2011年3月9日水曜日

今日は日本の悪魔を見た。

朝イチで、大手町のクリニック。糖尿病の経過観察。数値は体重と肝臓系以外は改善。

テアトル新宿で、ようやく、園子温監督『冷たい熱帯魚(8)』
スーパーマーケットで、冷凍食品やカップ味噌汁などを乱雑に籠に放り込む女(神楽坂恵)。帰宅し電子レンジに放り込み、スイッチを押す。カップ味噌汁をお椀に移す。女の名は社本妙子。夫の信行(吹越充)、娘の美津子(梶原ひかり)と3人で、食卓を囲む。会話のない夕食。漫画雑誌を見ている美津子。美津子の携帯が鳴る。「オレオレ」「あー」「もう店の前にいるよ」「じゃあ直ぐ行くね!!」美津子、店を通って外に出る。前には、悪趣味にペイントされたムスタング。
妙子乱雑に、食洗機に食器を突っ込みスイッチを押す。ダイニングの隣の和室のラブチエアに並んで腰を下ろしテレビの安っぽいメロドラマを見る夫婦。
信行、妙子に手を伸ばし、抱き寄せようとするかが、拒まれる。「あの子がいつ帰って来るかわからないから」妙子、店の前で、寒そうにタバコを吸う、激しく雨が降っている。店の看板は社本熱帯魚店とある。信行、電話が鳴っていることに気がつき妙子を呼ぶが外にいる妙子には届かない。
  
   魂が揺さぶられると絶賛され大ヒット中、今年の邦画で一番期待が大きかった映画。ただ、40年近くエログロナンセンスの映画を見続けてきた私は心がねじ曲がって汚れてしまっているのか、「身じろぎも出来ない」「あまりのエグさに退場者続出」という感想は全くない。しかし、それ「冷たい熱帯魚」を評価しないのではなく、昨年の「告白」「悪人」よりピカレスク映画として、かなり面白かった。「悪魔を見た」とどっちが好き?と聞かれると少し迷う。あとは、ラースフォントリアの「アンチクライスト」だな(苦笑)

   青山一丁目のレコ ード会社で打合せ、好反応。

   京橋フィルムセンターで、よみがえる日本映画
   56年東映京都内田吐夢監督『逆襲獄門砦(9)』
    雪山猟師の親子が歩いていると、雪を掘り返している猪を見つけた。息子の二郎(植木基晴)に音を立てぬよう合図をして、照造(片岡千恵蔵)は、弓を引く。銃声がしたが、矢を二本射って、猪は倒れた。二郎が駆け寄ると、叱責する侍の声がする「こら!!何をする!!猪を仕留めたのは手前だもだ!」「違うやい!とうちゃんだい!」「こちらにおわするのは、この度天領の代官に着任された公儀の脇群太夫さまだ」伴侍は威圧的に凄んだ。案内の猟師2人は、猪を改め、弾が当たっていないことを告げたが、代官の機嫌を考えて「照どん、手柄を譲るんじゃ」「それがええ」と照造を説得しようとした。「待て!!下賤から施しを受ける群太夫ではないわ」と脇群太夫(月形龍之介)は切り捨てた。
    猪を背負った照造と二郎が山を降りてくると、和平次(高堂国典)おとき(松浦築枝)夫婦が畑仕事をしていた。「あっ!じいちゃんだ!!じいちゃ~ん」「わっはっは二郎」「じいちゃん、でっかい猪とったぜ!」照造「じい、寒いのに精が出るな」「お前こそ。今年は何頭仕留めた?」二郎指を折りながら「1頭、2頭、3頭・・・4頭、5頭・・・・6頭だ!!!」「なあ二郎、とうちゃんに何を買ってもらうだ?」「米に・・・、味噌に・・・鷹の矢羽根をこうて貰う!!」「照どんよかったな」その時あぜ道を馬が駆けてくる。馬に乗っているのは、平田辰馬(伊藤久哉)だ。実家の神社に着くと、父親の神官平田信胤(水野浩)に声を掛ける「父上!!いよいよ薩長に倒幕の勅命が思し召しとなりました」「そうか、早く姫にお伝えするのじゃ・・・。お姫さま!!辰馬が戻りましてございます」美鈴姫(高千穂ひづる)「入るがよい」平田鶴乃(八汐路恵子)「辰馬!お姫さまが先ほどからお待ちじゃぞ」「薩長に倒幕の勅命が思し召しとなりました」美鈴姫「中納言様よりの密書を、父上大殿にお伝えするのじゃ」「姫には、さっそくお帰りあそばされたく思いまする」
   天領地に隣する江州野沢藩城中、藩主野沢右亮介(清川荘司)「あい分かった!倒幕に賛同する書面を、姫が直々に持って行こうというのじゃな」「父上!!美鈴、京に行って参りますわ。辰馬、一緒に行っておくれ!」「はっ!!命に換えましても」
   天領の街道を、「幕府御用」の旗を下げた長い行列がる。照造と二郎たちは、小休止している一団の中にいる。「おとう!!こんな沢山の荷物、どこへ持って行くんだ?」「京に持て行くっちゅうだ」しゅっぱ~つ!!と声が掛り、大きな荷を背負い立ち上がる照造。
   その時五騎の馬がすれ違い、代官所へ向かった。脇群太夫たちである。代官所につくと、門前に多くの侍が土下座をしている。草鞋を脱がせた群太夫に前任者大場主膳(河部五郎)が「では、引き継ぎを」群太夫「いや、引き継ぎは無用!さっそく大倉に案内してもらおう」蔵の中に山のように積まれた米俵。「ざっと五百俵はあるな」「いや・・これは飢饉などの折に、領民に配る蓄えでして・・・」「いや無用!!全て京に送るぞ」世はまさに、勤皇、佐幕の対立激化する幕末の動乱期。京二条城には徳川慶喜が上洛し、薩長連合軍と一色即発の事態にいたっていた。

大庄屋平田辰右衛門(薄田研二)ふく(毛利菊枝)芹沢采女(有馬宏治)殿村雄之進(加賀邦男)瀬川三郎兵衛(吉田義夫)内藤新助(楠本健二)乾文五郎(加藤嘉)板倉帯刀(市川小太夫)久兵衛(梅沢昇)善助(村田宏二)甚兵衛(高松錦之助)おゆき(戸田春子)彌七(片岡栄二郎)仙吉(江原真二郎)仁平(玉島愛造)五郎作(沢田清)しづ(赤木春恵)平作(葉山富之輔)坂本(百々木直)勘兵衛(山口勇)市兵衛(尾上華丈)

スイス独立の英雄ウイリアムテルの翻案。『当時ハプスブルク家は、神聖ローマ皇帝アドルフの時代に強い自治権を獲得していたウーリの支配を強めようとしていた。ヘルマン・ゲスラー(ウーリのアルトドルフにやってきたオーストリア人の代官)は、その中央広場にポールを立てて自身の帽子を掛け、その前を通る者は帽子に頭を下げてお辞儀するように強制した』の帽子の代りに、代官が上様より拝領された“陣笠”、息子の頭の上の林檎の代りに蜜柑。終盤、領民たちが立ち上がり、代官を追い詰める一揆のモブシーンは圧巻。凄いなあ。当時の日本映画の凄さを思い知らされる。また月形龍之介が悪代官を演じているので、類型的ではなく、能吏で尊大な大物感が出ている。やはり内田吐夢だな・・・。

  


   東銀座で、無門塾。ずいぶん久しぶりの参加。リーダーをしている高校同期のIが来週から福岡に転勤してEVを作るから送別会がわりに来いと呼ばれたのだ。確か、我々の同期に自動車メーカーのエンジニアが何人もいた筈なので、放送機器やデジタルサイネージをやっていた人間がこれから車のベンチャーの役員をやる時代なのだと、確か「社長島耕作」で読んだ話しを思い出す。
   とはいえ、今日の講師はまったく関係なく、不登校、高校中退者を支援するフリースクールの「学力会」を運営している杉浦孝宣さん。現在日本国内で不登校(小中学校)12万人以上、高校中退者が6万人以上、また高卒就職後1年以内での離職率が70%というショッキングな話しを次々聞く。小学生にさえ生きにくい世の中なんだなあ。

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