2009年5月5日火曜日

三船敏郎は日本人で一番トレントコートが似合う男

   神保町シアターで、昭和の原風景
   60年東宝岡本喜八監督『暗黒街の決闘(290)』
   警官が検問をしている。後部座席に2つの同じスーツケースに拳銃が沢山詰められている。いきなり警官を射殺し逃走する車。警官は一方のスーツケースを掴んだまま殉職をする。
   汽車の座席、ヌードダンサー(浜かおる)と初老のマネージャー(沢村いき雄)が座っている。警察が何か言ってきてもぱーっと出すんだぜと言う。警察の悪口を言い続けていると、ななめ前の紳士(平田昭彦)がゴルフのパターを差し出して、よっぽど警察が嫌いなんだねえとニヤリと笑う。マネージャーは煙草をくわえ火を探すが見つからない。隣のトレンチコートの男(三船敏郎)が火を付けてくれるが、上着の下のホルダーに拳銃があるのを見て震え出す。黒ずくめの若い男(ミッキー・カーチス)が、あんたは腕のいい殺し屋だろう、自分もそうなので、一緒に組まないかと男に声を掛けてくる。ガキは、そこで尻でも洗っていろとトイレに押し込む男。
   荒神駅を出てタクシーに乗ろうとすると、パトカーのサイレンが聞こえる。タクシーの運転手が、ヤクザ同士の喧嘩だ、今さら警察が来ても遅いと言うのを聞いて、反対側のドアから降りて、人だかりを覗きに行く。手前で地面にスーツケースを置くと、その隙にチンビラ風の男がスーツケースを盗む。停車場に持ち込んで中を開けようとした所で、男に捕まる。どこのモンだと絞められて、大岡組だと答える。
     国道沿いに花が手向けられている。手を合わせている男、村山鉄雄(鶴田浩二)に、大岡組の男が絡んできたのに割って入るトレンチコートの男。3ヶ月前、ここで自動車に村山の妻が轢かれたのだ。村山にトレンチコートの男が、事故について教えてくれと言うが断られる。そのまま、不貞寝をしていると、マリが声を掛ける。素生の知らないパンパンは嫌だと言うと、マリは大京ホテルの電話交換手をしていてアルバイトだと言う。
   マリを誘って、大岡組が仕切るブルーキャットに出かけるトレンチコートの男。大岡組の会長の大岡久三郎(河津清三郎)は、市議会の有力者を接待している。久三郎の愛人のサリー(司葉子)は、好色な議員たちの席から逃げてきた。大岡組の幹部で、ブルーキャットの支配人の柴田(中丸忠雄)に、列車で一緒だったヌードダンサーのマネージャーが、トレンチコートの男は拳銃を持っていると耳打ちする。柴田は、お不動吉(堺左千夫)、丹波(牧野児郎)富田(岩本弘司)らと、男が小塚組の雇った殺し屋だろうと襲いかかる。4人を相手に、一歩も引けを取らずに闘うが、通報でやってきた警官に殴られ気絶する。
  男は、翌朝留置場で気が付く。勿論、上着の下の拳銃は取り上げられている。呼び出され、荒が見警察署長の大久保(小杉義男)と次席の望月(中谷一郎)の元に行く。署長が、藤丘三郎くん、何で君がこの署にやってきたのか知らない訳はないだろうと言う、藤丘は、勿論汚職刑事が左遷されたのですと答える。であれば、もう少し大人しくしてくれたまえと言われる。
to be continued.

   渋谷で一件打合せの後、

   ユーロスペースで、
   74年人力舎/日本ATG寺山修司監督『田園に死す(291)』
   立見まで出て、やけに混んでいると思ったら、上映前に、宇野亜喜良と高泉淳子のトークショー付き。高泉淳子って同い年だったんだな。大学も一緒だったし、小劇場の第2期ブーム、役者系の友人も何人かいて、チケット買わされていたので、見ていたかもしれないな。大学卒業後は、とにかく音楽業界の奴隷のような毎日だったので、全く離れてしまい、30歳前後の80年代後半になるまで、芝居はほとんど見ていなかったが。
   寺山修司の名を知ったのは、カルメンマキの「時には母のない子のように」の作詞と、「あしたのジョー」の力石徹の葬儀委員長として、正直なところ、ませていても小学生では、怪しい人以外の感想はなかった気がする。中学生で、現代詩とか嵌っていた時期に、歌集は読んでいた。久し振りに寺山的なものに触れて、入り込んでしまうなあ。「田園に死す」で八千草薫を発見して、ファンになったのは、高校1年位だったか・・。
   大学1年、周囲とどうも馴染めないものを感じていた自分は、東映大泉撮影所で行われたぴあ展という音楽映像アートなどのイベントに出かけ、ライブを見たり、自主制作映画を見たりしていたが、確かそこで夜中悪夢のように見ていたのが「檻囚(おり)」とか「迷宮譚」とかの実験映画的色彩の強い寺山作品だったと思う。また、PFFの前身であった自主制作映画コンテストが行われ、同世代の才人たちの自主制作映画に打ちのめされ、10代が終わろうとしているのに、自分が何者でもないことを思い知らされ始めた絶望と寂寥感に、寺山修司はとても合っていた。寺山修司は、何だか封印していたものをこぼれださせてしまうキーワードなのだろうか。

   シネマヴェーラ渋谷で、緑魔子伝説
   68年松竹大船山田洋次監督『吹けば飛ぶよな男だが(292)』
   大阪のチンビラ・サブ(なべおさみ)とガス(佐藤蛾次郎)が、兄貴分のキーヤン(芦屋小雁)がやっているプロダクションのスカウトを手伝い、大阪駅前で、家出娘を探していた。そこに現れたのは花子(緑魔子)。島原から家出してきたという花子を、お好み焼屋に連れて行き、さっそく郊外のハイキングコースでブルーフィルムの撮影だ。監督(上方柳次)と、キーヤンらに連れられ、サブとガスは見張りだ。学生服の男優(上方柳太)と手をつないで現れた花子は、セーラー服姿だ。ブルーフィルムなどとは聞いていいない花子は、必死で抵抗する。尻込みする男優の代わりに兄貴のキーヤンが 花子にのしかかって、何とか撮影を続行させようとする。花子の悲鳴を聞いていたサブは、思わずキーヤンを殴り、花子の手を引いて逃げ出す。ガスも、サブと花子を匿った。
   大阪駅に戻ったら、田舎に帰れとサブは見栄をはるが、今さら帰ることもできない花子は、サブたちのあとをつけてくる。勝手にしろと突き放してはみるものの、大阪の街で花子のような娘が一人で歩いていれば、狼のような男たちが牙をむく。今も、振りかえると、花子は、スーツを着た男(イシバシエータロー)に連れて行かれるところだ。あわてて戻り、俺の女に何をすると凄むと、男は1万円札を置いて逃げて行った。大喜びで飲み食いし、最後にサブは花子を連れてラブホテルに入る。
   

   65年東映山本薩夫監督『にっぽん泥棒物語(293)』
   1948年冬東北の郡山の恵比須屋呉服店の土蔵から、米、呉服などを運び出し、トラックに積み込んでいるグループがいる。ほれ2時だから逃げるぞと言って、トラックを出す。橋のたもとで巡査が検問をしている。トラックを止めると助手席に、花嫁が乗っている。嫁入りかいと尋ねられ、荷台に乗り、ドブロクを飲む黒羽織の男が、嫁入りでがす、これだけの嫁入り道具、仲人として幸せだと言う。巡査たちも笑顔になる。トラックの荷台から生米がこぼれ始めている。巡査に見つからないよう羽織の男は、運転手に合図を出すが、気が付かない。ようやく合図に気が付いた運転手が車を出すのと同時に巡査たちも米がこぼれているのに気が付いた。間一髪で、橋を渡り逃げ切る一味。
    盗んできたものを盗品買いの“ずや師"に売りさばく、一味のリーダーは林田義助(三國連太郎)。前科三犯の“破蔵師"である。林田は、東北の農村の村を回り、もぐりの歯医者として、農家の庭先で治療をしてやりながら、お宝の詰ってそうな土蔵を探して歩くのだ。死んだ父親から引き継いだもぐりの歯医者としての腕の評判も高い。痛くないし、安いので大評判だ。しかし、徴兵され敗戦後、幼い弟妹たちを養うために、手先の器用さを生かし破蔵師になったのだ。母(北林谷栄)が、妹のふく子(緑魔子)の縁談が決まったと言いに来た。ふく子は、器量も悪くなく、働きものだったが、兄の前科がばれるたびに、破談になっていたのだ。林田は、妹の嫁入り支度のためにと決行した土蔵破りに失敗し、警防団に追いかけられ、極寒の貯水池を逃げ切った時にも花嫁衣装だけは手放さなかったが、今回もやはり破談になってしまっていた。泣くふく子に言葉がない林田。
    破蔵師仲間と温泉に行く。宴会で芸者の桃子(市原悦子)と知り合う。桃子は、林田が歯医者だと思っている。二人は、結婚し一緒に住むことになった。しかし、結婚生活は長くは続かなかった。ある時、仲間の菊池(花沢徳衛)が警官に追われて、林田の家に逃げ込んできた。菊池の盗品を屋根裏に隠してやり、礼として一部を貰う。
   桃子が実家に帰ると言う時に、土産としてその呉服を持たせる。しかし、桃子は、自分を芸者に売った実家に渡すにはもったいないと、その呉服を駅前で売りさばき、その安さが話題になって、自分の盗まれた着物が売られていると警察に届けたのだ。妻の件で警察から呼び出しと聞いて、林田は、桃子が前にいた芸者置屋にまだ借金が残っていたのだと早合点して向かうと、桃子が盗品を売ったということだった。既に菊池も逮捕されている。しかし、盗人仲間の仁義で二人はお互いが知り合いだとは言わない。林田は、自分も売りに来た着物を買ったのだと言い張った。しかし、林田の家の屋根裏から大量の盗品が出てきて、万事休す。取り調べも警部補の安藤(伊藤雄之助)に変わり、起訴されることになった。
   福島刑務所で、自転車泥棒の馬場(江原啓二郎)と知り合う。林田に破蔵師について聞いた馬場は、弟子入りを志願。初犯の馬場が先に出所した時には、狙えそうな土蔵を下見していくことにした。
  

   ユーロスペースに戻り(と言っても、同じビルの3階と4階の階段を昇ったり降りたりするだけだが)
   市川準事務所市川準監督『buy a suit スーツを買う(294)』
   川原ユキは、同僚のスミちゃんと上京し、秋葉原にやってくる。音楽活動を本格化させるためにコンポを買うと言うすみちゃんと別れ、兄の学校の先輩の山口さんと待ち合わせる。広告会社の制作2部で忙しそうな山口さんは、昼休みに時間を作っていた。行方不明の兄から届いた葉書を見せ、兄の思い出話をする。とりあえず葉書に書かれている墨田区吾妻橋と言う住所に行ってみると言うユキに、一緒に行ければいいのだけれどと言いながら、兄宛ての手紙を書いてくれる山口。
     地下鉄とバスを乗り継いで、吾妻橋までやってくるが、葉書の吾妻橋脇と言う住所にそれらしい家は無い。当惑しながら、ユキが彷徨いていると、青と緑のビニールシートの段ボールハウスから咳をしながら出て来た若いホームレスがユキと声を掛ける。兄ちゃんと一言絶句するユキ。コンビニ弁当をキレイに平らげた兄に、何でこんな生活をしているのと尋ねるユキ。兄は、エディット・ピアフや美空ひばりに何で歌を歌っているのかと尋ねるようなものだと答える。ユキには何だかさっぱり分からない。弁解するように、東京の人間は、自分のことしか関心がない最低な人間たちだとつぶやく。
    山口も気にしていた、久のかっての妻友子について尋ねると、全く会っていないと言う。友子さんがお店をやっている浅草は、ここから近いの?と尋ねると近いと言う久。店の名前は知らないのと聞くと、噂で聞いたところでは、スナックたんぽぽと…と小さな声で答える久。とりあえず行ってみようとユキが誘うと、一番上のジャンバーを着替えてくる。着替えたんだねと尋ねると、一番キレイだからと久。ユキは、そんなことはないよと答えた。
    浅草今半の前で、テレビ局のクルーが久に、格差社会についてどう思うかインタビューをしていいかと声を掛けてくる。滔々と語るが、ロールチェンジを理由に打ち切られる。クルーたちは、何を言っているのか解らないとか、目つきが怖かったと話している。インタビューの最中に、ユキは電話帳で友子の店の番号を調べ連絡を取っていた。煮込み通りの店の外の席で、兄妹で飲んでいると、自転車に乗った友子がやって来る。
to be continued.
   市川準の遺作。DVカメラを使い自分で撮り、知り合いを出演させた作品。何も知らずに見れば、どこかの新人が撮って、どこぞで賞を取ったと言われれば、そのまま信じてしまうかもしれない。映画監督を生業として、テレビの2時間ドラマの演出で食べている映画業界の監督業とは違い、広告業界の演出家が、映画を作り続けることによって、映画監督として評価されていったというイメージの市川準。勿論、この作品を最後の作品として撮った訳ではないので、遺作ということに過度な思い入れてはいけないだろう。

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