2009年1月14日水曜日

涙の抜歯

  朝から丸の内の糖尿病クリニックでアナムネ。アナムネって何?と言う感じで、恐る恐る診察室に入ると医師ではなく看護師が、今までの病歴や生活習慣を事細かくヒアリングするものだった。問診とか書いてくれ!忙しそうなベテランの看護師が、早口で聞いてくる質問に、一問一答。性病にかかったことは?とか最近性欲は?とかさりげなく織り交ぜながら。「性欲ですか・・・まあ、淡白になりました。軽鬱のせいなのか、年齢のせいなのか分かりませんが・・・・」と思わず真面目に答える。当たり前か(笑)。何だか取り調べを受けている感じ。途中鼻かみたくなるし、ズルズルで切ない。60分掛かる所を30分で済まされた感じであっという間に終わる(苦笑)。切ないのぅ。
  大門の歯医者。最悪だ。差し歯していた根元が割れていて、抜かれてしまった。上顎の臼歯。歯医者はかなり悪戦苦闘し、こちらはかなりのダメージだ。麻酔が切れると鈍痛と血の味。気を紛らわそうと渋谷に出て、鎮痛剤を飲もうにも食欲ないので、まずは散髪、せっかくなので百軒店で30年ぶりの店に入り遅い昼食。
   渋谷シネマヴェーラで官能の帝国ロマンポルノ再入門2
75年日活神代辰巳監督『黒薔薇昇天(17)』。
   和歌山の海岸の民宿で、ブルーフィルムの監督十三(岸田森)は、カメラマン安っさん(高橋明)と照明の石ヤン(木夏衛)とで芸術的なブルーフィルムを撮影している。女優のメイ子(芹明香)が男優の一(ピン)(谷本一)の子供を妊娠し、出産するまで出演を休ませて欲しいと言い出す。ブルーフィルムの音声として、大相撲の勝力士のインタビューや、犬の息使いや、猫のミルクを舐める音、はたまた天王寺動物園に行き、アシカやシマウマの声まで収録しながら、メイ子の気持ちを翻意させようと、尊敬する大島渚や今村昌平の名を挙げて芸術的なファックの美を追求した映画を作ろうとしているのだと熱く語るが、説得出来ない。
   十三が通う歯医者の待合室でいつも会う和装の美人がいる。幾代(谷ナオミ)といい、大垣彦市(牧嗣人)の2号をしている。自分の診察のあと、テープレコーダーを忘れた振りをして、女子大生(東てる美
や幾代の診察を盗み録りする。音声だけ聞くと治療のやり取りもなかなか色っぽい。そこに、医師と幾代の不倫の証拠となるやり取りが収録されていたことで、幾代を脅迫して女優に仕立てようと思いつく。ある人から頼まれ幾代の身辺を探っている興信所の者だと偽ると、旦那が嫉妬して依頼したのだと幾代は勘違いする。妻の入院代が必要なのだと言うみえみえの嘘を信じた幾代を、通天閣近くのアパートの自室に連れ込む。興信所の仕事をしながら、映画監督をしていて、幾代をヒロインにチャタレー夫人を撮りたいと告白する十三。明日金を持ってくるという幾代を見送りながら、幾代に恋をしていることを安やんに告白する十三。
  幾代は、あれだけ尽くしてきた大垣が自分の浮気を疑って興信所を雇ったと思いショックを受けていた。その日、大垣にいつものように奉仕した後、首を吊って死のうとする。気を失ったところで、気になってついてきた十三が、助ける。翌日、指定の場所にやってくる幾代。証拠映像を見せると偽って映写機を回すと、何故か十三が撮影したブルーフィルムだ。驚いている幾代に、「ワイは芸術を撮ってまんネン」と怪しげな理屈を並べながら口説き、のしかかる十三。悶える幾代。いきなり、カメラを構えた安っさんと石ヤンが入ってくる。激しく抵抗するが、次第に夢中になる幾代。
   それから十三組に幾代が加わった。海岸を移動しながら、なぜ目の前で男優と絡んでいても嫉妬しないのだと十三に尋ねる幾代。女優を妻にしている監督は多く、彼らは男優に嫉妬はしないと答える十三。和歌山の海岸の民宿で撮影をしている。一と幾代の絡みが徐々に盛り上がっていくと、大分腹が目立ってきたメイ子が、一に自分の前でイクのは止めてくれと騒ぎ始める。更に、十三までもが、一に嫉妬して、フレームに入ってくる。安っさんに怒られ、「ワイは修行が足らんのや・・・」と言う十三。
  これも懐かしいな。やっぱり、80年代のひらがなの“にっかつ”ではなく、“日活”。神代辰巳の脚本は、学生の頃、映画を見るたびに、手に入れて読んだので、これもかなり覚えている。しかし、脚本にはあってカットされたシーンやセリフを意外に混同して覚えているものだなあ。岸田森、谷ナオミ、芹明香、
高橋明、役者も素晴らしい。神代の代表作とはいえないかもしれないが、自分の中では、けっこう好きな映画だったなあと再認識。
   73年日活曽根中生監督『実録白川和子 裸の履歴書(18)』。佐世保出身で東京で女子大生をしている和子(白川和子)は、演劇を志していたが、劇団の稽古だと倉庫に騙して連れてこられて4人の若者に強姦されてしまう。その模様を撮影した映像を見ながら4人に強姦はアカンという老人(殿山泰司)。
老人は、珍プロダクションの社長で珍田(うずた)一平、後日、和子が大学を出てきたところに声を掛ける。半年後、和子はピンク女優白川和子として「不倫の悶え」でデビューをした。
  和子はピンク映画のアシスタントカメラマンと同棲をしている。和子は、小さくても平和で幸せな家庭を作りたいと思っているが、男は、ベトナムに行ってカメラを回したいと文句ばっかり言っている。自分はピンク映画の助手でしかないのに、そのくせ、和子をピンク女優とどこか見下している。和子は男と別れた。女優を辞め、保育園などで働こうと思うが叶わない。結局、友愛福祉会という団体で、募金集めや、独居老人の介護などをしている和子。ある日、一人の老人のもとを訪ねる。尿瓶や便のついたおむつの中で過ごしている老人の部屋をかたずけ、洗濯をする和子。老人は、女性の写真を持っている。娘さんですかと聞く和子に、孤独な自分にとっての恋人だという。和子の女優時代のスチールだった。老人に自分の乳房を触らせ、自分の身体で癒そうとする。また来るねと言って去る和子。数日後募金活動をしている和子に、会の男が、あの年寄りに何をしたんだと聞く、老人は首つり自殺したのだ。
  老人の骨壺を持って、東京タワーの展望台に登る和子。遺灰を撒き、望遠鏡で、最初に見つけた男に老人の代わりに自分の身体を捧げるという和子。チンドンヤの男のものを加えている和子。横須賀の港近くで、タクシー運転手(高橋明)とSEXをしている和子。本当は佐世保の両親に会いに行きたかったとつぶやく和子。
  ある日、撮影隊の集合場所である新宿西口の安田生命前にあらわらない和子。助監督が自宅を訪ねるが、和子のヒモの男が出てきて、ここにはいないと言う。しかし、男は、和子の別れ話に逆上し、和子の目、鼻、耳を塞いで監禁していた。数日後、訪ねてきた珍田に助けられる。全裸で外に逃げ出した和子は、徐監督の氷室に助けられる。自分のコートを着せ、自分の家にかくまうからと言って、妻に許諾をもらってくるまで、ここにいろと一軒のスナックに案内される。
  スナックのマスターは、かってピンク女優時代の相手役だった瀬木(織田俊彦)だった。そこに氷室の妻が現れ、自分は元5社の女優だったと言い、夫はピンク映画の助監督をしているが才能があり、ピンク女優風情が付き合うような男ではないと和子を侮辱、女二人はつかみ合いの喧嘩になった。スナックで泥酔した上、止める瀬木を断って町に出ると警官に逮捕される和子。翌日警察署を出てきたところを瀬木が出迎え、安物だけどと言って買った服をくれる。やさしい瀬木に、和子は引退して、瀬木と結婚することを決意する。しかし、珍田社長のところに行くと、せっかく日活から主演の話がきているのに、と言う珍田。撮影所で仕事ができると聞いて、瀬木に別れを持ち出し、ぶたれる和子。
  日活第1作、「団地妻 昼下がりの情事」が完成したのは、瀬木との結婚式を挙げる予定日だった。日活ロマンポルノの看板女優となっていく和子。実際の予告編や作品を挟み込みながら、撮影所での場面をつなげていき、白川和子の引退興行としての上半身裸の和子は、後輩の女優たちを従えて、口上を述べてエンディング。
  看板スターの結婚引退を記念して、まだ勢いのあった日活撮影所のスタッフが餞に作ったお祭り映画だな。当時は、少し退屈だった記憶があるが、なかなか楽しんで見ることができるロマンポルノ・オブ・ロマンポルノ。
   昨日会ったK氏に無理を行って、青山劇場で16歳早乙女太一の公演を見る。一緒に招待してもらった元会社の同僚たちと宮崎料理屋。

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