2009年5月4日月曜日

みどりの日に緑魔子

  阿佐ヶ谷ラピュタで、孤高のニッポン・モダニスト 映画監督中平康
  57年日活中平康監督『誘惑(287)』
   杉本家の朝、数えで55歳になる杉本省吉(千田是也)は去年妻の優子(左幸子)を亡くし、一人娘の秀子(左幸子・二役)と、婆やをおいて生活していた。秀子は勝ち気で、ドライな現代っ娘。あのパーティーを画廊でやっていいわねと言う。お父さんダンスしてねと言う秀子に、ブルース位踊れると答える省吉。お母さんは、多分お父さんがブルース踊れるなんてきっと知らなかったわと言う。母親の焼き餅は娘に遺伝するものだと心の中で思っている省吉に、友人の光子がちょっとしたシバリエねと言っていたと言う秀子。今から華道教室に出てからお店に行くわと言う秀子に、あのお化け生け花かと省吉。
   省吉は、銀座のすずらん通りで、洋品店を経営している。現在、2階を画廊にしようと改築中なのだ。杉本洋品店には、頼りない男性店員の大橋参吉(小沢昭一)と竹山順子(渡辺美佐子)がいる。順子は、仕事はテキパキとしているが、27歳の今まで、化粧をしたことはなく愛想が悪い。最近売上が下がっているのは意外と順子の愛想のなさではないかと省吉は思っている。
   大工が店を出る時に、向かいの喫茶店の桃園から、蓄音機の音が流れてくる。「酒は涙か溜め息か…」の曲に惹かれて、省吉は桃園に入る。主人の戸部(殿山泰司)は、久しぶりに出てきたんだが、やっぱり針の音がいいねと、次に「丘を越えて」を掛ける。
   曲を聴きながら、「この曲が、日本中に流れていたのは、昭和6年の三谷英子に失恋した頃だった・・・」昔を思い出している。五重の塔のある境内(浅草浅草寺か?)のベンチに、省吉と三谷英子(芦川いずみ)が座っている。上野の美術学校を出ても画家として全く生計のあてがない。縁談話があり、私はどうすればいいのと言う英子に、何も答えることが出来ない省吉。省吉は接吻をしようとするが、栄子に拒まれる。数日後、英子の手紙を桃園のカウンターで読んでいる省吉。手紙には、「私が拒んでも接吻をしてくれればよかったのに、あなたはどうして接吻してくれなかったの」とあり、縁談が決まった旨が書かれてある。絶望し、カウンターに伏す省吉。そこに、「青い顔をしてどうしたの?」と声を掛ける秀子の母の杉本優子。三谷英子を思い出し、思わず「英ちゃん・・・」と口に出してしまい、戸部にどうしたの?と声を掛けられ、赤面する省吉。
   店に戻り、クーラーをつける。ものすごい音がして動き始める。順子に化粧をしたほうがいいのではと言おうと思い、順子に「ちょっと話があるんだがいいかい?」と声を掛ける。しかし、左官に声を掛けられ、改めてゆっくりと言う省吉。順子は、店主が自分に気があって、告白しようとしたのではないかと想像し、店のメモに結婚を申し込まれると書いている。そこに、大山が帽子の箱を積み重ねて帰ってくる。支払いが遅いので、届けてくれず、先方に出かけないといけないらしい。そのことに愚痴をこぼす大山に、店頭だと冷たく注意する順子。
   水生流生け花教室とある家の座敷、猫を抱きながら生徒たちに指導をする土方竜(長岡輝子)。生徒の中に園谷コト子(轟夕起子)がいるが、不器用で花は周りの人間にぶつけるは、勢い余って花瓶をすっ飛ばした上に、テーブルを壊してしまう。その時、轟音がする。華道教室の奥の町工場のようなところでは、板金、溶接などが行われている。ここは土方竜の御曹司笛吉(波多野憲)の前衛派生花の作業場である。秀子に加え。綾部得太郎(武藤章生)、桜木光子(中原早苗)、金山トミ子(高友子)、大林英吉(杉幸彦)の6人。笛吉たちは、秀子の父が開く画廊で、グループ店をやろうと思っている。1週間5千円を3千円に負けて貰って、3週間9千円。招待状や何やらで1万円以上かかる。笛吉の友人の絵描きたちのレインボーグループと合同開催にしようということに。
 to be continued.
    

   シネマヴェーラ渋谷で、緑魔子伝説
   77年須川プロ/ATG須川栄三監督『日本人のへそ(288)』
小劇場で、吃音矯正の文章を読んでいる老若男女がいる。男(なべおさみ)が出て来て、吃音矯正の為にアメリカで学んできた最新の治療法で、患者たちに演劇をやらせるのだと説明する。患者たちが吃音になった理由を説明する。商社マン(美輪明宏)は、語学も優秀なエリートだったが、米戦闘機の輸入の疑獄に関わり、国会証言で記憶にないなど心にもないことを証言したストレスで、セリーグ公式審判員(草野大吾)は、野球好きな父親に、左利きに矯正され、プロ入りしたが、2軍止まり、野球から離れたくないので、審判員になったが、初陣、2塁の塁審で、走者にアウトの宣告をする際に右手を上げるべきか、左手を上げるべきか、自分の判断が瞬時に付けられなくなり吃音に、右翼団体の代表(小松方正)、国鉄職員(三谷昇)、マネージャーが両親から多額の金を巻き上げたアイドル歌手(東てる美)、過激派の恋人に自分が搭乗する便をハイジャックされてしまったスチュワーデス・・・。
そして、この映画のヒロイン桜田百恵(緑魔子)が東北から出てきて、ストリッパー、ヘレン天津となるまでを芝居にしていくのだ。
   東北の貧しい村、桜田百恵の父親(熊倉一雄)は出稼ぎに行くが、事故でムチ打ち症になってしまう。中学生だった百恵は、同級生のハットリ君(佐藤蛾次郎)に別れを告げて東京に出ることにする。東京に発つ前夜、父親は可愛い娘が東京の男の手にかかってしまうと思うと、獣のようになって百恵を犯す。百恵は、ショックのあまり吃音になった。
    東京の最初の住込みの勤め先クリーニング屋の主人(ハナ肇)は、百恵を好色の目で見て何とかモノにしようと迫ってくる。休日、浅草の浅草寺の賑やかさに夢踊る百恵は境内で、1週間で英語が話せるようになるという怪しげなテキストを売っている東京大学の学生(美輪明宏)を見かける。学生は言葉巧みに百恵に近づき、百恵は浅草の連れ込み旅館で身を任せる。しかし、学生は消えてしまう。それから、百恵の転落の人生は始まる。
   エロバーの女給からトルコ嬢になっていた百恵は、常連のキミヅカ(丸山善司)からストリップ嬢にならないかと誘われる。キミヅカは浅草ロック座の台本作者だったのだ。ロック座を訪ねるとキミヅカは、劇場支配人で振付師の石井(小松方正)に紹介する。石井は、百恵にヘレン天津という芸名を付け、振り付けを教えてくれた。ダンサーが増えたので、コメディアン(草野大悟、三谷昇)は首になる。ヘレンは、彼らとバンドマンとダンサーたち(東てる美、女屋美和子、橘由紀)と団結して、待遇改善を支配人たちに訴えることにする。
   団交をしていると、地周りのヤクザ(美輪明宏)がやってくる。ヤクザは、かって浅草寺の境内で会った東大生だ。ヘレンは姉さんとなる。しかし、ヤクザは、ヘレンに目を付けた親分(草野大悟)に売り渡し、親分は右翼の会長(小松方正)に、右翼の会長は政治家(なべおさみ)に譲り渡す。 
   その後、小劇場で行われる劇中劇と、演じている吃音者たちの関係が入れ子の状態で、どんでん返しが連続していくのだった。
   
   75年東映京都中島貞夫監督『まむしと青大将(289)』
   広島刑務所からゴロ政(菅原文太)が出所してくる。ホルモン屋で隣の客の煙草やホルモンを盗み食いするほど金はない。大阪の弟分不死身の勝(川地民夫)のもとに戻ろうにも手土産もない。そこで地元のヤクザが殴り込みに入るというのを聞いて助っ人を買って出る。相手の親分のタマ取ったら100万円寄こせと約束する。激しい争いの中、相手の事務所に忍び込み飲み食いをするゴロ政。最後に、相手の親分(汐路章)を脅し、お前のタマ120万で売らんかいとドスを突き付け、懐に入れる。しかし、ゴロ政が逃げるとすぐに、他の男に刺される親分。
   なんとか勝への手土産も出来たし、トルコに行くゴロ政。花江(三島ゆり子)に一緒に明日大阪に行こうと誘う。花江も、トルコ嬢でコツコツと300万を貯めていた。しかし、砂子欣一(川谷拓三)に誘われ、大阪のボンボンをカモにして麻雀に加わる。弱い筈の大阪のボンの町田健次郎(荒木一郎)に一晩掛かって有り金すべて巻き上げられてしまう。しかし、帰りがけハンカチで汗を拭こうとした健次郎は、ポケットから牌を落としてしまい、イカサマがばれる。金を取り返すゴロ政に、男は涼しい顔で、ベビーフェイスの健だと名乗って去って行った。
   花江のアパートに帰ろうとするゴロ政に、雀荘からしけた親父(金子信雄)が付いてくる。坊本徳造という男は金がないと死ななければならないと言う。よろめいて川に落ちそうになったのを、身投げしようとしたのかと思ったり、5,6人いる子供たちにオカヤンいるかとゴロ政が聞くと、オカヤン知らん、食べモノか?という子供たちの答えに、男やもめが子供たちを育てていると思い込み、帰ってきた男の妻で、子供たちの母ちゃん(石井冨子)が、腹が空いたという子供に焼き芋を上げているのを見て、赤の他人でもこんな親切な人はおるんやと、ゴロ政は勝手でお目出度い勘違いで、有り金を全て坊本一家に上げてしまう。
花江は大阪行きの支度をしていたが、兄弟の土産を人のために使ったと言われて、黙るしかない。そこに、隣室の一条沙織(緑魔子)が花江に借りていた雑誌を返しに来る。沙織は花江と同じトルコ嬢、花江から男には興味がなく1億円貯めていて、唯一の楽しみが麻雀と聞いて、これだと思い、ベビーフェイスの健を探す。花江の虎の子の300万の貯金を下させて種銭にし、沙織、ゴロ政、健、欣一で囲む。しかし、沙織は圧倒的に強く、簡単に巻き上げられてしまう。半狂乱の花江。
  健は、沙織の1億円を頂くための撒き餌だと言って、欣一を人質に、沙織の所に行く。しかし、健は大阪で大きな勝負があるので、一緒に組んで儲けないかと誘い姿を消した。

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