引き出しから、蝦蟇口を出し、「いつも、計画的に使いなさいと、あれほど言っているでしょう。これで、何か買ってきなさい。」「おばちゃん!!姉ちゃんからお小遣い貰ったから、鯛焼き買って来るわ!!」と飛び出して行く俊子。門の前で、男にぶつかる。
「ごめんください。」男が声を掛ける。伯母は圭子にいないと言っておくれと頼む。玄関に出た圭子は丁寧にお辞儀をして「石田さんは?」と尋ねる男に「伯母は、あいにく外出しておりますが…」「おかしいなあ。今日来ると言っておいたのに…。何時に帰ってくる?」「聞いていません」そこに、俊子が帰ってくる。「伯母さん本当にいないの!?」「ええ」。思わず俊子が口を挟む「えっ、伯母さん?変ねえ、さっきまでいましたよ」必死に圭子が合図をするが、気がつかない俊子。「呼んで来ましょうか?伯母ちゃん!?伯母ちゃん!?」台所でしゃがんでいる伯母に「お客さんよ」と何度も言うが、必死にいないと言っておくれと小声で言われて、しぶしぶ玄関に戻り「おばちゃん、いないんですって」
せっかくの居留守が俊子のせいで、ぶち壊しだ。「伯母さんはね。出張に行っているおじさんが、お金を送ってこないので、とっても困っていらっしゃるのよ。俊ちゃんは、何でも口を挟むからいけないのよ」「お父さんは、正直が一番大事だと教えてくれたわ」と膨れっ面だ。そこに、男の客(田村保)がやって来た。「伯母さんは留守です!!」
大笑いする叔母。「まあ、借金取りと間違えるなんて。この人はおじさんの甥っ子だから、名字は同じ石田って言うんだよ。こんど、この町の巡査に転勤して来たんで、挨拶に来たんだよ」「三成と申します」「石田…三成さん…。私お名前を聞いたことがありますわ」と天然でボケる圭子。「お姉ちゃん。関ヶ原の戦いで負けた人よ」と言って笑う俊子。
お民が、この家の名前は変わっているのよと言う。男は恥ずかしそうに「兄が秀吉で、弟が家康なんです。おまけに、一番上の兄が信長なんです」それを聞いて、大笑いする俊子。
しきりと胸の辺りを掻いている俊子に、「俊ちゃん、やめなさい」と三成の目を気にして言う圭子。「だって、おっぱいが痒いのよ」お民笑いながら「俊ちゃんは、子供だねえ」口を尖らせ「いつでも、子供子供って言うけど、私だって、直ぐに大人になっておっぱいだって、お姉ちゃんより大きくなるんだから」セーターの下から、胸の膨らみを突き出す妹に赤面する圭子。
翌朝、井戸端で、パジャマ姿の俊子が歯を磨いている。そこに、同郷の誠が自転車で通りかかる。「どこ行くの?」「病院に鼈の血を届けに行くんだ」口の周りを歯磨き粉で真っ白にしたまんま、表通りまで誠を追いかけて行き、誠を引きとめ話し込む俊子。「学校はどうだい?」「楽しいよ。学校では、私コンチって呼ばれているんだ」「えっ?コンチ?!」「近藤のチビだから、コンチさ」食事の支度が出来たが、俊子の姿が見えず、圭子が探しに出ると、パジャマ姿で大声で誠と話しているのを見つける。「俊ちゃん、朝ご飯よ」「はーい。じゃあね誠くん!!」「こんな格好で大声で話して」「同郷の者同士仲好くした方がいいでしょ!!」俊子の口の周りの歯磨き粉を拭いて「少しは威厳というものを持ちなさい」「威厳って?」「気安く男の人と口を訊かないことよ」「・・・姉ちゃんは、38歳の未亡人みたいだね」
日曜日、制服姿の二人、圭子は教会に、俊子はクラスメイトの家に行くのだ。「姉ちゃんはどうして神様を信じるようになったの?」「寂しかったのよ」「寂しければ友達を作ればいいのに」「ちゃんと挨拶をしてね。お行儀よくするのよ」「わかったわ」
郊外にある大きな造り酒屋落合家の門をくぐる。出て来た小僧に声を掛ける俊子。「あの、としみさんいらっしゃいますか」屋敷の中で、オルガンの音が聞こえている。俊子の来訪を喜ぶとしみ。としみの母親(忍節子・・違う気がする)がお茶を持ってくる。「近藤さんのお父様は何をしていらっしゃるの?」「山の発電所で働いています」「下宿していらっしゃる伯父様のお仕事は?」「大工の棟梁です」「そうなの・・・建築技師ではないのね・・・」こちこちのまま、何度もペコペコと挨拶をする俊子。
としみと一緒に、部屋を出ると、土蔵の裏で、としみの姉(田中稲子)に会う。逃げるように足を引き摺って声も掛けずに姉はいなくなった。「姉さんは、誰ともつきあわない可哀想な人なの。もう一人可哀想な弟がいるの・・・。10歳になるんだけど、5つくらいにしか見えないのよ」
林檎畑を散歩する俊子ととしみ。「俊子さんは、私を羨ましいと思う?可哀想だと思う?」真剣な表情のとしみに「可哀想だと思うわ」と答える俊子。「うれしいわ。可哀想といってくれたのは貴方が初めてだわ。キスをして」「えっ?」「あなたは友達だから、初めてのキスをして」「あんた、私を好き?」「ええ」「ならいいわ」軽く唇をつける二人。笑顔になって「冷たいわ。蛇みたい」と俊子。「秘密よ」ととしみ。
2学期が終わり、圭子と俊子は里帰りする。山の中を走る小さなボンネットバス。揺れて荷物が転がり、笑い合う姉妹。発電所前の停留所で降りる。学校の校庭で弟たちが遊んでいる。駆け寄って来て、荷物を奪い合う弟たち。傾斜のきつい中腹の家に案内する弟。
母親のりえ(川崎弘子)が「あらあらまあ・・・」と二人を出迎える。圭子は弟たちにお土産を渡す。長男の弘(杉山英太郎)には少年雑誌、次男の満(中村直太郎)には独楽、まだ幼い弟の正(西沢ナポリ)には、自動車の玩具だ。「おっきい姉ちゃんありがとう!!」と喜ぶ弟たち。「ちっちゃい姉ちゃんは?」俊子の荷物を取ろうとする弟たちに「何もないわ」りえが「みんな楽しみにしていたのよ」と言う。弟たちはがっかりだ。「あんた、いつもお小遣い使いすぎるから」と圭子。
発電所で働く父の健作(河野秋武)が帰ってきて、夕食となった。「おっきい姉ちゃんはえらい」「ちっちゃい姉ちゃんは落第だ」と口々に言う弟たちに、健作は「うちは、悪い習慣をつけてしまったな。お土産が無くても、帰ってきたことをちゃんと喜ばなくてはいけないよ」と注意をする。伯母さんに貰ったケーキを食べて、笑い合う近藤家。
翌朝、健作が薪を割っている。俊子が手伝うと言う。「俊子は男だったらよかったな」「そうだよ、男だったらよかったよ。第一、男だったら革命を起こすことだってできるよ」「革命?!」「フランス革命の革命だよ」「!!! やっぱり、俊子は、女でよかったな・・・」朝食を終え、健作は二人に、「発電所の所長さんに挨拶してきなさい」と言う。
二人は延川発電所に向かう。「年内無事故だったら、会社から1000円貰えるんですって。あと3日ね」と俊子。ロシア民謡「トロイカ」の歌を歌いながら、変圧器を点検している若者がいる。「岡さんよ」と俊子。圭子は頬を赤らめる。岡(内藤武敏)のことを圭子は好きなのだ。「岡さんは、千円貰ったら何を買うの?」「本箱か電気スタンドを買おうと思うんだ。圭子さんどう思う」「だんぜん本箱だわ」と口を挿む俊子。「私は、素敵な傘のついた電気スタンドがいいと思うわ」と圭子。「若いうちは、勉強しなけりゃ。本箱よ」と譲らない俊子。
二人は、発電機を磨いている田村(織田政雄)に、所長が取水口にいると聞いて、山を登り挨拶をする。二人が帰る途中、赤ん坊を背負った?が夫の三造(殿山泰司)に殴られているのを見かける。三造がいなくなると、?は二人に気がついて声を掛ける。「うちにおいでよ。町の話を聞かせておくれよ」と気さくに言う?。俊子は喜んで入って行くが、圭子は、この?が苦手だ。更に?が「町の話を聞かせてよ。ダンスホールに行ったかい?行って、どんな所かおしえてけれ」と言うので、ダンスホールのような不浄な場所に十字を切る圭子。無理矢理、俊子を連れ帰った。
大晦日になった。村のよろず屋では、正月の支度をする主婦で賑わっている。この村の人間はほとんどが発電所に関係しているので、今日事故が無ければ1000円のボーナスが出るという話で持ちきりだ。このお金で一息つけるのだ。しかし、よろず屋の電球が点滅しだす。田村さんの奥さんが「あんた!!!」と近くにいた田村さんに声を掛ける。見ると街灯も点滅している。「大変だ!!」村中のみんなが家から飛び出してきた。みんなの願いもむなしく、停電が起きた。村中の老若男女が肩を落とした・・・。
それでも、元旦になると村が賑やかだ。圭子は、発電所の若者たちと羽子板を楽しんでいる。勿論岡も一緒だ。岡の顔には、墨で髭が書かれている。俊子は、凧揚げに夢中で、弟たちから「ちっちゃい姉ちゃん、僕らにもやらせてよ」「うるさい!!」夜は、近藤家に集まり、子供たちは双六、若者たちは千人一首だ。同じ札を取ろうとして手が触れた岡に、真っ赤になって札を渡す圭子。遠慮しあっていると、じゃあ私が貰うとちゃっかりしている俊子。そこに、母親がお汁粉の入った鍋を持ってきて歓声が上がる。その夜帰って行く人々を見送る姉妹。
翌日、「殺してやる!!」という三造の大声が聞こえる。俊子は、圭子が止めるのにも構わず、駆け出す。村の人々が止めようとしているが、三造が留守の間に、?が若い男を引っ張り込んでいたのだと言う。村人たちが、何とか二人を家に連れ戻し、赤ん坊を抱かせて宥めていると、後ろから「勘忍してあげて」と声がする。俊子だ。子供のくせに夫婦喧嘩に口を挿んで・・・とみんなに呆れられ、バツが悪くなり「勘忍するですよ」と小声で言って三造の家を出る俊子。
正月休みが終わって、伯母の家に戻る姉妹。「ただいま!!」声を掛けるが、伯母は留守のようだ。すると、娘が出てくる「伯母さん、ちょっと外出しているんです」「あら、小間物屋さんのはっちゃんね」「ええ、どうぞ上がって下さい。って自分の家みたいで変ですね」はつえ(城久美子)は、担ぎ売りで伯母の家に来て留守番を頼まれていたのだ。「私が入院してしまったので、店を手放してしまったんです。父はめくらで、母は寝たきり、掃除も出来ないので、お正月でもゴミだらけなんです。私は、今でも腰にギブスが入っているんですけど、頑張らないと」二人は、何かを買ってあげようとブローチを選ぶ。そこに伯母が帰って来る。
数日後、郵便配達が伯父さんからの書留を届けに来た。大喜びで、封を切り、「やっぱり、おじさんは大した人だねえ」と手を合わせるお民。姉妹の所に行き「これで、米屋も、八百屋も、魚屋もお金が払える。今日は、外食か、映画でも奢るよ。どっちがいい?」「両方っがいいわ」とちゃっかりしている俊子。三人で映画を観た帰りだろう。おでんの屋台で食事をしている。お民は、コップ酒を飲んでご機嫌だ。お代わりを頂戴というお民。圭子は「もう沢山呑んだじゃない。帰りましょう」と言って屋台の主人に出さないでと合図をするが、うが「今日は呑ませておくれ」と聞かないお民、胸で十字を切る圭子。帰り道、酔ったお民と一緒に大声で歌いながら歩く俊子と、恥ずかしそうな圭子。
おじの石田銀三郎(多々良純)が久し振りに帰ってきた。ご機嫌だ。「圭ちゃんはますますキレイになったなあ。おチビも少しは大きくなったか」「チビじゃないわ」「ごめんごめん。おチビちゃん。これがお土産だ」
徳次(加藤嘉)しげ(北林谷栄)
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