2012年10月24日水曜日

日本ジャズミュージカル映画の名作。

    阿佐ヶ谷ラピュタで、娯楽の達人監督井上梅次の職人芸

   60年宝塚映画上梅監督『嵐を呼ぶ楽団(17)』

     大阪、キャバレーユニバースのネオン。フルハンドの演奏に合わせ、20人ほどのダンサーが踊る。赤い衣装の天路ルリ子(雪村いづみ)がセリで上がってくる。「私は火の鳥~」。1コーラス歌ったところで、突然ピアノの牧宏志(宝田明)がアドリブを弾き出す。バンマスの近藤(弘世東作、店の支配人など「けったいな奴や!」「やりおった!」と怒っている。ルリ子も驚くが、上手く踊りを合わせて、客には分からないように、ステージを終える。

  ルリ子の楽屋。バンマスや支配人に連れられ、弘志がやってくる。バンマス「いつものピアノが腹痛(ハライタ)を起こして、代わりに入れたもんで・・・」支配人「ほら謝らんか!!」弘志、頭は下げるが「僕は、あなたの赤い衣装を見て、イメージを持った。メロデーが浮かんだんです」バンマス「それはバンマスになってからの話や!」弘志「ジャズって自由なものだ。そんな杓子定規なことは納得できない」ルリ子「そんな生意気な言葉は、自分がバンマスになってから言って頂戴!とにかく楽屋を出て行って!首よ!!」

  肩を落とし帰宅する弘志。「おかえりなさいませ」婆や(吉川雅恵)。家の中では、弘志の母雪江(水戸光子)が衣装の直しをしている。「主役が衣装を気に入らないって言うので、やり直しているの」「大変だね」「昔は自分もそうだったわ。どう?近藤さん元気だった?うまくいかなかったの?」「また、やっちゃったんだ。出てきた女の子の目の覚めるような赤い衣装にメロデーが浮かんできてきてしまって・・・」「しょうがない人ね。でも、お父さんとそっくり」。今は亡き弘志の父は、牧慎太郎と楽団ブルースターとして一世風靡した。弘志は、その才能だけでなく、頑固で芸術家肌の性格もまた、受け継いでいたのだ。

  九州別府に向かう国鉄の3等客室。マネージャー松本(山茶花究)「牧、三谷知らんか?あいつ、どこいったんやろうか」そこに、車掌只野凡太郎(江原達怡)に連れられ三谷純(高島忠夫)がやってくる。「お金も持たずに、1等にいるんですから、困ります。ただ、こう見えても、僕はジャズファンで、サックスやるんで、大目にみますよ」三谷は、弘志が書いている譜面に目を止めて「ふふーん、ふふふ、ええメロデーやないか」いきなりケースからトランペットを取り出し吹き始める。松本「おいおい!汽車の中だぞ」迷惑顔の他の乗客を見て「デッキへ行こう!」汽車のデッキで、トランペットを吹く三谷。「曲名は?」「午前0時のブルースさ。俺たちジャズメンは、クラブでの演奏が終わった深夜0時が特別なのさ」「わかるなあ」弘志の曲を吹き続ける三谷の後ろに、いつの間にか車掌がいて、「いい曲ですねえ」

   「東京より有名ジャズバンド来る!」と立看が店の前に立っている、別府温泉のジャズ喫茶は、観客も疎らだ。マネージャーの松本に、マスター(山田周平)は文句を言っている、「おかしいなあ。全然入らないじゃないか
」「今、ジャズブームだから、どんな楽団でもいいので連れて来てくれと言ったのはそっちやないですか」客が少ないことでやる気を無くし、楽屋に戻ってくる弘志、三谷たち。突然、松本とマスターがやってきて「えらいこっちゃ!お客が押し寄せて来たで」半信半疑で、ステージに戻ると、確かに客席は打って変って満員で、押すな押すな。しかし、よく見ると、客席に、天路ルリ子がいて、彼女目当てのファンが入って来ていたのだ。ルリ子「みなさんに追い掛けられて、このお店に逃げ込んだけれど、見つかっちゃたわね。では1曲プレゼントします」ステージに上がってきて、弘志に気が付き「あら、今日は勝手なことしないでね。」1曲歌って拍手喝采、司会者(世志凡太)が出て繋ごうとするものの、店を出るルり子を追いかけて、満員の客も一斉に出て行ってしまった。ルリ子との差に、愕然として落ち込む弘志。

  その夜、別府の歓楽街を歩く弘志と三谷。三谷「よし、飲もう!俺が奢ってやる。500円しか持ってないけど。牧、お前いくら持ってる?」「2000円だな」「よし!!この店は安くて、美人がいるんだ」目の前のスナックに入るが、店の女の子は人三化七だ。逃げようとする二人をがっちり押え込んで離さない店の女の子。しかたなしに1杯だけ安酒を頼むと、流し渡辺鉄雄(水原弘)が入ってくる。「あら、鉄ちゃん!」「兄さんたち、頼んであげて」「俺たちゃジャズメンだぜ、田舎の流しの歌なんて聞けねえよ」「なんだと!」「やるか?表に出ろ」三谷と鉄雄が表で殴りあう。そこに弘志が割って入り、「お前たちミュージシャンだったら、楽器で戦え。俺が審判だ」以外にも鉄雄のギターは凄かった。お互いの腕を認めて、握手をする二人。

   鉄雄に送られ、楽団の宿の白?荘に戻ってくると、入口で、番頭高田(森川信)たちに捕まえられ、布団部屋に押し込められる二人。状況を飲み込めない二人に、主人の卓造(柳家金語楼)は、松本始め楽団のメンバー全員が11820円を払わずに逃げてしまったので、二人は人質だといい、支払われるまで帰さないと言い放つのだ。


亘一夫(神戸一郎)吉川二郎(柳沢真一)
緒方セツコ(朝丘雪路)天路マリ子(環三千世)大阪興行大貫専務(安部徹)
マスター富岡(立原博)
支配人山根(有木山太)別府ジャズ喫茶
マネージャー白井(茶川一郎)バンドマン(大中英二、満永矩之、早川恭二、原耕二、仲塚雅哉)
ぎょうざ屋の親爺(長谷川みのる)

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