渋谷TOEIで、阪本順治監督『北のカナリアたち(?)』
公立図書館の書架に本を戻している川島はな(吉永小百合)の姿がある。館長?(塩見三省)が「お手伝いしましょうか」と声を掛ける。「いえ、大丈夫です。」「川島さんは、今日まででしたね。お疲れさまでした。」はなは今日で定年を迎えたのだ。「どうされるのですか?故郷の北海道にお帰りになるのですが?」「えっ?」北海道の記憶を封印して生きて来たはなの不審げな表情に、「いえ、確か、そんな話を以前お聞きしたような気がしたものですから」「気ままな一人暮らしなので、温泉にでも行って、ゆっくりしようかと思います」「それはいいですね。」
はなのアパートのチャイムがなる。「はい?」「神奈川県警の○○です」はなが戸を開けると二人の刑事が立っていた。年配の方の刑事(石橋蓮司)「川島はなさんですよね。鈴木信人という男をご存知ですよね」「 ? 」すぐには心当たりのなさそうなはなに、強引に上がって、写真を見せる刑事。少し経って、「ああ、面影があります」「あなたが、北海道の分校で先生をしていた時の生徒ですね。鈴木から連絡はありませんでしたか?」「はあ・・・信ちゃんがどうしたんでしょう?」「人を殺して、逃走しているんです」「えっ、そんなことをするような子とは、信じられません。」「鈴木の部屋に、あなたの連絡先を書いたメモが残されていたんです」「もう長い間・・・」刑事は、部屋にスーツケースと草津温泉のガイドブックがあるのに気が付いて、「草津温泉にご旅行ですか?草津はいいですねえ。もし、鈴木信人から連絡があったら。こちらに」名刺を置いていく刑事。
2012年12月12日水曜日
2012年11月27日火曜日
木下恵介生誕100周年。
エルメス銀座店10FのLe Studioで、43年松竹大船木下恵介監督『花咲く港(21)』
朽ち果てた大きな木造船がある砂浜。洋装の女と巡査が話している。日米開戦が近付き南方から帰国したせつ代(槇芙佐子)と木村巡査(仲英之助)である。
網を持ったせつ代の父、袈裟次(河原侃二)。「またふらふらとしていやがって。この島で、働きもせず無駄飯を食っているのはお前だけだ」巡査が取り成そうと話を変え、袈裟次の目の具合を尋ねる。「目の調子はどうなんだ。袈裟次が船を降りなければならなくなってから、獲れるカツオが減ったと網元がこぼしていたよ」袈裟次は漁船に乗り、潮見をしていたが、目をやられて船を降りているのだ。持ってきた魚網を繕おうと、網を広げるのをせつ代に手伝わせようとするが、やる気のなく雑に扱うせつ代を罵る袈裟次。嫌気がさしたせつ代は、砂浜から逃げ出す。
浜辺の一本道を自転車でやってくるお春(水戸光子)に兄さんは元気かと声を掛けるが、
からゆきから帰ってきたせつ代に、若いお春は嫌悪感を感じているのか、全くつれなく通り過ぎる。お春は、近くに止まっている馬車の下にもぐっている馬車会社の社長野羽玉(笠智衆)に「お客様からの電報がまた届いたので、かもめ館にすぐ来てほしい」とのかもめ館の女主人おかの(東山千栄子)からの伝言を伝える。馬車の下にもぐって修理をしていたので野羽玉の顔に機械油がついている。「ずいぶん汚い社長さんね」お春は、そのまま村役場に行き、助役をしている兄の平湯良二(半沢洋介)に同じ用件を伝える。
かもめ館には、既に村長(坂本武)、島一番の資産家である網元の林田(東野英治郎)が来ていた。15年ほど前に島で造船所を作ろうと尽力した渡瀬健三氏の遺児、健介が、父が最も愛した島を一度見たいので来島するという電報が、昨日、長崎から届いたが、ほとんど同じ内容の電報が鹿児島から船に乗ると届いたのはなぜかと集まったのだ。
鹿児島の船はそろそろ到着するので、皆で出迎えようと、野羽玉の場所に乗り、実は10年前に渡瀬が造船所の夢破れ、ペナンに去った時、渡瀬を慕っていたおかのは、全てを捨てペナンに追い掛けて行ったのだと言う話を村長は披露し、おかのは娘のように頬を赤らめた。
野長瀬修三(小沢栄太郎)、勝又留吉(上原謙)、ゆき(村瀬幸子)、ゆきの子(井上妙子)、英吉(大坂志郎)、技師(毛塚守彦)、小使(島村俊雄)
2012年10月24日水曜日
日本ジャズミュージカル映画の名作。
阿佐ヶ谷ラピュタで、娯楽の達人監督井上梅次の職人芸。
60年宝塚映画井上梅次監督『嵐を呼ぶ楽団(17)』
大阪、キャバレーユニバースのネオン。 フルハンドの演奏に合わせ、20人ほどのダンサーが踊る。 赤い衣装の天路ルリ子(雪村いづみ)がセリで上がってくる。「私は火の鳥~」。1コーラス歌ったところで、突然ピアノの牧宏志(宝田明)がアドリブを弾き出す。バンマスの近藤(弘世東作、店の支配人など「けったいな奴や!」「やりおった!」と怒っている。ルリ子も驚くが、上手く踊りを合わせて、客には分からないように、ステージを終える。
ルリ子の楽屋。バンマスや支配人に連れられ、弘志がやってくる。バンマス「いつものピアノが腹痛(ハライタ)を起こして、代わりに入れたもんで・・・」支配人「ほら謝らんか!!」弘志、頭は下げるが「僕は、あなたの赤い衣装を見て、イメージを持った。メロデーが浮かんだんです」バンマス「それはバンマスになってからの話や!」弘志「ジャズって自由なものだ。そんな杓子定規なことは納得できない」ルリ子「そんな生意気な言葉は、自分がバンマスになってから言って頂戴!とにかく楽屋を出て行って!首よ!!」
肩を落とし帰宅する弘志。「おかえりなさいませ」婆や(吉川雅恵)。家の中では、弘志の母雪江(水戸光子)が衣装の直しをしている。「主役が衣装を気に入らないって言うので、やり直しているの」「大変だね」「昔は自分もそうだったわ。どう?近藤さん元気だった?うまくいかなかったの?」「また、やっちゃったんだ。出てきた女の子の目の覚めるような赤い衣装にメロデーが浮かんできてきてしまって・・・」「しょうがない人ね。でも、お父さんとそっくり」。今は亡き弘志の父は、牧慎太郎と楽団ブルースターとして一世風靡した。弘志は、その才能だけでなく、頑固で芸術家肌の性格もまた、受け継いでいたのだ。
九州別府に向かう国鉄の3等客室。マネージャー松本(山茶花究)「牧、三谷知らんか?あいつ、どこいったんやろうか」そこに、車掌只野凡太郎(江原達怡)に連れられ三谷純(高島忠夫)がやってくる。「お金も持たずに、1等にいるんですから、困ります。ただ、こう見えても、僕はジャズファンで、サックスやるんで、大目にみますよ」三谷は、弘志が書いている譜面に目を止めて「ふふーん、ふふふ、ええメロデーやないか」いきなりケースからトランペットを取り出し吹き始める。松本「おいおい!汽車の中だぞ」迷惑顔の他の乗客を見て「デッキへ行こう!」汽車のデッキで、トランペットを吹く三谷。「曲名は?」「午前0時のブルースさ。俺たちジャズメンは、クラブでの演奏が終わった深夜0時が特別なのさ」「わかるなあ」弘志の曲を吹き続ける三谷の後ろに、いつの間にか車掌がいて、「いい曲ですねえ」
「東京より有名ジャズバンド来る!」と立看が店の前に立っている、別府温泉のジャズ喫茶は、観客も疎らだ。マネージャーの松本に、マスター(山田周平)は文句を言っている、「おかしいなあ。全然入らないじゃないか
」「今、ジャズブームだから、どんな楽団でもいいので連れて来てくれと言ったのはそっちやないですか」客が少ないことでやる気を無くし、楽屋に戻ってくる弘志、三谷たち。突然、松本とマスターがやってきて「えらいこっちゃ!お客が押し寄せて来たで」半信半疑で、ステージに戻ると、確かに客席は打って変って満員で、押すな押すな。しかし、よく見ると、客席に、天路ルリ子がいて、彼女目当てのファンが入って来ていたのだ。ルリ子「みなさんに追い掛けられて、このお店に逃げ込んだけれど、見つかっちゃたわね。では1曲プレゼントします」ステージに上がってきて、弘志に気が付き「あら、今日は勝手なことしないでね。」1曲歌って拍手喝采、司会者(世志凡太)が出て繋ごうとするものの、店を出るルり子を追いかけて、満員の客も一斉に出て行ってしまった。ルリ子との差に、愕然として落ち込む弘志。
その夜、別府の歓楽街を歩く弘志と三谷。三谷「よし、飲もう!俺が奢ってやる。500円しか持ってないけど。牧、お前いくら持ってる?」「2000円だな」「よし!!この店は安くて、美人がいるんだ」目の前のスナックに入るが、店の女の子は人三化七だ。逃げようとする二人をがっちり押え込んで離さない店の女の子。しかたなしに1杯だけ安酒を頼むと、流し渡辺鉄雄(水原弘)が入ってくる。「あら、鉄ちゃん!」「兄さんたち、頼んであげて」「俺たちゃジャズメンだぜ、田舎の流しの歌なんて聞けねえよ」「なんだと!」「やるか?表に出ろ」三谷と鉄雄が表で殴りあう。そこに弘志が割って入り、「お前たちミュージシャンだったら、楽器で戦え。俺が審判だ」以外にも鉄雄のギターは凄かった。お互いの腕を認めて、握手をする二人。
鉄雄に送られ、楽団の宿の白?荘に戻ってくると、入口で、番頭高田(森川信)たちに捕まえられ、布団部屋に押し込められる二人。状況を飲み込めない二人に、主人の卓造(柳家金語楼)は、松本始め楽団のメンバー全員が11820円を払わずに逃げてしまったので、二人は人質だといい、支払われるまで帰さないと言い放つのだ。
亘一夫(神戸一郎)吉川二郎(柳沢真一)
緒方セツコ(朝丘雪路)天路マリ子(環三千世)大阪興行大貫専務(安部徹)
マスター富岡(立原博)
支配人山根(有木山太)別府ジャズ喫茶
マネージャー白井(茶川一郎)バンドマン(大中英二、満永矩之、早川恭二、原耕二、仲塚雅哉)
ぎょうざ屋の親爺(長谷川みのる)
60年宝塚映画井上梅次監督『嵐を呼ぶ楽団(17)』
大阪、キャバレーユニバースのネオン。
ルリ子の楽屋。バンマスや支配人に連れられ、弘志がやってくる。バンマス「いつものピアノが腹痛(ハライタ)を起こして、代わりに入れたもんで・・・」支配人「ほら謝らんか!!」弘志、頭は下げるが「僕は、あなたの赤い衣装を見て、イメージを持った。メロデーが浮かんだんです」バンマス「それはバンマスになってからの話や!」弘志「ジャズって自由なものだ。そんな杓子定規なことは納得できない」ルリ子「そんな生意気な言葉は、自分がバンマスになってから言って頂戴!とにかく楽屋を出て行って!首よ!!」
肩を落とし帰宅する弘志。「おかえりなさいませ」婆や(吉川雅恵)。家の中では、弘志の母雪江(水戸光子)が衣装の直しをしている。「主役が衣装を気に入らないって言うので、やり直しているの」「大変だね」「昔は自分もそうだったわ。どう?近藤さん元気だった?うまくいかなかったの?」「また、やっちゃったんだ。出てきた女の子の目の覚めるような赤い衣装にメロデーが浮かんできてきてしまって・・・」「しょうがない人ね。でも、お父さんとそっくり」。今は亡き弘志の父は、牧慎太郎と楽団ブルースターとして一世風靡した。弘志は、その才能だけでなく、頑固で芸術家肌の性格もまた、受け継いでいたのだ。
九州別府に向かう国鉄の3等客室。マネージャー松本(山茶花究)「牧、三谷知らんか?あいつ、どこいったんやろうか」そこに、車掌只野凡太郎(江原達怡)に連れられ三谷純(高島忠夫)がやってくる。「お金も持たずに、1等にいるんですから、困ります。ただ、こう見えても、僕はジャズファンで、サックスやるんで、大目にみますよ」三谷は、弘志が書いている譜面に目を止めて「ふふーん、ふふふ、ええメロデーやないか」いきなりケースからトランペットを取り出し吹き始める。松本「おいおい!汽車の中だぞ」迷惑顔の他の乗客を見て「デッキへ行こう!」汽車のデッキで、トランペットを吹く三谷。「曲名は?」「午前0時のブルースさ。俺たちジャズメンは、クラブでの演奏が終わった深夜0時が特別なのさ」「わかるなあ」弘志の曲を吹き続ける三谷の後ろに、いつの間にか車掌がいて、「いい曲ですねえ」
「東京より有名ジャズバンド来る!」と立看が店の前に立っている、別府温泉のジャズ喫茶は、観客も疎らだ。マネージャーの松本に、マスター(山田周平)は文句を言っている、「おかしいなあ。全然入らないじゃないか
」「今、ジャズブームだから、どんな楽団でもいいので連れて来てくれと言ったのはそっちやないですか」客が少ないことでやる気を無くし、楽屋に戻ってくる弘志、三谷たち。突然、松本とマスターがやってきて「えらいこっちゃ!お客が押し寄せて来たで」半信半疑で、ステージに戻ると、確かに客席は打って変って満員で、押すな押すな。しかし、よく見ると、客席に、天路ルリ子がいて、彼女目当てのファンが入って来ていたのだ。ルリ子「みなさんに追い掛けられて、このお店に逃げ込んだけれど、見つかっちゃたわね。では1曲プレゼントします」ステージに上がってきて、弘志に気が付き「あら、今日は勝手なことしないでね。」1曲歌って拍手喝采、司会者(世志凡太)が出て繋ごうとするものの、店を出るルり子を追いかけて、満員の客も一斉に出て行ってしまった。ルリ子との差に、愕然として落ち込む弘志。
その夜、別府の歓楽街を歩く弘志と三谷。三谷「よし、飲もう!俺が奢ってやる。500円しか持ってないけど。牧、お前いくら持ってる?」「2000円だな」「よし!!この店は安くて、美人がいるんだ」目の前のスナックに入るが、店の女の子は人三化七だ。逃げようとする二人をがっちり押え込んで離さない店の女の子。しかたなしに1杯だけ安酒を頼むと、流し渡辺鉄雄(水原弘)が入ってくる。「あら、鉄ちゃん!」「兄さんたち、頼んであげて」「俺たちゃジャズメンだぜ、田舎の流しの歌なんて聞けねえよ」「なんだと!」「やるか?表に出ろ」三谷と鉄雄が表で殴りあう。そこに弘志が割って入り、「お前たちミュージシャンだったら、楽器で戦え。俺が審判だ」以外にも鉄雄のギターは凄かった。お互いの腕を認めて、握手をする二人。
鉄雄に送られ、楽団の宿の白?荘に戻ってくると、入口で、番頭高田(森川信)たちに捕まえられ、布団部屋に押し込められる二人。状況を飲み込めない二人に、主人の卓造(柳家金語楼)は、松本始め楽団のメンバー全員が11820円を払わずに逃げてしまったので、二人は人質だといい、支払われるまで帰さないと言い放つのだ。
亘一夫(神戸一郎)吉川二郎(柳沢真一)
緒方セツコ(朝丘雪路)天路マリ子(環三千世)大阪興行大貫専務(安部徹)
マスター富岡(立原博)
支配人山根(有木山太)別府ジャズ喫茶
マネージャー白井(茶川一郎)バンドマン(大中英二、満永矩之、早川恭二、原耕二、仲塚雅哉)
ぎょうざ屋の親爺(長谷川みのる)
2012年10月23日火曜日
日本橋で日本橋を観る。
日本橋三井ホールで、東京国際映画祭、『日本橋で日本映画を観る』 。当日券並ばせたあげく、開場してから、たった2名を売り切れですと帰しておきながら、2割ほど空いている客席と、15席取りながら5席しか埋まっていない関係者席。更に、上映中に、山本冨士子きれいだなとか言わでもがなの私語を続ける関係者席の2名(自分の直ぐ後ろなんだなー)に殺意を覚えたので、かなり不愉快を覚えつつ、映画は最高なので・・。
56年大映東京市川崑監督『日本橋(16)』
緞帳が上がると極めて狭い路地がある。青白いうなじの芸者の後ろ姿。駒下駄のカランコロンという音がして、女の姿は消える。「きゃー、出た!」「見てー!」「若さんの幽霊よね。」若い芸妓たちが悲鳴を上げる。
芸者のお孝(淡島千景)が、玄関を開けようとして、表札が曲がっていることに気付き、真っすぐするが、何故か反対側に曲げる。芸者たちが「姉さんお帰りなさい」と口々に声を掛ける。お孝「あんたたち、9人もいて、全然片付いていないじゃないか。猫の手にも役に立たないんだから。もう日がくれちまうよ。ほら片しておくれでないかい」少しだけ片付いた部屋に座り込み「あー、広い家はいいねえ」婆やに「ご近所の挨拶はどうしたんだい?」「蕎麦を蒸してます」「遅いねえ。そんなもん取れば良かったじゃないか、今から、持って行ったんじゃ、恥ずかしいだろ。」湯気を立てる蒸籠見て、「ずいぶん豪勢に作ったねえ。」 お酌のお千代(若尾文子) 「来ました、来ました」 お考「あんたまで、お若さんが出たって?えっ、赤熊が!?」玄関に立つ 赤熊と呼ばれる五十嵐伝吉(柳永二郎)の異様な風体「いくら、おらから逃げようたって、日本橋の中なら、すぐにばれるだ」「貴方から何故わたしが逃げなくてはならないの?芳町の家が狭くなったから引っ越してきたんだわ」
日本橋元大工町に、自殺した芸者のお若の幽霊が出ると噂の路地がある。そこに、稲葉屋お孝(淡島千景)が引っ越してきた。九人の芸者を置き、手狭なので、怪談話を笑い飛ばしてやってきたのだ。お孝を、赤熊と呼ばれる五十嵐伝吉(柳永二郎)が訪ねてくる。赤熊は、北海道の出身で、一時は海産物の商いでかなり羽振りが良かったが、すっかり身を持ち崩し、緋熊の毛皮を身にまとう乞食に落ちぶれていた。かって入れあげたお孝が忘れられず何かとつきまとっていた。お孝は、所詮芸者の自分とは、飽きたら別れるという約束の関係、昔のことを持ち出されてもしょうがないと叩き出す。
ある夜、お孝は、半玉のお千代を連れて、待合いのお鹿の座敷に上がった。女中上がりの女将(沢村貞子)は、自分の店を恐縮するが、お孝はそういうことには拘らない気性だった。しかし、隣の座敷に一人でいる客が、この界隈では一番の人気芸者の滝の屋清葉(山本富士子)に熱を上げていると聞いて嫉妬心を燃やす。お孝は、清葉の客というだけで、冷静ではいられなくなるのだった。赤熊こと五十嵐伝吉も、元は清葉に振られていた客で、意趣返しに自分から声を掛け、いい仲になったのだった。お座敷を出る時に、清葉とすれ違ったお孝は、少し前まで、女将への言葉とは正反対に、こんな安い座敷に清葉姉さんともあろう人が上がるのは、問題だと皮肉を言う。
清葉を呼んだ客は、実は東京帝国大学の医学博士の葛木晋三(品川隆二)だった。葛木は、幼い時に両親を亡くし、ただ一人の肉親の姉が身を売り男の妾になって、弟を大学にまで進ませながら、穢れた自分は遍路に出るので探さないでくれと行方不明になってしまった姉の面影を清葉に見て、告白したのだ。清葉を穢れた身の上と思ったことはない、5年間夢にまで見て通ってきたのだと思い詰めた告白をする、清葉は葛木の気持ちを嬉しく思いながらも、旦那のいる身で、老母と娘の面倒も見ている。葛木の気持ちには応えられないと言い、別れの杯を交わす。
帰宅した清葉に、母(浦辺粂子)が、「お座敷の途中で、呼び戻して悪かったね。旦那さまが、急にいらっしゃると言うもんだから」葛木の純情に応えられずに、別れの杯を交わして来たのだと泣く清葉に、母は娘を芸者にしかできなかったふがいない自分を恨め、本宅に妻子を持ちながら、更に浮気をして妾を泣かす旦那となんざ別れればいい、清葉の娘と自分は賃仕事で暮らしていくからとさめざめと泣く母娘。そこに旦那(高村栄一)が、今晩大阪に立つので忙しいとやって来る。娘の寝姿を満足そうに眺め、障子も閉めずに寝間に入る旦那。娘の部屋の障子を閉め、急須を載せた盆を捧げ寝間に入る清葉。
日本橋川に架かる一石橋(いっこくばし)に、清葉と別れて来たばかりの葛木が佇んでいる。姉の形見の雛人形を研究室に飾っているが、そこに供えるべく栄螺と鮑を新聞紙に包んで懐中に忍ばせておいたのだが、清葉との決別に新聞包みを投げ捨てる。すると、それを不信に思った巡査の笠原信八郎(船越英二)が葛木を誰何する。氏名を尋ねられ、名刺を出すものの、草臥れた名刺にご自分のものでしょうなと全く信ずる様子のない笠原。雛祭りの栄螺と鮑を捨てたと言ってみたものの理解される筈もない。 お考は、近くの料亭に駆け込み、いらない皿に、どんなものでもいいので、鮑と栄螺を載せてくれと頼み、自分も笠原の前で日本橋川に投げ、葛木の窮地を救うのだった。あんたの名前を聞いておこうと言われ、その妻とでも並べて書いておいて下さいと艶然といい、そのまま、自分の家に、葛木を連れ帰るお考。翌朝、窓から水差しの水を捨て、着物を着る葛木を手伝うお考の姿がある。
お千代には、植木屋であったが、今は身体を悪くして寝ている甚平(杉寛)という老人が、唯一の身寄りである。お考には、時々やってきては、金を無心する蒟蒻島の小母(岸輝子)がいる。
お考にイロが出来たと知って、赤熊がやってきた。一度目は全く相手にしなかったが、赤熊は、自分の息子を、清葉の、滝の屋の前に捨て子をして、「妻には死なれ、子供も手放した」と現れた時には、絆されて家に上げるお考。
ある日、稲葉屋に、いつぞやの巡査、笠原がやってきた。葛木に謝らなければならないと言う。嘘をついているに違いないと東京帝大の医学研究室を訪れたところ、そこにいたのは正に葛木であった。姉の形見の対の土雛と1体の京人形が研究室に飾られているのも見た。といいつつ、東京帝国大学葛木晋三とその妻と書かれた手帖の1頁を千切ってお考に渡し、奥さんと何度も言って去った。笠原の葛木の奥さんという言葉は、お考を甚く感激させ、手帖の頁を仏壇(神棚だったか?)に飾り、手を合わせる。
そして、部屋の芸妓たちを集め、今後おかみさんと呼ぶように、借金を帳消しにしてやってもいいと言うのだ。また、2階で旦那然と、布団に腹這いで煙管を燻らしている赤熊を叩き出そうとする。布団の下にあった短刀を抜き、お考を殺そうとする赤熊と揉み合う。しかし、開き直ったお考は諸肌を脱いで、殺すなら殺せ、その代わり、背中に葛木の名を刻め、1文字2文字なら耐えて見せると見得を切る。その迫力に圧倒された赤熊は階段を転げ落ち、短刀をもったまま気絶する。
葛木の研究室の橘博士(伊東光一)が3年(5年?)のドイツ留学から帰国し、その歓迎会が料亭塩瀬で開かれた。勿論、葛木も出席しているが、清葉も呼ばれていることに気が気でないお考。
路地の奥のお稲荷さんにお百度を踏み始めるお考。
腕白大将(川口浩)
改めて、WEBで検索をすると、賛否両論というよりも、ネガティブな評価が多い「日本橋」。
56年大映東京市川崑監督『日本橋(16)』
緞帳が上がると極めて狭い路地がある。青白いうなじの芸者の後ろ姿。駒下駄のカランコロンという音がして、女の姿は消える。「きゃー、出た!」「見てー!」「若さんの幽霊よね。」若い芸妓たちが悲鳴を上げる。
芸者のお孝(淡島千景)が、玄関を開けようとして、表札が曲がっていることに気付き、真っすぐするが、何故か反対側に曲げる。芸者たちが「姉さんお帰りなさい」と口々に声を掛ける。お孝「あんたたち、9人もいて、全然片付いていないじゃないか。猫の手にも役に立たないんだから。もう日がくれちまうよ。ほら片しておくれでないかい」少しだけ片付いた部屋に座り込み「あー、広い家はいいねえ」婆やに「ご近所の挨拶はどうしたんだい?」「蕎麦を蒸してます」「遅いねえ。そんなもん取れば良かったじゃないか、今から、持って行ったんじゃ、恥ずかしいだろ。」湯気を立てる蒸籠見て、「ずいぶん豪勢に作ったねえ。」 お酌のお千代(若尾文子) 「来ました、来ました」 お考「あんたまで、お若さんが出たって?えっ、赤熊が!?」玄関に立つ 赤熊と呼ばれる五十嵐伝吉(柳永二郎)の異様な風体「いくら、おらから逃げようたって、日本橋の中なら、すぐにばれるだ」「貴方から何故わたしが逃げなくてはならないの?芳町の家が狭くなったから引っ越してきたんだわ」
日本橋元大工町に、自殺した芸者のお若の幽霊が出ると噂の路地がある。そこに、稲葉屋お孝(淡島千景)が引っ越してきた。九人の芸者を置き、手狭なので、怪談話を笑い飛ばしてやってきたのだ。お孝を、赤熊と呼ばれる五十嵐伝吉(柳永二郎)が訪ねてくる。赤熊は、北海道の出身で、一時は海産物の商いでかなり羽振りが良かったが、すっかり身を持ち崩し、緋熊の毛皮を身にまとう乞食に落ちぶれていた。かって入れあげたお孝が忘れられず何かとつきまとっていた。お孝は、所詮芸者の自分とは、飽きたら別れるという約束の関係、昔のことを持ち出されてもしょうがないと叩き出す。
ある夜、お孝は、半玉のお千代を連れて、待合いのお鹿の座敷に上がった。女中上がりの女将(沢村貞子)は、自分の店を恐縮するが、お孝はそういうことには拘らない気性だった。しかし、隣の座敷に一人でいる客が、この界隈では一番の人気芸者の滝の屋清葉(山本富士子)に熱を上げていると聞いて嫉妬心を燃やす。お孝は、清葉の客というだけで、冷静ではいられなくなるのだった。赤熊こと五十嵐伝吉も、元は清葉に振られていた客で、意趣返しに自分から声を掛け、いい仲になったのだった。お座敷を出る時に、清葉とすれ違ったお孝は、少し前まで、女将への言葉とは正反対に、こんな安い座敷に清葉姉さんともあろう人が上がるのは、問題だと皮肉を言う。
清葉を呼んだ客は、実は東京帝国大学の医学博士の葛木晋三(品川隆二)だった。葛木は、幼い時に両親を亡くし、ただ一人の肉親の姉が身を売り男の妾になって、弟を大学にまで進ませながら、穢れた自分は遍路に出るので探さないでくれと行方不明になってしまった姉の面影を清葉に見て、告白したのだ。清葉を穢れた身の上と思ったことはない、5年間夢にまで見て通ってきたのだと思い詰めた告白をする、清葉は葛木の気持ちを嬉しく思いながらも、旦那のいる身で、老母と娘の面倒も見ている。葛木の気持ちには応えられないと言い、別れの杯を交わす。
帰宅した清葉に、母(浦辺粂子)が、「お座敷の途中で、呼び戻して悪かったね。旦那さまが、急にいらっしゃると言うもんだから」葛木の純情に応えられずに、別れの杯を交わして来たのだと泣く清葉に、母は娘を芸者にしかできなかったふがいない自分を恨め、本宅に妻子を持ちながら、更に浮気をして妾を泣かす旦那となんざ別れればいい、清葉の娘と自分は賃仕事で暮らしていくからとさめざめと泣く母娘。そこに旦那(高村栄一)が、今晩大阪に立つので忙しいとやって来る。娘の寝姿を満足そうに眺め、障子も閉めずに寝間に入る旦那。娘の部屋の障子を閉め、急須を載せた盆を捧げ寝間に入る清葉。
日本橋川に架かる一石橋(いっこくばし)に、清葉と別れて来たばかりの葛木が佇んでいる。姉の形見の雛人形を研究室に飾っているが、そこに供えるべく栄螺と鮑を新聞紙に包んで懐中に忍ばせておいたのだが、清葉との決別に新聞包みを投げ捨てる。すると、それを不信に思った巡査の笠原信八郎(船越英二)が葛木を誰何する。氏名を尋ねられ、名刺を出すものの、草臥れた名刺にご自分のものでしょうなと全く信ずる様子のない笠原。雛祭りの栄螺と鮑を捨てたと言ってみたものの理解される筈もない。 お考は、近くの料亭に駆け込み、いらない皿に、どんなものでもいいので、鮑と栄螺を載せてくれと頼み、自分も笠原の前で日本橋川に投げ、葛木の窮地を救うのだった。あんたの名前を聞いておこうと言われ、その妻とでも並べて書いておいて下さいと艶然といい、そのまま、自分の家に、葛木を連れ帰るお考。翌朝、窓から水差しの水を捨て、着物を着る葛木を手伝うお考の姿がある。
お千代には、植木屋であったが、今は身体を悪くして寝ている甚平(杉寛)という老人が、唯一の身寄りである。お考には、時々やってきては、金を無心する蒟蒻島の小母(岸輝子)がいる。
お考にイロが出来たと知って、赤熊がやってきた。一度目は全く相手にしなかったが、赤熊は、自分の息子を、清葉の、滝の屋の前に捨て子をして、「妻には死なれ、子供も手放した」と現れた時には、絆されて家に上げるお考。
ある日、稲葉屋に、いつぞやの巡査、笠原がやってきた。葛木に謝らなければならないと言う。嘘をついているに違いないと東京帝大の医学研究室を訪れたところ、そこにいたのは正に葛木であった。姉の形見の対の土雛と1体の京人形が研究室に飾られているのも見た。といいつつ、東京帝国大学葛木晋三とその妻と書かれた手帖の1頁を千切ってお考に渡し、奥さんと何度も言って去った。笠原の葛木の奥さんという言葉は、お考を甚く感激させ、手帖の頁を仏壇(神棚だったか?)に飾り、手を合わせる。
そして、部屋の芸妓たちを集め、今後おかみさんと呼ぶように、借金を帳消しにしてやってもいいと言うのだ。また、2階で旦那然と、布団に腹這いで煙管を燻らしている赤熊を叩き出そうとする。布団の下にあった短刀を抜き、お考を殺そうとする赤熊と揉み合う。しかし、開き直ったお考は諸肌を脱いで、殺すなら殺せ、その代わり、背中に葛木の名を刻め、1文字2文字なら耐えて見せると見得を切る。その迫力に圧倒された赤熊は階段を転げ落ち、短刀をもったまま気絶する。
葛木の研究室の橘博士(伊東光一)が3年(5年?)のドイツ留学から帰国し、その歓迎会が料亭塩瀬で開かれた。勿論、葛木も出席しているが、清葉も呼ばれていることに気が気でないお考。
路地の奥のお稲荷さんにお百度を踏み始めるお考。
腕白大将(川口浩)
改めて、WEBで検索をすると、賛否両論というよりも、ネガティブな評価が多い「日本橋」。
2012年8月13日月曜日
2012年7月18日水曜日
GUCCI銀座店で、63年ルキノ・ヴィスコンティ監督『山猫(10)』
1860年8月、シチリアの名門貴族サリナ公爵(バート・ランカスター)一族が、司祭ピローネを呼び聖書を唱えている。屋敷の外で、何事か騒ぎが起こり、皆の気が散る。確かめに行こうとするサリナの甥タンクレディ(アラン・ドロン)を留めて、執事のミミが出て行った。しかし騒ぎは収まらず、サリナはミサを止めさせる。ミミは、庭で国王軍の兵士が死んでいるのを見つけたのだと説明する。その頃、イタリア全土では、ブルボン王朝と、国王ビクトル・エマニュエルを支持する義勇軍との間で、内乱が起こっていた。勿論、その嵐は、シチリアにも上陸していたのだ。
サリナは、ミミに馬車の支度をさせ、ピローネを教会に送り届けてから、下町の情婦のもとへと忍んでいった。翌朝、ピローネは、サリナに懺悔をするように言う。全て知っているのだと、しかし、サリナは、私は妻との間に7人もの子をなした、それでも妻のヘソを見たことはない。今でも壮健な自分には愛人が必要なのだと言う。甥のタンクレディが共和軍に義勇兵として参戦すると、暇を告げにやってきた。タンクレディのことを慕っている娘のコンチェッタの気持ちを考えると、行かせたくはなかったが、義捐金を渡して、三色旗を持って帰ってくるというタンクレディ送り出すサリナ。
民衆の気持ちは、腐敗したブルボン王朝を見限っており、共和軍を支援したこともあり、市街戦では、共和軍が次々と勝利を収めていく。しかし、タンクレディは額に負傷する。
共和軍の赤い軍服を着て、公爵邸を訪ねてくるタンクレディ。
2012年7月17日火曜日
1958年、私が生まれた年に、この悲劇は起こった。
渋谷シアターNで、ジェームズ・ストロング監督『ユナイテッド ~ミュンヘンの悲劇(9)』
これは事実に基づいた物語である・・・・。雪が積もっている滑走路を、カメラが移動していく。最初は何もなかったが、血痕・・、トランプのカード・・、割れたウオトカの瓶・・、航空機の座席だけがあり、シートベルトをした、スーツ姿の若者二人が座っている。頭から血を流している。一人の若者が目を開け、何が起こったのか考えようとしているようだ。隣の若者の肩を揺さぶる。
2年前、満員の映画館、ニュース映画が上映されている。海兵隊のニュースに続いて、サッカーの練習風景に変る、地元チーム、マンチェスタユナイテッドだ。バズビーベイブスは現在絶好調、レギュラーメンバーが紹介され、映画館が沸き立つ。映画館の中に選手たちはいた。照れくさそうに笑うメンバーたち、その中に、まだ補欠のボビー・チャールストン(ジャック・オコンネル)の姿もある。
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