2012年2月17日金曜日

今では、家政婦のミタさん。

66年東映京都成沢昌茂監督『四畳半物語 娼婦しの(7)』 ~「昭和もはじめの頃、上野七軒町のあたり、久しく売屋の札が下がった待合がありける。普請は申分なき家なれど、買手なかなかつかざりしを、烏有先生というものが、通りがゝりに何気なく内をのぞき、家づくり小庭の様子、母屋より濡れ縁伝いの四畳半の庵あり、一目見るなり無暗とほれ込み、早速買取った。手を入れる折、四畳半の襖の下張り、何やら一面にこまかく書つゞる文反古、いかなる写本のきれはしならんと、かゝることには目さとき烏有先生、経師屋が水刷毛奪ひ取つて一枚一枚剥しながら読みゆくと、いったい誰が筆のたはむれぞや。はじめの方はちぎれてなし」~(NA 東野栄次郎)     枯れた蓮の葉が浮かぶ、不忍池。濡れ縁を歩く裸足の足。四畳半の庵に入ると、「こんばんは・・・」と声を掛けると「お入り」娼婦深沢しの(三田佳子)が帯を解く。「竜さんに連れてこなさったの?」「ああ、車夫か。弁天様の辺りで声をかけられてね」「ああ、不忍池ね。弁天様は焼もちを焼かないかしら」「ああ、女の神様だからな」「でも、どうせ、一夜限りですもんね」襦袢姿になって、部屋に入る・「兄さん、いい男だねえ。」ごめんなさいと声を掛けて、布団に入るしの。「あー、冷たい足だ」「あなた、暖かいわ」男(田村高広)が、しのを見つめる「そんなに、見ないで下さいな。胸の騒ぎが止まらないわ、ほら」男、ランプの灯りを弱める。     母屋、待合「立花」の女将立花種子(木暮実千代)、車夫の大島竜吉(露口茂)に声を掛ける「あんたも、働き者のかみさんもって、幸せ者だねえ」「ああ、しののことですかい」屈託のありそうな竜吉、背を向ける。「きくちゃんが来ないんで、御新造さんいらいらしてるよ」瀬川菊蔵(遠藤辰雄)がやってくる。二階の部屋、安藤道代(三島ゆり子)、ふくれっ面で、食事をしている。菊蔵が階段を上がる足音を聞いて、床に入り背を向ける。道代は、囲われ者だが、この待合で、男を摘まんでいる。芝居がかったやり取りがあり、抱き合う二人。     店の下女米山きみ(野川由美子)濡れ縁を渡って来る。しのに声をかける。しのお銚子を受け取り「こっちは泊まりになったから、女将さんにいって、休ませておもらい」小銭をきみに渡すしの、きみ「ありがとうございます、ねえさん」銚子が載った盆を手に部屋に戻るしの「思いのほかに、初心なのね」吉岡糺「そうかい」「だって、ランプの芯を細めたもん」「あんた玄人じゃないね」「ここは、竜さんが連れて来たお客さんだけだから」猪口を糺に手渡し「ひとつ、どうぞ」「おめーみてーな女が、どうしてこんなところで・・・。親のため、それとも亭主の苦労かい?・・・・。おめーさん、名前は何て言うんだい?」「名乗ってなかったわね。しげです」「おしげさんか・・・。」袂から女物の財布を出し、しのに渡す。「これやるよ、まあ、いいから取っておいてくれ」

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